バイト先での治療。

30代女性。

前医で再治療を行なったが、Sinus tractが消えないというのが主訴。

この歯科医院に紹介でやってきた。

この歯科医院に来院する前のPAや治療の様子も残っている。

術前は以下のようになる。

PA(2020.9.2)

この後、再根管治療が行われた。

その後、前歯部は前医にて再根管治療、プロビジョナルレストレーションの装着がなされていた。

が、再治療は予後が芳しくなく(#8にSinus tract形成)、以下のような歯内療法学的検査の結果とPAとなった。

#6 Cold+2/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#7 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#9 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#10 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#11 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#12 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

術前のCBCTは以下のようになった。(外科治療を行うためにCBCTを撮影してもらっている)

#7

#8

#9

#10

#11

全部で5本の歯を同時にApicoectomyしようという治療である。

私の頭はおかしいだろうか?

といえば、ある種そうかもしれない。

しかし私はこの場合は5本同時に行った方がいいと考えた。

時短を行う方法もあるからだ。

時短とは何か?といえば、Lid techniqueだ。

Lid techniqueとは逆根管形成を行い、行った部位にBC sealerを充填する。それをBC puttyで詰めるのである。

以下のようなイメージになる。

逆根管形成し

今まではそこに扱いにくいMTAセメントを充填していたが、代わりに逆根管形成された窩洞の中にBC sealerかBC Root Repair Material(RRM)を充填する。

その上からBC puttyを充填する。

そしてスパチュラ等でBC puttyを平らにする。

かなり簡単だ。

この方法で済むなら今まで私がアメリカで習ってきたことの根幹の一部が崩れてしまう?可能性が高いが、時代というのは得てしてそういうものだ。

難しく煩雑な方法や理論はいずれ淘汰される。

最終的にいつも簡便な方法が残り、複雑な方法や術式はなくなる。

今、どこの誰が難しい4/5冠の形成や印象、装着を行うだろうか?

時代というのはいつもこういうものだ。

ということで今がその時なのかもしれない。

ということで、lid techniqueをもちいて外科治療を行うことになった。

術後のPAである。

右上2番の根管の中に気泡が入ってしまった。

これにはやはりBC sealerを根管へデリバリーするチップが必要だろう。

私はこれをフローのレジンのチップで行ったために?気泡が入ってしまいかっこ悪いPA?になってしまったのだ。

ただネット検索すると以下のようなチップがアメリカで販売されていることが判明した。

EndoSequence Minimum Waste BC Tips (15 Pack)

EndoSequence Root Repair Material Retrograde BC Tips (15 Pack)

米国に知り合いがいる先生は入手が可能だろう。

(米国に知り合いがいなくても歯科モールドットコムで注文が可能なように私は彼らに日本人が注文し入手できるように手続きをしたが。)

次回は半年後の経過観察である。

またご報告したい。