バイト先での治療。

主訴は、

左下の被せている歯の痛み。柔らかいものでも噛むと痛い…

であった。

歯内療法学的検査(2024.5.28)

#21 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#22 Cold+5/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#21が患歯のようだ。

主訴は再現できている。

PA(2024.5.28)

#21の根尖部に、というよりは、#21の根尖部が石灰化している根管に、病気(根尖病変)ができている。

しかもすでに補綴が装着済み。

この後に及んでは、Apicoectomyしか問題を解決できないだろう。

CBCT(2024.5.28)

歯根の頬側寄りにしかGutta Percha Pointが入っていない。

このことから、この歯は2根管であるという事実がわかる。

問題がなければ以下のようにならないといけないが、

そうなっていないということは、頬側根管しか発見できていないのである。

下顎の第1小臼歯は非常に難しい形状をしている根管であり、最も歯内療法では難しいと思われる。

そして根尖部の石灰化。

この状況を回避するには、Apicoectomyしかなさそうだ。

ApexはCEJよりも11mm下方にある。

そこから3mmで切断しようとすると、頬舌的に6mmの切断が必要だ。

リンデマンバーの半分くらいだ。

小臼歯にしてはやや広い。

その理由はこの歯が2根管だからだ。

が、

解剖学的にDangerousなゾーンは遥か彼方にあるので、問題なく処置はできそうである。

ポイントは、

頬舌的幅6mmをどうやって切るか?

だろう。

そのコツは、

Advanced Course 2024

でお話しします。

歯内療法学的診断(2024.5.28)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy

さて、この歯の治療はApicoectomyであるが、

除冠せずにApicoectomyしていいのだろうか?

これに対するヒントはやはり文献が与えてくれる。

Jonasson 2017 Retrograde root canal treatment: a prospective case series  

この文献によれば、

以下のようなことがわかっている。

つまり、逆から外科治療だけしても2年で90%の歯の根尖病変が消えているのである。

このことから、除冠せずに行うApicoectomyには正当性があると思われる。

ということで、同日に治療へ移行した。


⭐︎この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#21 Apicoectomy(2024.5.28)

CEJよりも10mmにApexがあるのでそこを探索した。

Apexから3mmで切断し、メチレンブルーで染色した。

切断直後に見えなかったApexがいきなり見えたのはなぜだろうか?

詳細は、

Advanced Course 2024

でお話しします。

メチレンブルーで染まった部分を逆根管形成し、逆根管充填した。

治療後にPA, CBCTを撮影した。

頬側よりの形成が若干足りない気がするが、

切断はほぼフラットで、

その切断部より上部が1mmは形成できているので、

問題はないだろう。

これも文献通りである。

縫合して終了した。

次回は1年後である。

また経過をご報告したい。