バイト先での治療。

初診時は2017.11.7。

主訴は大学病院で治療しているが根の先の病気が治らない。

この大学病院は最近、自由診療を開始したようだが大丈夫なのだろうか?という心配?は余計なお世話だろうが、この患者さんはその大学病院で下記の写真のような治療を受けていた。

冠を除去せずに裏から穴を開けて根管治療をやり直すという作戦である。

なぜこのようなトリッキーな治療を行なったのか?といえば、冠を外したくないからである。

しかし残念ながらこのPFM Crownは案の定、不適合であった。

となれば以前このブログでもご説明したようなロジックがまたしても成立していたのである。

が、アメリカから帰国したばかりの私は再根管治療ではなく外科的歯内療法(Apicoectomy)を提案した。

が、患者さんは外科は怖いので成功率は低いかもしれないが、再根管治療をしたいと強く希望したため、

私はまずは除冠から行い、まずは再根管治療を行うことにした。(2018.2.27)

しかし私の心の中には、

そんなことしても無駄なのにな…

という気持ちが渦巻いていた、ことは間違いない。

何せ、すでに根尖部が拡大されているのである。

再根管治療で勝つ見込みはほとんどないだろう…

成功率は40%程度である。

既に根管充填されたGutta Perchaを除去し、3根管ともBC puttyで根管充填した。

根管形成はほとんどできていない。

しかし、クラウンの中の歯牙は激しく汚染されていた。

正直かなりやる気は削がれたと言ってもよい…

こんなことをして意味があるのか?

自問自答した。

そしてこの再根管治療歯にファイバーポストで築造である。

再治療の予後評価には4年の時間を要するが、私は内心負けを確信していた。

その中、治療後3ヶ月のPAは以下になった。(2018.5.22)

臨床症状は何一つない。

ここから更に時間が経過した。初診時から半年経過している。(2018.8.28)

根尖病変の減少が認められる。

再治療でも意味がないと思っていたが、根尖病変が小さくなったのだ。

症状もない。

ということで最後の経過観察(治療後約1年経過)でも問題が生じていなかったため、外科に移行するリスクはあるものの、最終補綴治療を行なってクラウンを合着することになった。(2018.12.26)

しかし、明らかに根尖病変は縮小していることがわかる。

ここから更に1年後(処置後約2年経過)は以下のようなレントゲンとなった。(2019.12.)

#10のPARLはかなり縮小している。

そしてこれから1年後の最後のPA(処置後3年経過)が以下になる。(2020.12.26)

どうやら私は嘘つきになってしまった?ようである…

愕然とした。

しかし、USC時代私の指導医であるDr. Schechterが私に常に言っていたことがある。

「外科治療する前には、必ず再治療をやり直さなければならない」

「再治療をせずに外科治療を行うことは一切許容されない」

ただし、これには大きな問題がある。

USCでは外科治療は2年生しかできない。

ということは大学院生によっては必要不可欠な外科治療をせずに大学院を卒業してしまうことになる。

米国であればハードな臼歯部の外科治療をすることはないだろう。

失敗した訴えられるからだ。

私のUSC時代の友人にも何人か臼歯部の外科治療をせずに卒業した同級生がいた。

しかし、日本では別である。

多くの患者さんは、

Implant<<<<<RCT=Re-RCT=Apicoectomyであるからだ。

これは日本人に特に当てはまるだろう。

この要求を満たすには、根管治療、再根管治療、そして外科治療を鍛えなければならい。

目的のない米国留学は時間の無駄である。

多くの歯科医師が留学したい、留学希望だと私に告げたがそのほとんどの先生が留学していない。

この事実を考えるに、また米国の歯科大学院入学の難化を考えるに、これから多くの日本人が今までのように米国大学院へ行くチャンスは少なくなるだろう。

しかしながら、

あなたに明確な目的があり、

それが米国大学院でないと成し得ないという客観的な証明ができればあなたは米国大学院に選ばれるかもしれない。

これから米国大学院を目指す先生は精一杯頑張って欲しいと思うが、今一度なぜアメリカに行く必要があるのか?を冷静に考えよう。

あなたがアメリカに行きたい理由は何だろうか??

明確にきちんとあるだろうか?なければあなたは米国大学院へ行くことは無理である。

そしてこの症例から言えることは何だろうか?

やはり私は、歯内療法の問題は

冠部修復物の精度>>>>根管治療の質の問題という思いを新たにしたのだった。