紹介患者さんの治療と経過観察。

かかりつけ医は、

ラバーダムをかけて再根管治療をしたが穿通せずに根尖病変が消えず、最終補綴へ移行できなくて困っているという。そこで#19のしかもM,D2根同時の外科治療を依頼された。

ちなみに患者さんにはいかなる症状もない。

#19 Apicoectomy M,D(2023.4.3)

うちがCTを取り入れる前の時代であったので、近医でCBCTを撮影してもらっていた。

これを基に、Apicoectomyを行った。

#19 Apicoectomy(2023.4.3)

近心根はCEJより10mm下部にある。

そこを少々掘るとM根のApexに到達する。

そこを頬舌的に7.5mm削合する必要がある。

難しい…

まさに洞穴を掘るような治療だ。

その後、逆根管形成した。

その後、Lid techniqueで逆根管充填した。

これで近心根は終了だ。

が、まだ遠心根がある。

こちらも2根管性でやりずらい。

下顎の大臼歯で難症例なのは、近心根も遠心根も2根管性で両方ともApicoectomyしなければならない場合だろう。

今回がまさにそれだ。

これが右下だったら…ゾッとする。。。

遠心根の皮質骨もOsteotomyして遠心根のApexを見つけ出し、Root resectionしている。

きりぞこないを何度も調整しているのは、歯根の頬舌的距離が長い(約8mm)からだ。

その後、逆根管形成した。

逆根管充填した。

PAを撮影した。

問題はないと思われる。

最後に縫合して終了した。

さてここから経過を見ていくことになる。

まず抜糸である。

#19 Apicoectomy Sutre removal(2023.4.10)

この傷跡はどうなるだろうか?

半年後に経過を見させていただいた。

#19 Apicoectomy 6M recall(2023.10.16)

外科時の傷跡はどうだろうか?

痛々しい傷跡が残存していただろうか?

それよりもだ。

圧痛試験に対して近心根の方は痛くはないが、感じるものがあるような…ないような…という感想であった。

痛くはないのだが…というやつである。

PA, CBCTを撮影した。

M根の頬側皮質骨は完全に完成していない。

これが圧痛に対してえも言われぬ感想を持つ理由である。

遠心根はといえば、

こちらは皮質骨まで回復しているので何も言われていない。

ここからわかることは、

圧痛に対して反応がある場合は、大概頬側の皮質骨が抜けていることが多い。

そして、外科後の経過観察で圧痛に対して反応があるような…ないような…というリアクションは得てして治癒過程であるということが多いのである。

ここから時間をさらに半年おいた。

#19 Apicoectomy 1yr recall(2024.4.9)

外科後の歯茎は安定している。

痛みもない。

半年前は、

圧痛があったんですよ?というと、

えっ?そうでしたっけ?

という回答である。

PA, CBCTも撮影した。

近心根も遠心根も頬側の皮質骨は完成と言っていいだろう。

その結果が、

Palpationに対して反応がない理由である。

次回はさらに1年後である。

さて。

患者さんは、左はどうもないが、右がしみる…と言われていた。

右下を見ると、

#29-30-31のFPDのプロビジョナルレストレーションが装着されていたが、

これだけ見ると問題がなさそうだが、

この絵で見ると、

すでに露髄しかかっていることがわかる。

このままいけば、

歯髄が壊死して根管が石灰化する可能性

がある。

すると選択肢は、Apicoectomyだがこれだけ頬側から離れているとApicoectomyがしずらい。

つまり大掛かりな治療(FPD removal→Intentional Replantation→FPD 再set)になる可能性がある。

という話をして、患者さんは#29 RCTを希望した。

その治療の模様はまた別日にお伝えします。