紹介患者さんの治療。

主訴は、

左下奥歯の咬合痛

であった。

歯内療法学的検査(2023.4.20)

#17 Cold+3/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#18 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#19 Cold+2/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#18が患歯のようである。

PA, CBCTを撮影した。

PA(2023.4.20)

#18の近心根の根尖に病変があるように見えるが判然としない。

CBCTを撮影した。

CBCT(2023.4.20)

M

近心根に根尖病変がある。

ここが問題だろう。

この患者さんは、3級なので、#18は#19になる。

咬合も見ないと、Apicoectomyの治療計画も立てられない。

補綴の知識がここで生きている。

3次元的に見ると、#18のM根の根尖は、CEJよりも11mm下方にあり、歯槽骨を2mm削ると、M根のApexに到達する。

3mmで切除すると、

頬舌的に4.5mm切断すればいい。

しかも、1根管しかない。

これは、一見、ハードそうで、実はEasyだ。

D

Dには問題が見当たらない。

歯内療法学的診断(2023.4.20)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy

治療はApicoectomyである。

理由は以下だ。

①患者さんが3級のBTなので、#18が#19に相当

②問題があるのがM根のみで、しかも1根管

③口角が柔らかく、外科治療に支障がない

ということで、患者さんは納得し、別日にApicoectomyへ移行した。


⭐︎このあと、外科動画/抜糸・経過観察動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#18 Apicoectomy(2023.4.27)

CEJより11mm下方に、

深さ2mm削合すると、

#18の近心のApexはあるはずだ。

まず11mm下方の“その位置”を決定する。

深さ2mm削合し、Apexを発見した。

3mm切断した。

その際の頬舌的な長さは4.6mmで1根管である。

治療しにくい前歯のような根切である。

切断後、詳細をマイクロスコープを高倍率にして確認した。

このように根切のコツは、

低倍率で切断し、高倍率で詳細を視認する

ことに他ならない。

それが取り残しや、問題点を把握する際に有効だからだ。

こんなことはもちろん、教科書には書いていない。

なぜか?

臨床的なコツだから

だ。

問題を修正し、逆根管形成する。

このように、

Apicoectomyは問題を残したまま次へ行くと、その次のStepで問題を修正しないといけなくなるので、Stepへ移る前に修正点がないか?把握するのがポイントだ。

術後にPAを撮影した。

当時はCBCTが歯科医院にない時代であったので、逆根充後が確認できなかったが、今であれば間違いなく、CTを撮影している。

この意味でも、

歯内療法臨床にCBCTはマスト

と言える。

この後、縫合した。

ちなみに治療は30分で終了している。

この手の治療は実にEasyだ。

場所がやりにくいところにあるだけだ。

それ以外は全てeasyである。

理由は1根管性であるからだ。

もはやこの手の治療は私には前歯である。

この1週間後に抜糸した。

ここから半年が経過した。

#18 Apicoectomy 6M recall(2023.10.12)

半年経過し、検査を行うと、Palp.(±)であった。

これは、頬側の歯槽骨がまだ戻っていないのだろう。

検査を行った。

若干欠損があるような…という感じだ。

さて。さらにここから半年経過した。

オペから1年である。

#18 Apicoectomy 1yr recall(2024.4.25)

検査すると、半年経過時にあった、Palp.(±)は消失した。

ということは、頬側の皮質骨は回復したのだろう。

PA, CBCTを撮影した。

頬側の皮質骨は再生している。

OsteotomyしてApicoectomyしたのに、だ。

このことからも、

エンドは組織再生できるが、ペリオは組織再生できない

ことが如実にわかるだろう。

かかりつけ医には、最終補綴を装着してもらうように依頼した。

次回は、さらに1年後である。

術野はさらに成熟するだろう。

また来年の記事をお待ちください。