紹介患者さんの治療。
実はこの患者さんの治療のブログはすでにお伝えしていた。
再治療を試みたが、MB根管から大量の排膿と漿液が上がってきた歯の外科治療の話である。
ここでのポイントは、
①本当に根尖部には大量の排膿が存在するのか?
②どのように治療計画を立てるのか?
③それに基づく、治療時間の予測
である。
CBCTを今一度精査した。
Mental Foramenは術野には含まれない。
安全に外科治療はできそうである。
実際の外科では以下のように見えるはずだ。
近心根のApexは遠心方向へフックしている。
Osteotomyの際、注意が必要だ。
そしてOsteotomyの必要性があるか?CBCTを精査すると、
必要であることがわかる。
2.4mmの深さ歯槽骨を削合する必要がある。
そこには、Apexがあるはずだ。
で、3mmで切断すると頬舌的な奥行きは
6.5mmである。
リンデマンバーの長さの半分以上ある。
6.5/11=60%だ。
これはやややりにくい可能性がある。
しかし、MBとMLは近接しているので、その部分の逆根管形成は難しくはないだろう。
1勝1敗というイメージである。
このことから恐らく治療時間は30~40分程度であろうと予測した。
これらをきちんとオペ時のユニットの近傍に張り出して治療することを強く勧める。
と言うことで外科治療へ移行した。
☆この後、外科治療の動画・写真が出てきます。気分を害する方は視聴をSkipしてください。
#19 Apicoectomy(2023.6.8)
この動画にはポイントがある。
それは、患者さんの口唇が硬くて術野が上手く撮れない時の対応方法だ。
私はどのようにして術野を確保しただろうか?
動画をよくみてみてください。
詳細は、Advanced Course 2023で説明します。
この動画のポイントはもう一つ。
以下のような状況がこの歯には見られたと言うことだ。
このOsteotomyをした根尖部から溢れ出る白い液体は何だろうか?
答えは、これもAdvanced Course 2023で説明します。
これでApexの位置が把握しやすくなった。
3mmで切断した。
さあここで何かに気づかないだろうか?
切断面は見えなかったはずだ。
それがいきなり見えている。
なぜだろうか?
ここにも秘密がある。
その秘密は、これもAdvanced Course 2023でお話しします。
Root resectionしたら次は、切断面を切り残しなどがないか?確認しメチレンブルーで染め出す。
出血量が多かったので、久々にRacelletを使用した。
この時も、ポイントがある。
それも、今月開催されるAdvanced Course 2023の第1回で説明する。
ということで切断面を観察し、逆根管形成した。
動画の最後に取り出したのは折れた超音波チップだ。
このように超音波チップは折れることがあるので注意が必要である。
ということでStropko Irrigatorで窩洞を乾燥し、Retrofillした。
レントゲン撮影した。
問題ないと思われる。
縫合して終了した。
治療時間は40分程度であった。
術前の予測通りである。
次回は抜糸である。
実はこの日、メールで患者さんから治療の感想をいただいた。
患者さんから許可を取って、
以下の文面をご紹介する。
松浦先生
お世話になっております。
PDFファイル、確認いたしました。
ご丁寧にありがとうございます。
松浦先生にはいつも的確かつ親身に治療していただき、本当に感謝しています、ありがとうございます!
前医院での根管治療は、痛みの度合いで何かを判断するような事を仰って、根の消毒が毎回麻酔なしだったので、
痛くて痛くて大粒の涙を流して耐えたのを鮮明に覚えています。
そんなトラウマがあり、いまだ歯医者さんに行くとビクビクしてしまうのですが、松浦先生の治療は全く痛みがなく、しかも状況に対する的確な判断をしてくださり、治療も細やかで抜かりなく、本当に感謝しかないです。
別の意味で泣いちゃいます。
松浦先生が居られる福岡に住んでいて良かったです。助かりました!
引き続き、よろしくお願いいたします。
無麻酔で根管治療するのは、日本の伝統だろうか?
抜髄したら歯髄が全て消えるわけがない。
全ての歯髄は取り除けないのである。
Classic literatureかエンドの教科書を読んだ方がいいだろう。
さて。
私は…脳出血から復帰してよかったのか?と思う時があるが、こう言うふうに言われると非常に嬉しい。
これが歯科医療の醍醐味なのだろうか?といえば、
やはり病気を治癒させることが一番重要なのだろうと私は思う。
他科を考えてもらいたい。
なぜ、患者さんは病院(クリニック)に行くのだろうか?と言えば、病気がありそれを治療する必要があるからだ。
そしてそれがかなり高い確率で治るのであれば、患者さんは頑張って通うだろう。と言っても歯内療法は治療回数が1回しかないが。
治らない病気の治療を行なって意味があるのだろうか?
さて。
この1週間は外科治療ばかりお伝えした。
なぜか?と言えば、歯内療法の真の答えがここにある。
それは、
歯内療法に外科処置は必要不可欠
であるということだ。
それを避けては通れない。
模型で実習するだけでは上手くならない。
上手くなるには、患者さんで実践しなければならない。その際、メンターについてもらいながらだ。
来年度からそのようなコース(アメリカの大学院のような学習環境の提供)を開始しようと考えているので、また詳細は夏以降に発表します。
それまでお楽しみに。