紹介患者さんの治療。

主訴は、

左上奥歯の治療を3回行ったが、硬いものを食べた時の痛みが治らず、また歯茎が膿んできた

であった。

歯科治療歴は以下になる。

1件目 熊本のどこかの歯科医院。7~8年前にラバーダムせずに根管治療した(これがこの歯の初めての根管治療)

2件目 東京の歯科医院。ラバーダムして再根管治療した。ファイルが破折していると言われたが、それは取れないと言われた。

3件目 静岡の歯科医院。2回治療した。

4件目 熊本の歯科医院。バーダムして何回か治療した。3~4ヶ月通院した。治療後、1~2ヶ月経過しても痛みが引かなかった。2024から歯茎が主張し出した。

5件目 福岡のかかりつけ医を受診。その際、神経の治療はうちに行くように言われた。

以上のような治療歴である。

かいつまんでまとめると、過去1回根管治療を、過去3回再根管治療をしているが、状態が改善しないままである。

かなり問題があるのだろうか?

歯内療法学的検査(2024.3.27)

#13 Cold+3/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#14 Cold N/R, Perc.(-), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL),Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#15 Cold+3/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#14にSinus tractとひどい咬合痛がある。

PA(2024.3.27)

過去の治療の形跡がみて取れる。

これ以上、何ができるのだ!という前医の心の叫びが聞こえる。

そう。

もうこれ以上、非外科的歯内療法で何とかすることはできない

のである。

完全に外科治療の適応症だ。

CTを撮影した。

CBCT(2024.3.27)

MB

DB

P

CBCTからわかることは、

DBとPがつながっている。上顎第2大臼歯のような第1大臼歯だ。

また歯根を取り囲むように歯槽骨が溶けている。

垂直性歯根破折が疑われる。

が、直接歯牙を観察しないと真偽は不明だ。

そして、頬側の歯槽骨がほとんどない。

以上が意味することは、

歯牙を抜歯して歯根が破折しているか否か?を確認した方がいいだろう

ということである。

もし破折があれば、抜歯してGBRである。

破折がなければ、Intentional Replantationだ。

そのことで治癒が進めば天然的にGBRすることができる。

例え将来、歯牙が破折しても。

歯内療法学的診断(2024.3.27)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: Core build up with Fiber post→Intentional Replantation

ということで同日、治療へ移行した。


⭐︎この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#14 Intentional Replantation(2024.3.27)

歯根の周囲に歯槽骨がしっかり付着している口蓋根から脱臼させていった。

その後、ペリオトームで歯根の全周の歯根膜を剥がすことに努めて、最後が近心頬側からヘーベルを入れると歯牙が動いたので、最後にダイヤモンド鉗子で歯牙を掴んで抜歯した。

その際、MBのApexに存在すると思しき、破折ファイルが目についた。

抜歯後、抜歯窩をCheckした。

抜歯窩には何もない。

忘れ物はなさそうだ。

次に歯牙を観察する。

VRFはあるだろうか?

メチレンブルーで染色した。

が、VRFは見つからなかった。

その後、支台築造してApicoectomyした。

3mmで切ると以下のような形態になるはずだ。

上記の形状と相似であることから問題がないだろう。

 

逆根管形成をしているが、

MB2の存在と形成、

DBとP間のイスムスの存在をどのように検知したか?わかるだろうか?

逆根管形成が3mmの深さになるように形成し、最後に逆根管充填した。

PAを撮影した。

問題はないと思われる。

抜歯窩に再植した。

最後にPA, CBCTを撮影した。

MB

DB

P

問題はない。

次回は1ヶ月後である。

また状況をお伝えしたい。