紹介患者さんの治療。
患者さんは沖縄の歯科医院からの紹介である。
主訴は
歯茎が1ヶ月前に急に腫れた。神経の治療が必要と言われたが、難しいので米国歯内療法専門医のところに行ったほうがいいと勧められたから来た
であった。
歯内療法学的検査(2023.5.1)
#20 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#21 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Swelling(+)
#22 Cold+1/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#21は腫脹があり、同部を押さえると痛みがあるという。
主訴は再現できている。
適切な治療が必要だ。
PA(2023.5.1)
#21はう蝕もないのに根尖病変ができているように見える。
外傷か?破折か?何だろうか。
CBCTも撮影してもらっていた。
CBCT(2023.5.1)
頬側に白い充填物が見える。
根管口にかなり近接している。
が、下顎孔はかなり下部にある。
シーラーパフがあっても問題がなさそうだ。
ここで患者さんに歯の状況を詳しく聞くと、
知覚過敏が前からあり、他院でWSDを詰めたほうがいいと言われたので任せた
と言う話である。
そのままだと虫歯になるから詰めたほうがいいというやつだ。
私はそんな話を今まで聞いたことがない
のであるが。
嫌な予感がする。
歯頚部に詰めたレジンが歯髄まで到達している。
私は思う。
これは、歯科医療なのだろうか?
体のいい、歯髄の破壊だ
と思うのは私だけだろうか?
もはやどうしようもないだろう。
ここから何がわかるか?と言えば、
自分の歯は自分で守るしかない
と言う事実である。
何かを日本の歯科医師から提案されたら、本当に正しいことなのかどうか?踏みとどまる勇気が必要であると言うことだ。
任せれば…あなたの歯は失われるだろう。
国民の口腔内の健康よりも、自分の生活が第一であるのだから。
そして紹介医はこの歯の根管形態が難しいので紹介ということであった。
が、だ。
Apical foramenは歯牙の中央に位置しているように見える。
そして、もしもこの歯の形態が複雑だと言ってもそれを全て清掃することは不可能である。
できることは、
主根管を精一杯清掃して問題の解決が図れるかどうかを注意深く見ていく
ということをするしかないのである。
隠れた根管にシーラーが入ろうが入らなかろうが、治るものは治るし、治らないものは治らない。
Ricucci 2010 Fate of the Tissue in Lateral Canals and Apical Ramifications in Response to Pathologic Conditions and Treatment Procedures
上記のAAEが出しているフリーのPDFを読んでみよう。
問題はそういうことではないということがわかるはずだ。
歯内療法学的診断(2023.5.1)
#21
Pulp Dx: Pulp Necrosis
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
治療は根管治療一択である。
と言うことで治療に移行した。
☆この後、臨床動画が出てきます。気分を害する方は視聴をSkipしてください。
#21 RCT(2023.5.1)
下顎の小臼歯は治療が難しい。
特にチャンバーオープンには注意だ。
よく、穿孔することがある。
CBCTを見ると、
この歯は頬側の歯質に対して立てる方向で歯牙を切削すると露髄することがわかる。
以上を頭に入れてチャンバーオープンを行った。
無事露髄した。
と言うことでSXを使用して根管の上部を拡大する。
根管からはいかなる出血もない。
やはりPulp Necrosisであった。
こうして診断力を高めていくのである。
と言ってもこのケースは簡単すぎる、か。
作業長を測定した。
根管充填した。
シーラーパフもきちんとあり、問題はないと思われる。
次回は1年後である。
再度状況を皆さんにお伝えしたい。