紹介患者さんの治療。
主訴は、
起床時に歯に痛みがある。ひどい時はその痛さは10/10であった。脈打つくらい痛かったが、ピークの痛みは過ぎた。今は2/10くらいのレベルである。今はたいした痛みはないが、違和感が強い。
であった。
歯内療法学的検査(2023.10.3)
#13 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(±), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14に違和感があるという。
ここが原因かもしれない。
ちなみに#15はVRFであるとされ、抜歯されたそうだ。
PAを撮影した。
PA(2023.10.3)
全部断髄がなされている。
その成功率は100%に近いがこの歯には根尖病変がある。
聞けば、この断髄は最近の治療だったという。
前医(紹介先ではない)が、根管治療をしたくない気持ちはわかるが…これではあまりにも無責任だ。
失活した歯に全部断髄…聞いたことがない治療方法だ。
それなら…なぜできる人に紹介しないのだろうか?と思わずにはいられない。
患者さんが気の毒である。
CTも撮影した。
CBCT(2023.10.3)
MB1
MB2
DB
P
全ての根管に根尖病変が存在した。
どの根管も穿通が必須である。
穿通するかどうか?はやってみなければわからない。
穿通しなければ…Apicoectomyへ移行する。
少なくとも口蓋根だけはなんとかしたい。
ということで診断は以下である。
歯内療法学的診断(2023.10.3)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
ということで、同日根管治療へ移行した。
石灰化が進んでいるので、根管の穿通が可能かどうか?が焦点だ。
☆この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#14 RCT(2023.10.3)
除冠し、チャンバーオープンする。
以下のようになった。
さて。
根管はどこだろうか?
この際に有効なのが、鋭い短針である。
Dental diagnostic instruments-Endo Explorer DG16 double Ended
これで目ぼしいところを突く。
すると…根管口が顔を出す。
これがSXのための
スカウティング
になっている。
言葉の意味が???なあなたは、
Basic Course 2024
でお待ちしています。
次にDBを探索した。
先に述べた短針とFEEDで販売されている超音波が効果的である。
これもBasic Courseで紹介します。
P, DB, MBが顔を出した。
が…
MBとDBがすごく近くないだろうか?
またこのMBだが、全く出血が止まらない。
そしてファイルを入れるとほとんど入れていないのにRoot ZXがピーピーと鳴った。
これは…穿孔の可能性がある。
先に、DBとPを根管充填した。
術後のPA, CBCTは以下になる。
術後PA(2023.10.3)
そう。
やはり術中の予想が当たった。
私は穿孔させていたのだ。
術後CBCT(2023.10.3)
P
DB
MB
さて…何が起きたのか?といえば、
私がMBの根管口だ!と思いSXを入れたところはやはり穿孔していた
のだ。
では本来のMB1, MB2はどこにあるのか?といえば、
上の図のこの色違いのレジンの直下
であろう。
つまり、次回はこの色違いのレジンの部分を削ればMBの根管口に到達するであろうということがわかる。
このように、
Previously initiated therapyのRCTのケースは難航することが多い。
正直、私には
Previously initiated therapy=Previously treatedのように感じる。
そしてそれ以上に重要なことは、それに術中気がついたときにどう行動するか?だ。
私はこの際、わざとレジンの種類を変えて築造している。
本来はブルーのレジンで築造したかったが…Ciのブルーレジンは購入したのにすでに硬化していた。。。
まだ使用もしていないのに、だ。。。
やはり某国の歯科材料はいけていないのだろう。。。
これからは購入を避けます。。。
というところでセミナーの先生に聞くと、
トクヤマのレジン(ブルー)がいいそうだ。
早速、取り入れてみよう。
さて。
怪しい…と気づいたときにそれを確信に変えたときに後の行動をどうするか?と言うことも重要だ、ということがいいたかったのだが、
CBCTがあればこのようなトラブルにも未然に解決策をはかることができる。
やはり歯内療法臨床には欠かせないアイテムなのだろう。
ということで、別日に治療を継続した。
久々の2回法だ。
おそらく、1時間あれば終了できるだろう。
#14 RCT 2回目(2023.10.5)
上図の色違いの部分を削合していった。
場所が判然としない。
思しき場所にUltracalを貼付しPAを撮影した。
貼付部分よりも近心にMB1があるだろう。
その部分を探索した。
この日のブログで最も重要な動画だ。
しかし…こんなところにMB1の根管口があるとは…
意外すぎる。。。
また術前のCBCTからこのMBは
Vertucci TypeⅣ
であることがわかる。
独立している2根管なのだ。
MB2の根管口はMB1の口蓋側直下にあることもわかる。
Vertucci 1984 Root canal anatomy of the human permanent teeth
によれば、Vertucci TypeⅣは、この全ての形態の20%の確率の方に入っている。
さた、この症例でもMB1にProTaper SXを入れてコロナルフレア形成し、C+10→C+8→C+6を入れるが…穿通しない。
したがって、機械的に穿通を試みた。
メカニカルグライドパスである。
これについて今一度整理しよう。
<メカニカルグライドパス>
#10のNi-TI Fileを高速回転・低トルクで使用する。Ni-Ti Fileの使用は、基本的に単回使用に限る。
①HyFlex EDM #10.05を650rpm, 0.7Nで使用
②RaCe EVO #10.04を1,000rpm, 1.5Nで使用
③RaCe EVO #10.02を1,000rpm, 1.5Nで使用
これでも穿通しなければ、その根管は石灰化しているということになる。
作業長はCBCTを参考に決める。
おおよその作業長はCBCTによれば、この症例であれば、14mmであるので15mmの長さで根管をついてみる。
①この長さにして、HyFlex EDM #10.05を高速回転+低トルクで(650rpm, 0.7N)回転させてMB1をつついてみた。
が、穿通しなかった。
②次にRaCe EVO #10.04を使用した。1,000rpm, 1.5Nにして(白水の推奨回転数とトルクである)穿通を試みた。
が、これも穿通しなかった。
③最後に、RaCe EVO #10.02を使用した。同様の回転数で穿通を試みた。
が…これも穿通しなかった。
となれば、この根管は閉鎖である。
MB1は穿通ができなかった。
次にMB2の根管口を探索した。
CBCTによれば、MB1の付近にMB2はあるはずだ。
またMB2は尖通させることができるかもしれない。
この場所関係を頭に入れて、当該部位を探索する。
すると…思しきものが目についた。
ここに、短針を突っ込む。そしてSXを使用すると…形成ができた。
このように、根管口の探索後のスカウティングにはDo Well Dentalの短針が非常に役に立つことがわかる。
そしてMB2の探索にはCBCTが必須だ。
その後、作業長も計測した。
するとここは穿通した。
細菌感染を受けている歯牙であるので、#35以上の形成が必要であるので、MAFはHyFlex EDM #40.04である。
MB1,MB2の作業長などは以下である。
直線根管なので、まず#25.Vで形成した。
次に#40.04で形成した。
根管形成はこれで完了である。
全く時間がかからない。
最後にPatency Fileをし、根管をパックしているであろうデブリの詰まりを除去した。
その後、MB1,MB2を根管充填した。
最後に、一昨日穿孔した部位をBC puttyで封鎖しレジンで築造した。
術後にPAを撮影した。
CBCTも撮影した。
MB1
MB2
Perforation repair部
ということで問題はクリアされたことがわかるだろう。
ただこれで根尖病変が消えるか?はわからない。
消えなければ、Apicoectomy一択だ。
次回は半年後の2024.4である。
どうなったか?また報告したい。