以前の歯科医院での治療。
これは私の診療方針に大きな影響を与えた患者さんである。
患者は50代女性。
主訴は左右下顎大臼歯の痛み。
左下6は残根状態で健全な歯質がなく保存が不可能であった。
そして、左下7は大きなカリエスがあり冷水などに対してしみが強く食事ができないという。
右下7も同様である。
ただそれ以上に気がかりなことは、紹介状がないということである。
自発的に以前のHPを見て来院された患者さんだった。
歯内療法学的検査は以下のようになった。(2017.8.25)
#18 Cold++2/65, Perc.(++), Palp.(+), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#20 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#22 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Cold++1/32, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#32 Cold+2/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#18はCold testを行うとありえないほどの痛みが長時間(65秒)続いた。
#31も(32秒)だ。
患者の主訴は冷水痛である。
しかし、それでもCold testしなければならない。
患者の主訴を再現できなければ歯内療法はできないからだ。
ちなみにCold testを行なって歯髄が壊死したり歯髄炎になったりすることはない。
なぜか?
理由が知りたい先生は、Basic Course 2021の1回目にその話はする予定である。
PAは以下のようになった。
以上より歯髄、根尖部歯周組織の病名は以下のようになる。
Pulp Dx: Symptomatic irreversible pulpitis
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
根尖病変があるのにCold testに対して++??
そんな異常な?ことがあるのかと思ったあなた。
別に異常なことではない。
私はPA撮影は検査が終わってから行う。
なぜか?
余計な思い込みを入れたくないからだ。
こういう写真を撮ってこういう画像が得られたから、その結果はこうあるるべきだ、こうのはずだという思い込みを入れたくないからだ。
根管治療で十分患者の痛みはマネージメント可能である。
治療の成功率はどれくらいあるだろうか?
かなり高いとあなたは治療前に断言できるだろうか?
というわけで根管治療が行われた。
右下臼歯部にも似た問題(冷水痛がひどい)があったので別の日に根管治療となった。(2017.8.31)
こちらも問題なく1回法で終了した。
さて、私はこの患者の歯内療法以来、紹介状がない患者さんの治療は一切していない。
その治療方針は今後も変わらない。バイト先でも同じだ。
なぜか?
上記の患者は根管治療後、私と行くと決めた修復治療をおこなうはずである歯科医院に、一切姿を表さなかったのである。
何度電話しても、様々な理由をつけて受診を拒み、そして最終的には連絡がつかなくなった。
結局、最後は知らん顔であった。
これが人間として許される対応・態度だろうか?
と同時に訳のわからない補綴物が装着されればわたしの行なった根管治療は無駄になってしまう。
私は裏切られた思いであると同時に金輪際、2度と紹介状のない患者の歯内療法は一切しないと決意した。
歯科治療よりも人との信義を裏切る方が大問題だ。
おそらくもうこの患者は近所の保険歯科医療機関でもクラウンを装着していないだろう。
悲しい話である…