紹介患者さんの治療。

主訴は、

左下奥歯、神経の治療をしたところが何もしなくても痛む…

である。

歯内療法学的検査(2023.9.20)

Sinus tract, そして全ての根尖部歯周組織への検査が陽性で痛みがひどい状態だった。

特に、圧痛に対して過敏な痛みを発現した。

以下の動画がそれである。

患歯には、

Sinus tract(+), Perc.(++), Palp.(++), BT(++)とかなりのSymptomatic apical periodontitis状態であった。

このような時、病名を

Symptomatic apical periodontitisにすべきか?

Chronic apical abscessにすべきか?

悩むが、

Symptomatic apical periodontits with Sinus tractという病名はない

by Dr. Rotstein

ので厳密に言えば、

Chronic apical abscessということになろう。(かなりのSymptomaticなのに、だ。)

PA(2023.9.20)

Apical Foramen付近まで懸命に根管形成がなされている。

これを非外科的治療で修正することは不可能だ。

この時点で、Apicoectomyが決定的だろう。

そして、

メタルポストコア…

歯牙が破折してしまうことにしか寄与しないこの物体を入れる意味はなんだろうか?といつも思う。

CBCTは外科を想定したシミュレーションとなる。

CBCT(2023.9.20)

まず、この会社のCBCTは正直、使いにくい。

2点間の距離を設定して初めて距離が表示されるからだ。

それでは…分析しにくいだろう。

が、画像はいいので扱いやすいソフトではあるが。。。

しかし、うちがこれを取り入れることはない。

やはり、この業界の王者はヨシダだ。

というよりも、

CareStream Dental

だ。

MB

M根はCEJよりApexまで約11mmだ。

3mmで切断すると、頬舌的に6.3mm切断しないといけない。

が、実際はもう少し距離が少ないかもしれない。

はっ、お前は何で3.56mmで計測してるんだ?!って?

それは私ではなく、このCTの会社に聞いてください。

私はシステムエンジニアではないのだから。

MB,MLは比較的近いのでイスムスを繋げる作業は難しくないだろう。

Apicoectomy自体は、Easyだ。

ML

MLを軸にして分析すると、CEJよりApexは11.5mmである。

Apexから3mmで切断すると、頬舌的に6mm切断することになる。

MB,MLは比較的近いので困難性はほぼないだろう。

D

D根はApexまでの長さが11mmである。

そしてその部分を約3mm掘るとD根のApexが顔を出す。

これは意外に時間がかかるだろう。

ここで時短を図るには、何が大事か?と言えば、

Apex探し

である。

どのようにしてそれを探すのか?と言えば、画像を以下のようにして反転してユニットに貼り付ける必要がある。

近心根のApexはCEJのほぼ直下にある。

遠心根Apexは#19 クラウンの遠心隣接面の直下にある。

ということは、術野は広めに取る必要があるだろう。

#21よりも、#22の近心に縦切開を入れた方がいいかもしれない。

歯内療法学的診断(2023.9.20)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: Apicoectomy(M,Dともに)→Core build up with Fiber post

ということで別日にApicoectomyを行うことになった。

さて。

この症例での最大のポイントは痛みをどうマネージメントするか?だ。

Pul急発のときであれば、全部断髄すればいいということはわかっているが、

Per急発の時はどうすればよかっただろうか?

この話は今年、東京でもした話である。

東京歯内療法セミナー2023

といえば、

結局、麻薬系鎮痛剤を処方するしかなかった。

が、麻薬系鎮痛剤など処方できるのか?というところで話がStopする。

この話に関してはこのブログの最後でまとめてみているのでそちらを参考にしてください。


☆この後、外科画像/動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#19 Apicoectomy(2023.9.24)

口角が硬い患者さんだったので術野を広く取る必要性がある。

#22の遠心に縦切開を入れてオペをスタートさせた。

この際、私は気づいたことがある。

それは、

外科治療はやはり感染が取れてから出ないとできない、やりづらい、という事実である。

具体的には、

まだ口唇に腫脹があり口角が非常に硬い状態

であった。

つまり、

外科治療が極めてやりにくい状況の中での治療

となるのである。

この時…

やはり#22ではなく、#23か#24の近心に縦切開を入れた方がよかった…と思ったがもう後の祭りだ。

まずは近心からOsteotomyしていく。

が、上記動画にあるようにすでに歯槽骨に欠損があるので、その位置を特定するのは容易である。

上記動画のこのスポットが近心根のApexの位置だろう。

ということで同部位を削合していった。

するとMのApexが顔を出した。

ここで3mmの切断に取り掛かる。

が、切断の残しが発生してしまった。

スパッときれなかったのである。

ということで、この切り残しの部分も丁寧に切断した。

その後、逆根管形成して逆根管充填する。

近心根だけなら…これで終了するが遠心根にも病変があるので遠心根も処理しなければならない。

次に遠心根に移行した。

遠心根は、歯槽骨を約3mm切除しなければならないが…

全く剥離ができない。

どうしようか。。。と思っていた時に助けが舞い降りてきた。

近心根の処置後の術野を見てほしい。

何かが見えないだろうか?

え?よく見えないって?

では拡大して、ヒントもあげましょう。

そう。

近心根処置時に遠心根が見えたのである。

この辺りにあるのか!と思った私は遠心根の歯槽骨を削除し、Apexから3mmで切断し、逆根管形成し、逆根管充填する。

まさに

急死に一生を得た

とはこのことだ。

以上のことから、

Per急発の時はApicoectomyは適応症ではないということがよくわかった。

嵐が通り過ぎるのを待つしかないのかもしれない。

PAを撮影した。

問題はないと思われる。

この後、縫合して終了した。

この後、抜糸に来ていただいた。

術前に感じていた痛みは消失したという。

が、引っ張られる感じがするという。

それはまあ仕方がないだろう。

歯茎も治癒していく過程の最中なのでこの時点では何も言えない。

さて、その後私は病院歯科の先生とお会いする機会に恵まれた。

東京医科歯科大学の歯科心身医学教授で、福岡市の西区にある白十字病院 歯科口腔外科で月1回診療されている 豊福 明 先生だ。

この先生にこのような場合はどう対応するべきか?聞いてみた。

私の中の知識では、このような状態であれば、麻薬系鎮痛剤を処方しなければならない、とアメリカで習った記憶がある。

前回、東京でのセミナーでも示した通りだ。

東京歯内療法セミナー2023

すると、麻薬は麻薬取扱者であれば誰でも処方ができるそうだ。

福岡県なら以下のページに詳細がある。

福岡県   麻薬取扱者(管理者・施用者)免許申請

こういうところに申請を出し、麻薬系鎮痛剤を処方できるようにしておけばいいだろう。

試験等はない。

申請だけでいいのだ。

しかも、

処方箋のみ書いてあげれるようにしておく

というところがポイントだろう。

この豊福先生との話はいつか機会を見つけてこのブログでも公開しようと思う。

うちからも以前、非歯源性疼痛の患者さんを紹介し、その問題が解決したからだ。

非常にためになる話ばかりだった。

ということで、次回は半年後の2024.3である。

また報告したい。