紹介患者さんの治療。
主訴は以下である。
今回治療していただく前歯ですが、1年半の間、地元の歯科医院で1週間に1回、根管治療を続けてきたにも関わらず良くならず、今も鼻の入り口あたりを触ると痛みがあります。前歯でものが噛めません。歯にものが当たるとすごく痛みます。痛みなく、普通に食事ができるようになりたいです…
であった。
ここに至るまでのStoryが見えるようだ…。。。
日本の保険歯科医療は既に死んでいると言っていいだろう。
まずは検査を行った。
歯内療法学的検査(2023.11.14)
#7 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#8 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#9 Cold NR/20, Perc.(++), Palp.(++), BT(++) , Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#10 Cold+2/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#9に激しい痛みがあるようだ。Percussion, Palpation, Biteの3つとも++の三冠王である…
なんとか早く解決してあげたい。
☆検査動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
PA(2023.11.14)
CBCT(2023.11.14)
根尖部でトランスポーテーションしている。
頬側の皮質骨もない。
Flapを開けば、Apexはすぐに見つかるだろう。
CEJよりも11mm下部にApexがある。
似たような症例が昔、ありましたよね?
あれはどうやって問題を解決したか?覚えていますか?
歯内療法学的診断(2023.11.14)
Pulp Dx: Previously initiated therapy
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Core build up with Fiber post→Apicoectomy
行うべき術式は、Apicoectomyであるがアドレナリンの効きには時間的制約がある。
Lindorf 1979 Investigation of the vascular effect of newer local anesthetics and vasoconstrictors
そこでこの症例では、
まず支台築造をして、
それから3mm切断して3mm逆根管形成・逆根管充填を行う
計画とした。
すれば、1回で治療は終了できる。
しかし、
Gutta Percha Pointが根管内に入っていない状態でどうやって支台築造すればいいのだろうか?といえば、
①Apexから3mm切断して、
②切断後、3mmは逆根管形成・逆根管充填し、
③その上が全てレジンであればいい
ということになる。
これを図式化すると、以下になる。
ApexはCEJよりも11mm下にある。
そこから3mm切断して、3mm逆根管形成・逆根管充填するとすれば、
その上は全てレジンだ。
レジンは根管口より8mmしたまでくる必要がある。
が、である。
どうやってそれを実現すればいいだろうか?
といえば、こういう治療の局面に必要なのがRegenerative Endodonticsの治療の内容だ。
CollaPlugを使用してこれをキャップにする。
そうすれば、このキャップより上に排膿や出血はこない。
まさに人工的にブロックする道具である。
欠点は、
CollaPlugと逆根管充填材の間に気泡=CollaPlugが残存し、気泡が入っているように見えることである。
が、気泡が入っていても問題がないことは、
Torneck 1967 Reaction of rat connective tissue to polyethylene tube implants. II
によって立証されているので問題はないのであるが、絵としては綺麗ではない。
が、気泡が入っていても問題がないという論文は知っているが、
その逆を私は知らない。
ということで、この日に築造、歯根端切除術へと移行した。
☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#9 Core build up with Fiber post→Apicoectomy(2023.11.6)
まず支台築造した。
この後、Apicoectomyを行った。
前述した通り、ApexはCEJよりも11mm下部にあるが歯槽骨がないので容易に見つかった。
Apexから3mmで切断した。
倍率をあげて詳細を把握した。
切り残しがあれば…修正が必要だ。
メチレンブルーで染め出して確認した。
問題がないことを確認し、Retroprepした。
問題がないことを確認し、Retrofillingした。
PA, CBCTを撮影した。
逆根管充填材とレジンの築造体の間の隙間が空いている。
これを解消するには…
もっと歯根を切断するしかない。
が、それが必要なことだろうか?
要は見栄えだ。
CollaPlugをもっと根尖側に入れるべきだっただろうか?(少なくともRetroprepの位置までには…)
が、築造で封鎖している以上これ以上の修正は歯根を切断することのみで得られる。
それがこの患者にとって、Mustだろうか?
と考えて私はそのままにすることにした。
最後に縫合して終了した。
その前に…
必須の医療行動がある。
歯肉を滅菌ガーゼを生食で濡らしたもので圧迫止血すること
である。
理由は
極力、歯肉退縮を防ぐため
である。
元の位置にほぼ戻ったと断定したら、そこから初めて縫合が開始される。
歯肉圧排は実に重要な医療行動だ。
が、歯周病の患者でなければ元の位置にほぼ戻るが。
最近もそういう相談があったばかりである。
なぜこうなるか?
それは、
術前に#8には歯周病の問題がないから
である。
何度も言うが、
歯周病に問題のある歯の根管治療・再根管治療・外科的歯内療法は一切行わないのがアメリカだ。
見た瞬間、抜歯である。
それがいいか悪いかは別問題だが、上述したようにペリオの問題はでないのである。
なぜなら、歯周病の患者ではないからだ。
ということで、最後に縫合して治療は終了した。
ということでこの日の治療は終了した。
次回は半年後である。
また皆さんにも、ご報告したい。