今後このブログに、
”歯内療法の基礎臨床”
の項目を加えることにしました。
そこでは、
歯内療法を行う上で重要な治療の基礎を語ります。
なぜ
ラバーダムが必要か?
根管形成と根管充填どちらが大事か?
ルールを守って治療してもなぜ治癒しない場合があるのか?
Intentional Replantationを行なって何ヶ月後から被せることができるのか?
など、歯内療法のルールを語っていきます。
本日はその第1回目です。
まずは、ラバーダムに関して語っていきます。
ラバーダム防湿と言えば、USC時代の私の同級生がクランプが映っていないPAをFacultyに発見され、
”お前はなんで治療にラバーダムを使用していないんだ!”
と詰問されていたのを思い出す。
アメリカではMustな処置であるラバーダム防湿であるが、では全ての臨床家がそれをするのか?と言えばそうではない。
事実、学生の多くは、
”いかにラバーダムをせずに根管治療を行うか?”
に熱心であった。
私が詰問しても無視する学生が多々いたが、そんな時はDr.Levyを呼んで叱ってもらっていた。
すると不思議なことにRubber damを装着するのである。
学生の目はResidentよりもFacultyに向けられている証左だ。
それはさておき、なぜラバーダムを使用しなければならないのだろうか?
AAEのPosition statementを見てみよう。
FreeでPDFをダウンロードできる。
https://www.aae.org/specialty/wp-content/uploads/sites/2/2017/06/dentaldamstatement.pdf
このStatementを作成するのに文献が11個引用されている。
アメリカの歯科臨床は全てこうだ。
適当な個人の意見は反映されない。
昔、藤本研修会に行っているときに藤本順平先生がこうぼやいていた。
”君たちは歯科の本といえばグラビア週刊誌のようなものばかり目を通している。ちゃんとJADAとかのような、英語の文献を読みなさい!”
日本の歯科雑誌はグラビア週刊誌、という辛口の意見がどれくらいの歯科医師に響いたか?わからないが、少なくとも私は現状で日本の歯科雑誌には一切目を通していない。
過去には伝手で寄稿していたこともあったが、もはやそのつてもない。
しかも脳出血をやってからは、毎日生きることに必死で、日本で自分の地位を作るような歯科雑誌に興味はもはやない。
ここから先は危険でとてもブログでは語れないが、セミナー時に機会があればお話ししよう。
ということで上記のPosition Statementには何が書いてあるだろうか?
以下が全文である。(その中で重要な部分を和訳してみる。)
The American Association of Endodontists is dedicated to excellence in
the art and science of endodontics and to the highest standards of patient care.
The accumulated clinical knowledge and judgment of the practitioner supported by evidence-based scientific research is the basis for endodontic treatment.
Tooth isolation using the dental dam is the standard of care;
it is integral and essential for any nonsurgical endodontic treatment.
ラバーダム防湿は歯科治療の基準で必須で不可欠なものである。
A dental dam is a latex or nonlatex sheet with a hole punched in the material to allow placement around the tooth during the endodontic procedure.
One of the primary objectives of endodontic treatment is disinfection of the root canal system.
Only dental dam isolation minimizes the risk of contamination of the root canal system by indigenous oral bacteria.
ラバーダム防湿だけが根管への細菌感染を防止する唯一の道具である。
The dental dam also offers other benefits, such as aiding in visualization by providing a clean operating field and preventing ingestion or aspiration of dental materials, irrigants and instruments.
これだけの文章を伝えるのに11本の文献を引用している。
1. Susini G, Pommel L, Camps J. Accidental ingestion and aspiration of root canal instruments and other dental foreign bodies in a French population. Int Endod J 2007; 40(8):585-9.
2. Hill EE, Rubel B. A practical review of prevention and management of ingested/aspirated dental items. Gen Dent 2008; 56(7):691-4.
3. Fredekind RE, McConnell TA, Jacobsen PL. Ingested objects: a case report with review of management and prevention. Calif Dent Assoc 1995; 23(9):50-55.
4. Kuo SC, Chen YL. Accidental swallowing of an endodontic file. Int Endod J 2008; 41(7):617-22.
5. Ahmad, IA. Rubber dam usage for endodontic treatment: a review. Int Endod J 2009; 42(11):963-72.
6. Goultschin J, Heling B. Accidental swallowing of an endodontic instrument. Oral Sur Oral Med Oral Path 1971;32(4): 621-2.
7. Cohen S, Schwartz S. Endodontic complications and the law. J Endod 1987; 13(4):191-7.
8. Cohen S. Endodontics and litigation: an American perspective. Int Dent J 1989; 39:13.
9. Cohen’s Pathways of the Pulp, 10th ed. 2011, pp. 109
10.Forrest WR, Perez RS. The rubber dam as a surgical drape: protection against AIDS and hepatitis. Gen Dent 1989; 37(3):236-7.
11.Cochran MA, Miller CH, Sheldrake MA. The efficacy of the rubber dam as a barrier to the spread of microorganisms during dental treatment. J Am Dent Assoc 1989; 119(1):141-4.
時間がある方は、目を通してみるといいだろう。
地域の勉強会等で要約してみてガイドラインを作成してもいいかもしれない。
が、お金は産まないけど。
まあ関心がある方のみ頑張りましょう。