バイト先での経過観察。
患者さんは30代女性。
前歯の根管治療で以前の博多の歯科医院に来院された患者さんである。
初診時は2018.5.30であった。
歯内療法学的検査は以下になる。
#6:Cold+2/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#7:Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#8:Cold+3/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下になる。
歯内療法学的診断は以下になる。
Pulp Dx: Pulp Necrosis
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
1回法で終了する内容の治療であるが、臨床では
上顎側切歯は
うまく処置できずに、再根管治療もすることができず、外科治療へ移行することが多々ある。
それは上顎側切歯の解剖学的特徴が理解されていないからだ。
上顎側切歯の解剖学的特徴とは何だろうか?
イタリアの歯内療法専門医である、Dr. Castellucciの教科書 “Endodontics”によれば上顎側切歯の特徴として以下のことが上げられる。
Very frequently, there is a distal or palatal curvature of the apical one third of the root.
Obviously, the latter is not easily recognized radiographically.
The presence of a palatal curvature explains why the lesions of endodontic origin of the lateral incisor quite often present in the palatal area.
日本語に訳すと以下のようになる。
①歯根は遠心または口蓋側に高頻度で湾曲している
②その解剖学的特徴はPAではわからない
③側切歯の根尖病変は口蓋側に存在することが多い
この事実を頭に入れて根管治療を行っている術者が日本にどれだけいるだろうか?
前回のApicoectomyでもそうだった。
#7である。
根尖は大きく拡大され破壊されている。
根尖病変は口蓋側に大きく存在する。
これだけを見てあなたは口蓋側に破折があるかもしれない?と思うだろうか?
私は、側切歯の解剖学的形態を前医が既に破壊してしまったからこのような病変ができてしまっていると考える。
事実、破折線はなかった。
これが側切歯の根尖病変の特徴である。
ということで歯内療法処置へと移行した。(2018.6.13)
ここから経過観察を行っている。
術後3ヶ月経過時(2018.9.28)
術後9ヶ月経過時(2019.3.12)
この直後、私は脳出血で倒れたためにこの患者さんの経過を追えずにいたが、この歯科医院で経過を見ることができた。
処置してから2年6ヶ月ぶりの経過観察である。
根尖病変はない。
打診痛もなかった。圧痛もない。咬合痛もない。
ということで治療自体はうまく行ったのだ。
(ちなみにこの患者さんは他院で矯正治療を行っていた。現在保定中である。)
上顎側切歯は外科治療に移行することが極めて多い。
その理由は、多くの歯科医師が側切歯の解剖学的特徴を知らないことに起因している。
大学で習わないのか?としばしば聞かれるが、そのようなことを学習した記憶は一切ない。
下手すると上記の解剖学的特徴は、大学の歯内療法学講座の教員でも知らない知識かもしれない。
日本の歯科大学の教育はこれからどうなっていくのだろうか?
私にはとても好転するとは思えない。
まあそれでも命に関わり合いはないので問題はないのだが。
日本の歯科医療は闇が深すぎる‥