紹介患者さんの治療。
主訴は
右上奥歯の痛み。硬いものを噛むといたい。歯軋りもあるので、毎朝起きるのが辛い…
であった。
歯内療法学的検査(2023.10.16)
#2 Perc.(-), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#2が患歯のようだ。
PA, CBCTを撮影した。
PA(2023.10.16)
CBCT(2023.10.16)
MB
MBの根尖部には病変がある。
そしてすでに太く根管形成・根管充填がなされている。
これは…再根管治療の効果がほぼないことを示している。
また、MBはPと繋がっている。
Pを見てみよう。
P
Pはほぼ穿通していそうだが、パフがないので緊密な根管充填か否かがわからない。
しかし、いずれにしても、これだけ太い根管形成がなされて病変が出ているわけなので、再根管治療の効果はほとんどなさそうだ。
最後が独立したDB。
DB
DBは石灰化していたのだろう。
これが穿通できるか?は私にはわからない。
以上より、
①まず再根管治療をしてみる
②Intentional Replantationへ進む
の二択だろう。
患者さんは、再根管治療(この根管治療にかつて、時間が非常にかかったそうだ。)よりもIntentional Replantationを選択した。
理由は、
Quick
だからだ。
時は金なりである。
歯内療法学的診断(2023.10.16)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Intentional Replantation
除冠は、抜歯後に行うことにした。
その方が楽だからだ。
Intentional Replantation成功のコツは、
咬合接触させてはいけない
ということである。
それを忠実に守る必要がある。
ということで、同日、治療へ移行した。
⭐︎この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#2 Intentional Replantation(2023.10.16)
まず脱臼して抜歯した。
この時のポイントは、隣在歯があるか?である。この歯は#3があるので、心配ないだろう。
脱臼して抜歯した。
生食に浸しておいて、抜歯窩を精査する。
落とし物がないか?Checkしなければならない。
抜歯窩に落とし物はなかった。
ということで、生食に浸しておいた歯牙を観察していく。まず除冠した。
メチレンブルーで染めていく。
歯牙を観察した。
VRFは見当たらない。
根切していった。
さて…
この歯は何根管あるだろうか?
3根管だろうか?
その答えと導き方は後ほど示そう。
逆根管形成した。
さて、
私は逆根管形成しながらMBとPの間のイスムスのことを考えていた。
ここに根管はあるだろうか?
えっ?メチレンブルーが染まってないじゃないかって??
あなたは、イスムスの有無をメチレンブルーだけで決めているのだろうか?
だとしたらそれはまずい。
今から教授する方法で確認しよう。
必要な道具は Q-opticsである。
マイクロスコープのライトを落として、Q-opticsを歯に当ててみた。
あなたはイスムスが見えただろうか?
あれはUSCの時だ。
同級生が、上顎の6のMBのApicoectomyをしていた時、
Dr.Schechter, MBにイスムスはなかった!と報告すると、
馬鹿野郎!あるに決まってんだろう! Lit reviewで90%以上あるってあっただろうが!と一喝していた
ことを思い出す。
そう。
イスムスはあると思うのが自然なのだ。
メチレンブルーで染まらなくても、ライトでその存在が明らかになることがあるのだ。
よく覚えておこう。
根管形成を追加した(MBとPをつなげた)
逆根管形成窩洞を乾燥させ、Lid techniqueで逆根管充填した。
PAを撮影した。
問題はないと思われる。
CBCTも撮影した。
MB
P
DB
DBは私の形成が変移したのか、前医の根管形成が変移していたのか?はわからない。
気泡は残念だが、やり直そうとは思わない。
Hollow tube theoryは否定されているのだから。
最後に再植した。
Tooth Sloothを使用して抜歯窩に再植した。非常に便利な道具である。
再植後、患歯は咬合接触していないことに注目しよう。
これが成功のコツだ。
PAを撮影した。
問題はないと思われる。
次回は1ヶ月後に経過を追っていく。
またその模様はお伝えしたい。