前回の記事の続編。
再根管治療では埒があかなかった。
その理由がわかっただろうか?
といえば、ほぼ文献通りの結果だからだ。
それが読める人は、臨床家として他人より抜きん出ているだろう。
が、
それに気づかない人は他人より置いて行かれているだろう。
しかし、歯科医療は他人との競争ではないし、命にも関わり合いがないので問題はないけれど。
ということで、前回のポイントは
近心根の根尖部は破壊されており、修正不可能である→近心根はApicoectomyの適応症
ということであった。
#30 Pre-op PA(2023.10.13)
前回説明した通り、
テクニカルエラーごと除去してしまえば問題がなくなるだろう
という作戦である。
つまり、この医原性のミスを起こした部分ごと消去してあげればいいわけだ。
それほど難しい治療ではない。
それを裏付けているのが、
前回の再根管治療での近心根の充填がBC sealerで終了している点だ。
もう、
Retroprep後のGutta Perchaの残渣で頭を悩まされることがなくなっている。
これは大きな利点である。
#30 Pre-op CBCT(2023.10.13)
M
トランスポーテーションの上部で切れば、解剖学的な医原的不作為ごと消去できる。
それは、Apexから5mmの部位だと思われる。
右下でもこの症例はだいぶ難易度が低下していることがわかるだろう。
しかも、
1根管で5.6mmしか頬舌径がない。
それほど難しいApicoectomyであるとは思えないのである。
また、切断部の歯根まで到達するには、歯槽骨を1.2mm削合しなければいけないことがわかる。
Apexまでならもっと削合せねばならない。
ここで逡巡する人がいる。
そうした人へ…
歯槽骨を削って、痛え!と言われることはない。
つまり、麻酔が効いていさえすれば、まさに模型を治療しているのと何も変わらない。
このどこが難しいだろうか?と思う。
その他の歯根も見てみよう。
D
ここは切断箇所ではない。
その時の状況把握のために公開した。
Radix
Radixにも病変がある。
ここが外科になれば…大変難しい治療になるだろう。
が、前回示した通りこの病変は近心根の病変がRadixにも病変があるかのように見せている可能性がある。
が、ここは今はどうこうする予定も修正もできないので、現時点では、今後の予後を見守るしかない。
ということで、#30 Mのみ攻略するApicoectomyが別日に行われた。
⭐︎この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#30 Apicoectomy(2023.10.13)
Flapを開けたが、縦切開は#28に入れた。
理由は口角が極めて柔らかい人だったからである。
この術野でもいけるだろう。
長さを計測して、CEJよりも14mm下部を削合した。歯槽骨は3~4mm程度掘らなければならないだろう。
Apexを発見したらそこから5mmで切断する。
このことからもApicoectomyはApexの位置をまず見つけなければ話にならないことがわかる。
そして、CBCTを頼りに深さ6mmまで切削した。
Resection後はRacelletを入れて止血を図っている。
この状況でRetroprepしていった。
Gutta Perchaがないので仕事が早くなっている。
問題ないと判断し、逆根管充填した。
PA, CBCTを撮影した。
CTは以下になる。
問題はないと思われる。
縫合して終了した。
今回の治療の最大のポイントは、
外科を見越してM根をBC sealerで根管充填したこと
と
#30 M根が1根管だった
という2点であろう。
それだけで外科治療の難易度が大幅に低下する。
その後、1週間後に抜糸にきていただいた。
#30 Apicoectomy後 抜糸(2023.10.19)
次回は半年後である。
またこの歯の模様をお伝えしたい。