バイト先での治療の模様。

患者はまたしても先日の40代男性。

#7 Apicoectomyである。

過去に東京の歯科医師によってApicoectomyがなされているらしいが問題が続いていた。

とにかくそこの部位を触れると痛みがある。

処置前の歯内療法学的検査は既に行なっていて以下のようになった。(2021.3.29)

#6 Cold+3/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#7 Cold N/A, , Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold+2/6, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PA

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-Apicoectomy

患者の歯茎には横に切開した後が残っていた。

おそらくその処置を行った先生は顕微鏡も当時はないので、術中は血まみれで大変だっただろう。

イライラが募ったはずだ。

その最大の原因は切開方法が違うからであるが、それよりももっと重要なのは

グリーンのキシロカインを使用していなかったからだ。

さて、再度外科治療をすれば治るのか?といえば、昔似たような症例があった。


それは今を遡ること約3年前。(2018.5.31)

患者はインプラントで有名な他院で処置をしていた。が、そこが腫れて痛いという。

PAは以下になる。

前医は歯根端切除のみ行い逆根管形成、逆根管充填をしていない。

で、骨窩洞には異物である人工骨を充填していた。

なぜこのようなことが起きるのか?といえば、歯内療法の学習などこの担当医はしていないからだ。

しかし、これが現状の日本の一般的な歯科医院のレベルである。

再根管治療ということもあったが既に根尖部を切除されているのでApicoectomyを再度行ったのである。

術後は以下のようなPAになった。(2018.7.10)

そして3ヶ月後には症状はなくなり安定していた。(2018.10.1)

しかし、ここで患者さんは台湾へ引越しとなってしまった。

経過が見れなくなったが、私の方でこの患者にメールをしてみると以下のような返事があった。

松浦先生

先生、お久しぶりです!
ご連絡うれしいです。
治療経過は相変わらず良好です。

脳出血でお倒れになったとのこと、家族の皆様もとても心配されていることでしょう。
私も心配です。
どうか治療に専念なされて下さい。

私も帰国できるようになれば(コロナで身動きが取れない)経過観察に伺いますのでよろしくお願いいたします。

ということで、話を元に戻そう。昨日の治療が非常に早く終了したため、この歯のクラウン、ポストコアの除去を昨日行った。

支台築造後のPAである。

Gutta Percha Pointを調整しようと思ったら根尖部から逸出してしまった。(2021.4.2)

が、これは外科治療時に取り除くと伝えている。

もしかすると痛みが出るかもしれないことも伝えた。

翌日、外科治療が行われた。(2021.4.3)

痛みはなかったそうだ。

以前に歯根端切除してあったが、かなり斜めに切断してあった。

私はマイクロスコープを用いてその切断面を平らにし、逆根管形成を再度行い、BC puttyで逆根管充填した。

歯根が露出しているが、外科治療後に歯茎が下がることなどをあらかじめ説明している。

ただ歯周病はないので私がフラップを粗野に扱わない限りは、術後に大きな問題は生じないはずである。

(以下の画像に嫌悪がある方は飛ばしていただきたい)

PAは以下になる。

最後は6-0で縫合して終了した。(縫合は全部で8糸している)

わずか45分で終了した。

根管治療よりも早い…

(以下の画像に嫌悪がある方は飛ばしていただきたい)

患者さんからは以下のような感想をいただいた。


先生、長い間治療ありがとうございました。

根管治療というのは非常に長くかかると聞いていましたが毎回1回で治療が終わるのでびっくりしていました。

この歯が長持ちするように、次の補綴治療を頑張りますので今後ともよろしくお願いいたします。


この会話の中で重要なのは患者が私に訴えた赤い文章の部分だ。

根管治療は頑張るけど補綴治療は頑張らない人が多い。

補綴治療を頑張らなければ根管治療した部分は治癒しない。

それはアメリカでも一緒だった。

3ヶ月後に経過観察で呼ぶとまだCoreのままである、という患者がざらであった。

しかし、それは仕方がない。

なんせ、アメリカでは修復治療は高い。

住んでいる場所によってそれは左右される。

例えば私の知り合いの日本人の女性(米国ロス在住)から最近、修復治療費が高すぎて治療ができないという相談を受けた。

向こう(ロス)で寿司屋を経営しているが、歯科治療費が高すぎるという。

これがアメリカの最大の問題だ。

生活水準の高い場所にいると、かなり高額な歯科医療費を請求される。

もちろんその請求書は修復治療のみで、根管治療の費用は含まれない。

近日中にも治療費問題の話は本ブログで公開しよう。

さて私はそれに対してどう考えるか?だが、正直、私にはそこまでの価値観がわからない。

見立てを良くすることよりもその歯が健康かそうじゃないか?ということの方がよっぽど大事だと思うのだが、アメリカ人はそうではない?ようだ。

そのアメリカ在住の女性は結局、アメリカで歯科治療を受けること自体を諦めた。

コロナが収まり、日本に帰国できるようになった時点で私の治療を受けるという。

修復治療も私の知り合いの歯科医院でたかだか数十万だろう。(いっても20万超えない)

根管治療は以前再治療を行なっているのでそんなにかからない。

多分、今アメリカで請求されている金額の1/3くらいで歯科治療が完結する。

であれば、日本で治療すればお金の節約になり親にも会える。

どう考えてもそっちの方がいいだろう。

これが健康志向が強くなりすぎて、健康を与える方とそれを享受する側の関係が崩れた一つの例だと捉えることができる。

アメリカは弱肉強食だ。

あそこで生きている日本人は、年配になり重い病気になった時に日本へ帰国していくものだという。

現地でお世話になった日本人の不動産屋のディーラーがそう言っていた。

経済という点で言えば私はアメリカよりもカナダの方が日本の理想にあっていると思う。

歯科はすべて自由診療。

でも医科は保険診療。

日本もそうすれば新しいステージに入ると思うが、そうなることは100%ないと断言しよう。

なぜか?歯科医療なんて誰も興味がないからだ。

それがどうなろうが、コロナ窩でも集団で馬鹿騒ぎするような高い知性をお持ちの官僚様にとってはどうでもいいことなのだ。

さて治療した患者の予後は次回は半年後に経過観察する。

その際の治療費はもちろんない。

今年の10月を予定している。

また、その模様はこのホームページで公開しよう。