以前の治療の経過観察。

以前の記事は以下だ。

巨大な海の中?に落ち込んだRacelletを探して〜#7,8 Apicoectomy

早いものでここからほぼ1年が経過している。

当時の状況は以下である。

歯内療法学的検査(2022.3.11)

#6 Cold+3/8, Perc.(-), Palp.(-),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#7 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#8 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(+),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#9 Cold+4/8, Perc.(-), Palp.(-),BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

Sinus tractがある#8以外は根尖部の圧痛がなかった。

PA(2022.3.11)

巨大な根尖病変にGutta Perchaが浮いている。

嫌な感じだがこの巨大なGutta Perchaを除去する必要があるだろうか?

Sjorgren 1995 Tissue reaction to gutta-percha particles of various sizes when implanted subcutaneously in guinea pigs

GPの生体親和性の実験である。

豚の皮下にGPをそのもの(1~2mmの大きさ)、またはGutta Percha Pointを細かく(50~100μm)して埋め込み、Gutta Percha Pointに対する生体の炎症反応の有無を検査した。

すると結果は、

大きなGutta Percha Pointでは炎症は起きなかったが、細かいGutta Percha Pointでは炎症が生じた。

このことから、

海の中に彷徨う?Gutta Percha Pointを除去しなくても治癒の妨げにはならない

と思われる。

CBCT(2022.3.11)

#8

#7

かなり巨大な根尖病変だ。

治癒にはかなり時間がかかりそうだ。

が、適切に治療を行えば治癒する可能性は高いだろう。

歯内療法学的診断(2022.3.11)

#7 Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Chronic apical abscess

#8 Pulp Dx:Previously treated, Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: #7,8⇨Apicoectomy

患者さんは治療計画に同意され、Apicoectomyが行われた。(2022.2.22)


☆この後、外科動画が出てきます。気分を害する方は視聴をSkipしてください。


#7,8 Apicoectomy(2022.3.11)

ここから約1年が経過した。

経過観察に来られたのでその際の画像を公開しよう。


#7,8 Apicoectomy後 1yr Recall(2023.3.14)

症状に関して聞くと、

”全く痛くもなんともなくなった。。。本当にありがとうございます!”

と感謝された。

PAは以下になる。

初診時と比べるとかなり状況が改善しているのがわかる。

CBCTは以下になる。

#8

#8はほぼ欠損が治癒している。

ちなみに私はGBRしていない。

何も使用していないのに歯槽骨が回復している。

なぜだろうか?

と言えば

細菌を適切に除去して(Apicoectomyして)

それが増加しないように封鎖したから(Lid Techniqueで逆根管充填した)

からである。

#7

逆根管形成・逆根管充填した部分には歯槽骨が回復している。

が、欠損は完全には埋まっていない。

それはそうだ。

これだけの欠損が回復するには時間が必要だ。

治療前後を比較してみた。

まず#7,8上部の骨欠損はかなり埋まっている。

#8はほぼ骨欠損が喪失している。

#7は根尖部直上には歯槽骨の回復が見られているが、まだまだ欠損は埋まっていない。

もっと時間がかかるだろう。

と言うことで次回は1年後に再度、経過観察を行う予定である。

この症例を見ると私はUSC時代の外科症例を思い出す。

治療前に、補綴科のFacultyから

こんな歯を残すなんて、馬鹿かお前は?

と罵られたあのケースである。


術前(2015年)

再治療では治癒しないので(そんなことはやる前からわかっている)Apicoectomyへ移行した。

このとき、補綴のFacultyにどやされたのを昨日のことのように覚えている。

術後2年経過時(2017年)

馬鹿かお前は?と罵った後に、

人がいない間に(卒後に)しれっと?修復治療を終わらせるUSC補綴科に私は辟易している

が、それはさておき、

このように根尖部の病変が大きかろうが適切な治療をすればちゃんと残すことができる

のだ。

これは私にこの分野で生きていこう!と決意させた、大きなきっかけとなっている症例だ。


ということで、次回は1年後である。

その際に、また皆さんにご報告したい。

それまで少々お待ちください。