紹介患者さんの経過観察。
以前に治療を行っている。
CBCTを咬合面から見ると、#14の分岐部に大きな欠損がある。
分岐部病変だ。
分岐無病変は治癒しないと思われている。
それが
ペリオ由来なら
だ。
しかし、以下の画像をみてそれがペリオ由来か否かをどうやって判定するのだろうか?
それがはっきりわかる人が世の中にいれば…
私はその人に全ての患者さんを紹介するだろう。
私もそんな預言者になりたいものだ。
話を元に戻す。
これらは言い換えれば、
根尖部歯周組織(歯内療法)に問題があるのか?歯周病(もしくはその治療)に問題があるのか?わからない治療は、
歯内療法→歯内療法外科→歯周治療→歯周再生療法の順に進んでいかなければならない。
と私はUSCで習った。
そう。
それが意味するところは?といえば。
治療の費用と時間が高く&長くかかるのである。
それがリスクが高いことから、アメリカでは多くの歯は抜歯されImplantにchangeされている。
しかしここは世界一、天然歯を愛する国?日本だ。
何とか保存して欲しいと懇願される。
したがって、患者さんにもかかりつけ医にも、治療の順序を守ってもらうことを約束した上で治療開始となった。
それを時系列で振り返ろう。
歯内療法学的検査(2022.4.18)
#13 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#15 Cold+5/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
初診時PA(2022.4.18)
初診時CBCT(2022.4.18)
MB
根管は石灰化しているように見える。
その奥の分岐部に大きな病変が認められる。
予想通り根管形成ができないので途中でGutta Percha Pointが止まっていた。
MB2を扱っていない。
第1大臼歯でMB2がある可能性はStropko 1990によれば90%なのにも関わらずだ。
大学院の時も同じようなことがあった。
90%じゃ!と熱く真面目に語ってその後のCase PresentationでMB2がない、なかったというExcuseが始まるのはこの業界のお約束?なのか??
DB
ここも石灰化が進んでいるようだ。
そして根尖病変が存在する。
最後がPである。
P
Apical Foramenまでもう少しというところで止まっている、と言えるかもしれない。
Gutta Percha Pointが口蓋側に変移している。
ハンドファイルで形成したからだろう。
何度も言うが、できなければできる人に任せればいいだけなのだがこの国にそう言う文化はない。
が、P根もレッジができてはいるがその先の掃除はしていない可能性が高い。
レッジができてしまったので諦めてしまったのだ。
しかも患者さん曰く、
ラバーダムなど使用されたことはなく
ハンドファイルで清掃されたことが記憶にはあると言う。
それでは…
細菌を減らすどころか増殖させている。
この非常識が非常識であると認識されない限り日本の歯科医療に未来はないだろう。
ともあれ、再根管治療をするのであればこの部分を清掃できるか?が鍵になりそうだ。
それか…口蓋からフラップを開けて根切するか?だが
私はそのような煩雑な治療よりもまずは再根管治療にかけてみたいと言う思いが強い。
そこをマネージメントできれば成功率が90%を期待できるかもしれないからだ。
歯内療法学的診断(2022.4.18)
#14
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: P根のみRe-RCT, MB+DB Apicoectomy
☆この後、臨床的画像・動画が出てきます。不快感を感じる方は試聴をSkipしてください。
遠方から来られているのでその日にまずはP根の再根管治療をし支台築造した。
P根・根管充填後PA(2022.4.18)
BC sealerを根尖に若干おいてBC puttyで根充するとこのようにパフが出るような絵になる。
その後、レジンで支台築造した。
別日にApicoectomyが行われた。
なぜか?
それはエピネフリンの効果が切れるからである。
詳細はAdvanced Courseでお話しする。
次回のアポでMBとDBを切断して逆根管充填していく。
#14 Apicoectomy 術後PA(2022.5.23)
さてここから半年経過している。
いかなる痛みもないという。
#14 Apicoectomy 6ヶ月経過 Recall(2022.12.8)
PAを撮影した。
#14 Apicoectomy 6ヶ月経過 PA(2022.12.8)
#14 Apicoectomy 6ヶ月経過 CBCT(2022.12.8)
MB
術前と比べてだいぶ歯槽骨が回復していた。
DB
ここも歯槽骨がかなり回復していた。
よく聞かれる話が、若いと回復が早いとかであるが私が知る限り関係ない。
思うに、年齢と回復具合は無関係だと思われる。
最後が懸案のP。
ここは再治療なので治癒に時間がかかる。
P
P根の根尖部の病変もかなり回復しているように見える。
問題はなさそうだ。
最後に術前と比べてみた。
術前vs6M recall 比較(2022.12.8)
だいぶ歯槽骨が回復しているのがわかる。
口蓋根も順調だ。
次回は半年後である。
それで1年経過だ。
その模様をまたお届けするので少々お待ちください。
ということで早いもので?ここから半年経過した。
Apicoectomyを行って1年経過している。
#14 Apicoectomy 1yr Recall(2023.6.8)
まず、臨床症状は全くない。
全て陰性だ。
PAを撮影した。
そこにある景色は1年前と変わらないだろうか?
それとも変わっただろうか?
CBCTを撮影した。
MB
根尖病変消失し、頬側の皮質骨は再生している。
何度も言うが、
これが真の再生療法だ。
私は何も使用していない。
生体が治癒に持ち込むのが歯内療法の醍醐味と言えるだろう。
そして術前にあった分岐部病変はどこに行っただろうか?
根尖病変はどこかへいってしまった。
DB
分岐部病変は過去の遺物だ。
歯槽骨が大幅に回復している。
根尖病変は消えている。
状況が好転しているのだ。
ここも初診時と比較してみた。
分岐部病変は大幅に改善した。
頬側面間でも、Apicoectomyの威力がわかるだろう。
DBの根尖病変も、Apicoectomyするために削除した頬側の皮質骨も回復している。
何度も言うが、
これが真の再生療法だ。
私は何も使用していない。
最後がP根である。
ここは、外科治療が困難であるので再根管治療をしていた。
その根拠は、根尖部を根管形成できていないからであった。
P
分岐部に存在していた大きな骨欠損は回復している。
ほぼ、Complete Healingである。
根尖病変も消失した。
口蓋の根尖部にあった病変は姿を消した。
ここも術前と比較してみよう。
大きな分岐部病変は消失しつつある。
と言ってもまだ1年だ。
もっと経過を追わなければならない。
P根の根尖部にあった病変はほぼ消失している。
P根の根尖部もよく治癒していることがわかるだろう。
以上を比較してみた。
術前 vs 術後半年 vs 術後1年
MB
DB
P
劇的に状況が改善している。
これこそが、
歯内療法の持つパワー
といえよう。
そして、
歯内療法外科を身に付けなければ、歯内療法に精通することはできない
と言うこともわかるだろう。
そして繰り返すが、
私は、私の自慢をしたいわけでもなく、歯内療法がNo.1だ!と誇示したいわけでもなく、
一生持つとは思えない歯牙がいつかダメになる時に、その後の処置(Implant? Bridge?)がしやすいように環境整備することが歯内療法の役目だと思っている。
どうだ俺はすごいだろう!とか誇示したいわけではない。
この歯(#14)もいずれダメになる時が来るだろう。
その時に、歯槽骨を回復してあげることができていれば、その後の欠損修復がやりやすくなる。
ImplantもFPD(Fixed Partial Denture=Bridge)も問題なくできるのだ。
このように歯内療法は、最後まで他の分野の貢献を果たすことができる素晴らしい医療分野だ。
私はそれを意識して留学した。
最初から補綴やペリオに行こうと思わなかったのはそう言う理由である。
その点では、繰り返しになるが、
歯内療法はどの医療分野にも負けていない
だろうと言うことができる。
と2日連続で私の臨床の主張をいれさせていただいた。
まあ、命には関わり合いはないけれど。
次回は、1年後である。
また皆さんにご報告したい。