紹介患者さんの経過観察。

約2年経過している。

当時(2021.10.17)の主訴は、

前歯に鈍痛がある。以前、虫歯治療で神経を保護をしたところなのだが…

であった。

他院で、CR充填した際に露髄し歯科医院が急に忙しくなったそうだ。

私には、その時の情景が目に浮かぶようにわかる。

歯内療法学的検査(2021.10.17)

#8 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#9 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#8にSinus tractがあり、根尖部に圧痛がある。

ここが患歯だ。

PAを撮影した。

PA(2021.10.17)

上顎前歯の根管治療なので、CBCTは撮影していない。

歯内療法学的診断(2021.10.17)

Pulp Dx: Pulp Necrosis

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: RCT

ということで同日に根管治療へ移行した。

が、Sinus tractがあるので根尖孔外細菌感染の可能性がある。

根管治療だけではマネージメントできない可能性がある。

それは術前に患者さんに伝えておいた。

根管充填後PA(2021.10.17)

ここから経過観察へ移行する。

1yr recall(2022.10.1)

歯内療法学的検査(2022.10.1)

#8 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold+1/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

術前の症状は喪失した。

PA(2022.10.1)

CBCT(2022.10.1)

根尖病変が依然としてある。

外科治療の適応症になるはず?だが、

①術前のCBCTを撮影していないので病気が小さくなったか?以前として変わらないのか?詳細が不明

②患者さんに痛みがない、Sinus tractもない、何より外科治療をしたくない

ことから、経過観察となった。

ここからさらに1年が経過する。

#8 RCT 2yr recall(2023.9.14)

歯内療法学的検査(2023.9.14)

#8 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold+1/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

以前として問題がない。

CBCT(2023.9.14)

1年前に比べて根尖病変は小さくなっている。

これが昔の歯内療法の成功のクライテリアだったら…治癒とは言えないという判断になり外科だが、

今はAAEの成功の基準をこの業界では主として置いているので

その点からすればこの歯は” Healing”か”Healed”だろう。

そして、この患者さんの かかりつけ医の先生は, 私がかつて教えた先生であるので、何か問題があれば彼がApicoectomyしてくれることになった。

さてこの処置から我々が学べることは何か?といえば、

成人の歯牙における生活歯髄療法の予後は極めて悪い、特にDirect Pulp Cappingは…

である。

これは今年、東京のVPTセミナーで話した通りである。

東京歯内療法セミナー2023

ではなぜこれほど予後が悪いのだろうか?といえば、大人の歯髄と小児患者の歯髄には大きな差があるからだ。

ということで色々あった症例だが、根管治療とその経過観察に幕は落とされた。