私の大学院時代に子供と同じ小学校であった日本人の女児がいてその親と知り合う機会があった。
彼女は日本人で娘と私の長男が同級生で仲が良かったのもあり、私が日本に帰国してからも昔の歯科医院(長住のあの曰く付きの?歯科医院)に来てくれてそこで根管治療をしたことを覚えている。
術前の診断は Pulp Dx: Pulp Necrosis, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis with sinus tractであった。
その後治療した部位は治らず結局Sinus tractは消えなかった。
が、症状がないのでそのまま経過観察になったのである。
以下、当時のPAを上げる。(2016.11.18)
この当時はこの業者の担当者に騙されて、のちにこの販売会社の大阪支部の人間も某勉強会で写りが悪いです、すいません…と公式に認めたPSPIX-2を私は買わされてしまっていた。
しかし私のその時の担当者は、調整すれば良くなるの一点張りで話しても埒があかないと感じた私はPSPIX-1に変更できないのか?と彼の会社の最高責任者(福岡支長?)に頼み、PSPIX-1に戻してもらった。
それが以下の写真である。(2017.11.16)
この時、初診時に存在していたSinus tractは消失していた。
歯内療法がうまく行った!と喜んでいたのもつかの間であった。
なぜか?
Sinus tractが復活したかったからである。(2018.12.17)
MB根に問題があることがわかる。
Apicoectomyを提案したが、この時は日本に滞在する日数がそれほどなく次回帰国した時にという話になっていた。
が、私が脳出血で倒れて病院を取り上げられてしまったため予後は追えないでいたが、メールで先方から連絡がきたというのが今回の話である。
ちなみに彼女はビバリーヒルズに在住している(家賃平均30万くらいの、お金持ちが在住する場所である)。
松浦さん
お久しぶりです。
お元気ですか?
脳出血になられたとお聞きしました。
非常に心配しております。
体調はいかがですか??
実は松浦さんに聞きたいことがあってメールしました。
コロナでマスクしてるうちに矯正をしようと思って矯正医に行きましたが、以前松浦先生に治療してもらったところがかなり炎症してるとのことでした。
本当は日本に帰って先生に治療してもらいたいんですが、まだ先になりそうなので…他にも虫歯があったから誰か良い歯医者さん知り合いがロスにいたら教えてもらいたいなあと思いメールしました。
私の方も修復治療医(歯科医師, GP)のクリニックに行ってみようと思っていますが、先生からのお返事もお待ちしています。
よろしくお願いいたします。
私は歯内療法は大学院時代の同級生でロスで勤務している友人に、修復治療は知り合いがいないのでこのメールを送っていただいた方が在住する場所周辺(ビバリーヒルズ周辺)の歯科医院に行っていただければ、と思っていたが以下のようなメールが返ってきた。
松浦先生
お世話になります。
先ほど歯医者さんにコンサルに行ってきましたが、あまりの治療費の高さにビックリし過ぎて頭が真っ白になりました…
神経治療とは別に歯2本で$7700だそうです…
一桁間違ったかと思いました…
そこでもう少しコロナが収まるのを待って日本に戻って、松浦先生に治療していただき(右上6, 左下奥歯)、日本で修復治療していくことに決めました。
また帰国する際は連絡いたしますのでよろしくお願いいたします。
その歯科医院の治療費がどれだけ高額なものなのか?
私は彼女から見せてもらった。
それが以下になる。
私が根管治療をした#3は治癒しなかった。
そこでこの修復治療の歯科医院はその#3に対して
①Core build up
②Ceramic Onlay
を行うそうだ。
合計金額が
①$550
②$3,300
で
歯内療法のやり直しなどを除いた金額が$3,800である。
日本円に戻すと1$≒110円(2021.4.5)である。
が、銀行には手数料がある。(1ドルあたり約2円)
結局#3を修復治療しようと思えば、
$3,800→3,800×110+3,800×2=¥425,600かかるということになる。
私が知っている日本のどの修復治療・補綴治療の歯科医院よりも高い…
1本40万オーバーのアンレー?
こいつらは正気なのだろうか?
これに根管治療が必要になるのだ。
外部で治療すれば
かなり安い場所・・・USC(300~500ドル/1本で治療可能)
安い場所・・・Maxで¥100,000(ただし医療提供している場所などがUSCのように治安が良くない場所になる)
高い場所・・・¥200,000以上が普通
である。
つまりこの歯を治療して直すのに
¥625,600はかかってしまう。
なので最初患者はUSCで治療できないか?と相談してきた。
当時お世話になったUSCの歯科助手のAlexにも聞いたが、
USCは治療費は安いけど時間がかかる+誰になるかは選べない
という弱点がある。
また患者によれば#19も根管治療のやり直しが必要だという。
それも治療費が$3,800→3,800×110+3,800×2=¥425,600かかるということになる。(根管治療費は別)
また、それ以外にも
#4のInlay修復治療($3,300→3,300×110+3,300×2=¥369,600)
#12のInlay修復治療+レジン充填($3,300+$700→4,000×110+4,000×2=¥448,000)→おいおい、レジン充填くらいタダでやってやれよ!“部位”が違うからか??
#30のPorcelain Onlay修復が必要だという。($3,300→3,300×110+3,300×2=¥369,600)
つまりこの女性が彼女が住むエリアで治療を完結しようと思うと、
合計で¥2,038,400+2本の再根管治療費用(約250万円…)
となるわけである。
これが日本であれば、
修復治療は高いところでも1本10万程度だろう。5本あるのでおそらく50万程度だ。
根管治療はうちでやればやり直し治療である。2本あるが、おそらく30万も行かない。
合計80万。
ということで日本で治療すれば観光代もホテル代ももしかしたら飛行機のチケット代も賄えるだろう。
行き過ぎた治療費の高騰はこのように医療難民を発生させる。
詳しくは私も昔映画館で鑑賞した、マイケルムーア監督のSiCKOをご覧いただきたい。
アメリカの馬鹿げた一面を見せつけてくれる。
怪我をするならアメリカではなく、カナダでが合言葉だ。
治療も米国ではできないのでメキシコやキューバへ行く人も多い。
行き過ぎた?自由診療は人から家を奪い、生活をも奪っていく…
しかし、行き過ぎた保険診療も医療従事者を疲弊させてやる気を奪っていく。
昔、USCで日本の歯内療法の費用は100ドルで3割負担だと言った時にそれを聞いたUSCの学生は全員がクレージーだ!と言ってたっけ。
そんな費用でどうやって道具を購入して歯科医院を運営できるんだろう。
日本も、アメリカも医療に関しては闇が深い。