以前の記事の続報。
あれから半年が経過していた。
この時の治療予測としては、
術前の検査(2023.1.31)で
#3 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
であり、
根尖孔外細菌感染が疑われること、
しかもそれがかなりの長期の間できているということ、
はあるものの、
Sinus tractはあるが、前医のあまりにもやる気のない根管治療を鑑みると再根管治療で治癒できないか?と考え、
それは無駄な治療?になるかもしれないが、やってみないと結果はわからないから(特に口蓋根)…
ということで患者さんもその治療計画に同意し、再根管治療が別日で行われた。
#3 Re-RCT(2023.3.3)
MB2だが、
MB2の根管口と思しきものはあったが、SXが全く入らない。
石灰化が進んでいると思われ、これ以上の形成を諦めた。
MB1と合流しているのかもしれない。
という臨床判断をこの時はしている。
結果、根充後のPAは以下のようになった。
MB2は存在はしているが、根管口自体が見つからなかったし、MB1と合流をしているであろうことからその存在にそれほど神経を使わなくても良かったという話になる。
さて、ここから時間が経過した。
この歯はどうなっているだろうか?
#3 Re-RCT 6M recall(2023.9.8)
Perc.(-), BT(-), Sinus tractも消失したが…
MBと思しき場所にPalpationが見られた。
ということは何が予想できるか?
といえば、
MBの根尖部分の歯槽骨は回復していない可能性が高い
という臨床的事実であろう。
PAを撮影した。
これだけでは全く意味が不明である。
もはや、
PAはその臨床的な意味合いがほとんどない(一部の判断でしかその意味をなさない)のかもしれない。
CTを撮影した。
#3 Re-RCT 6M CBCT(2023.9.8)
MB
やはり…検査の予測通り、MBのApex部の歯槽骨は回復していなかった。
これがPalpationに対してtenderness(痛み)があった理由である。
CEJからApexまでの長さを測定した。
約10mmである。
そこから3mmで切断すると、
MB2が顔を出すことがわかる。
その頬舌的な長さは、
5.2mmである。
DB
P
ちなみにこの半年前は以下のようであった。
#3 Re-RCT 前 CBCT(2023.1.31)
DB, Pはかなり歯槽骨が回復しているが、MBは術前よりも半年経過して回復が見られるどころか、その欠損の大きさが広がっている。
つまり…
MBは再根管治療に反応しなかった
ということがわかる。
が、これは
術前にSinus tractがあったその事実から予想はできた
ことだが、
Sinus tractがある根管だけApicoectomyしましょう!という治療のカウンセリングもできないだけに頭が痛いところだ。
これが前歯や小臼歯なら…と思わずにはいられないが、MBのみのApicoectomyに移行することになることを患者さんには伝えて了承していただいた。
さて。
Apicoectomyの難易度だがCBCTを基に、MBの詳細を論述してみよう。
MB
まずApexはCEJよりも10.0mm下方に存在する。
そしてRoot resction時に上顎洞をHitする可能性はほとんどない。
安全にできる症例だ。
また、Apexから3mmで切断すると、
頬舌的に5mm切断することになる。
リンデマンバーの半分以下だ。
非常にEasyなRoot Resectionである。
また、この咬合面観からしてMB2がP側寄りに存在するだろう。
切断した後のMB2を見つけることもApicoectomyでは重要な事象になるだろう。
そしてイスムスでつながるのであるが、それもこの近遠心的な厚みがあれば問題がないと考えられる。
注意点があるとすれば、
MBとDBがほぼ接している
という事実である。
Root Resection時に、DBも切断しないように注意が必要だ。
つまり、
Root Rsection時にDBに気をつけながら切断する必要がある。
具体的には、
近遠心的にバーを動かすときにDBまで切断しないように寸止め気味にMBを切断して、鋭匙等でMBを除去する作戦が必要かもしれない。
ここが唯一、この治療で気をつける部分だろう。
面倒臭ければDBもろとも切断してもいいが、DBも逆根管形成や逆根管充填という仕事が増えてしまう。
なのでどちらかといえば、#3というよりは#2のApicoectomyをするようなイメージ(MB,Pが繋がっているというイメージ)が必要であるという事実がここにある。
ということで、この近遠心的な切断以外は難易度はほとんどないApicoectomyであるということがわかる。
そして、別日にApicoectomyを行うことになったのである。
⭐︎以下、外科動画が出てきます。不快に感じる方は視聴をSkipしてください。
#3 MB Apicoectomy(2023.10.10)
MBのApexの位置は術前のCBCTよりすぐにわかる。
MBのApexを発見し、Apexから3mmで切断した。
逆根管形成した。MB1,MB2をイスムスを介して繋げなければならない。
問題はないと思われる。
次に窩洞を乾燥し、逆根管充填した。
PAを撮影した。
問題はないだろう。
CTも撮影した。
MB
縫合し、終了した。
次回は、1週間後に抜糸で、半年後の2024.4に6M recallを行う。
その際に、検査、PA、CBCTを撮影してこの日の模様と比較してみよう。
それまで少々お待ちください。