バイト先での治療。

主訴は

右上で噛むと痛い

である。

歯内療法学的検査(2023.3.17)

#2 Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Perc.(+), Palp.(+), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

検査で主訴が再現できている。

適切な治療をすれば治癒する可能性が高い。

ただ、この患者さんの特徴は、

口角が異常に硬い

というPersonalityがある。

これはApicoectomyを難しくする。

なので、できればこの患者さんの治療が、(再)根管治療であることを祈るのみだ。

PAを撮影した。

PA(2023.3.17)

ということで私の希望は破れた。。。

思いっきりPreviously treatedである。

MB, DB, Pともに太く形成してある。

そしてMBの根尖部には破折したファイルが存在する。

これを非外科的に除去するのは困難だ。

この時点で…

Apicoectomyが決定的であり、Re-RCTの成功率は著しく低い(40%程度)ことがわかる。

CTを見てみた。

CBCT(2023.3.17)

MB

MBの病変は上顎洞内に抜けている。

となれば、これは歯性上顎洞炎の可能性を帯びてくる。

外科になれば、以下のように行われるだろう。

Apexまでは9.7mmだ。

歯根は露出している可能性が高い。

また、3mmで歯根を切断すると頬舌的に

4.9mm掘らなければならない。

リンデマンバーの半分以下である。

ということは

この外科治療は容易だ

ということがわかるだろう。

MB2もあるだろうが頬舌幅がほとんどないので、それほど時間はかからないだろう。

外科に移行すると決まれば、DBの模様も見なければならない。

DB

ApexまではCEJから8mmだ。

それほど長い根とは言えない。

3mmで切断すると、

頬舌的に3.76mm切断すればいい。

しかもその際、口蓋側に危ない要素は何一つない。

えっ?MBもDBも上顎洞に歯根が落下するじゃないかって?

落下するわけないでしょう。

そこには肉芽組織があるのだから。

ただ、切断した歯根を無くさないように必ず回収しなければならないということだけは言えるが。

最後にPは精査するまでもなく上記のCBCTより病変はないとわかる。

幸運なことにそこは扱わなくても良い。

歯内療法学的診断(2023.3.17)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy MB+DB

治療は満場一致でApicoectomyだろう。

というわけで別日に治療へと移行した。

さて、MB, DBと2根を同時に扱う外科治療ではあるがCBCTの情報によれば、

MBとDBは先細りのアイスクリームのコーン的形態で、2根同士はわりかし近いところにある。

ということは…

意外にもこの治療はそれほど時間がかからないだろう

ということがわかる。

これが慣れてくると身につく外科治療の見通し

である。

以前の記事を思い出して欲しい。

一体、何mmだっただろうか?

上顎大臼歯MB根Apicoectomy~Easy vs Tuff の見分け方②〜#3 Apicoectomy Tuff Case

この際は、頬舌的に7.4mmである。

が、今回は4.9mm, 3.7mmである。

ここが外科治療の難しさを見極める重要なポイントになるのである。

ただ、口角が硬いことからこの歯の外科治療は、

3歯近心に縦切開を入れたほうがいいだろう

ということは予測できる。

したがって、#6の近心に縦切開を入れることにして外科治療をスタートさせた。


☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#3 Apicoectomy(2023.4.25)


MBからは大量に排膿してきたがそこには痛みはなかった。

MB, DBともに術前のCBCTからは頬側に皮質骨がないので容易にApexを発見できる。

事実、その通りになったためRoot resectionも同時に行った。

その後、メチレンブルーを塗布して顕微鏡の倍率を上げ、詳細を確認した。

そしてまず、やりにくいであろうDBからRetroprep+Retrofillingした。

逆根管形成をきちっと3mm行うことは簡単そうで難しい。

私はいつも新品の超音波を使用している。

それが嫌なら…時間がかかることを受け入れなければならない。

それでもいいならだ。

ただ、患者さんがどう思うかも重要だろう。

嫌なことはさっさと終わってもらった方がいいからだ。

そしてこの動画に隠されたもう一つの工夫にあなたは気づいただろうか?

私は細工をしたのだが、それが見えたあなたは鋭い人だ。

見えなかったあなたはいつまで経ってもApicoectomyが得意にはならないだろう。

詳細はAdvanced Course 2023で解説します。

ということでLid Techniqueで逆根管充填している。

Lid Techniqueの中でも簡単にそれを行える場合とそうでない場合がある。

そうでない場合はチップに工夫をしなければいけないことがこの動画でわかるだろう。

ちなみに私は、

この方法になってから、止血をしなくなり、また必需品であったRacelletをほぼ使用しなくなった。

したがって、その置き忘れがなくなったと言える。

次がMBである。

ここはMB1+MB2を繋げなければならない。

少し時間がかかるかもしれないが、先日のケースと比べればはるかに容易だ。

上顎大臼歯MB根Apicoectomy~Easy vs Tuff の見分け方②〜#3 Apicoectomy Tuff Case

何がApicoectomyをEasyにさせ、何がApicoectomyをTuffにするのか?もう判別ができるだろうか?

ということでPAを撮影した。

問題はないと思われる。

ということで縫合して終了した。

次回は1年後である。

その際、再度、歯内療法学的検査, PA, CBCT、そして術後の口腔内等を撮影し皆さんにご報告したい。

それまで少々お待ちください。