バイト先での治療。
患者さんの主訴は、
右下奥歯の歯茎が腫れた。柔らかいものでも噛むと痛い…他院では、歯牙が割れていると言われた。が、抜歯はしたくない。何とか保存できないだろうか?
である。
他院に通院していたが、誰かに聞いてこのバイト先(学研都市歯科・矯正歯科)に来られたようだ。
歯内療法学的検査(2024.2.16)
#28 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#29 Cold+5/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#28が主訴のようだ。
Sinus tractもある。患者さん曰く、もう半年以上前からそれはそこにあったそうだ。
PA(2024.2.16)
全ての修復物が不適合なのは、保険診療の賜物だ。
保険で治療すると歯がなくなる。そこに未来はないことがわかるだろう。
それでも不誠実な治療に縋る、日本国民。
よく考えた方が良さそうだ。
さておき、患歯はやはり#28だろう。
が、既に大きく拡大済みであることもわかる。
この状況を改善できればいいが、なかなかそれも難しいだろう。
なぜか?それは下顎の小臼歯の複雑な歯根形態が影響しているからだ。
CBCT(2024.2.16)
歯根を取り囲むように病変がある。
いわゆる、
J-shaped lesion
だ。
こういうものがあると、歯根が破折している可能性があると言われる。
これが他院で抜歯だ、と言われた理由であろう。
が、それが事実かどうかは歯牙を抜歯して直視しないとわからない。
やはり2根管性だということがわかる。
舌側のもう1根管が攻略できていないようだ。
では、再根管治療すれば治癒するか?だが、それはわからない。
が、Sinus tractもあることから再根管治療に勝算はほぼないということがわかるだろう。
では、Apicoectomyか?といえば、確かにその方法もあるだろう。
が、この歯は、他院では破折で抜歯と言われている。
白黒つけるには、Apicoectomyよりも全周歯牙の状況が直接見れる、Intentional Replantationの方が良さそうである。
私はその話を患者さんにした。
そして、破折しているのであれば、GBRしてインプラントに備えることになった。
歯内療法学的診断(2024.2.16)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Core build up→Intentional Replantation
ということで治療計画は、まず支台築造してその後にIntentional Replantationを行うことになった。
が、だ。
今、学研都市歯科・矯正歯科の私の治療の予約はなかなか取れない。
このブログを作成している現時点(2024.7.24現在)で予約が取れるのが、最短で、今年の年末である。
今の所、半年待ちだ。
理由は私が脳出血で倒れたためハードな治療がもはやできないことが最大の理由である。
ということで、この方も5ヶ月後に治療となった。
⭐︎この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#28 Intentional Replantation(2024.7.23)
事前に築造されたレジンが脱離してしまった。
この歯科医院での過去の似たような事例(治療)を思い出す。
こうなると、
再度築造して治療自体をやり直すか?
か
そのまま続行するか?
の2択であるが、
冒頭に、
今、学研都市歯科・矯正歯科の私の治療の予約はなかなか取れない。このブログを作成している現時点(2024.7.24現在)で予約が取れるのが、最短で、今年の年末である。今の所、半年待ちだ。
とこの歯科医院の状況が置かれている状況がある以上、このまま歯牙を破折させないように保持して抜歯を行うしかないということがわかる。
この動画を見ていただいてわかるように、
脱臼させないとIntentional Replantationはできない
ということがわかるだろう。
ここから口腔外での作業になる。
画像が見切れているのは、
この某社のマイクロスコープには作業はここですよシールが接眼レンズに貼れないからだ。
これもマイクロを将来購入しようという先生には参考になる話かもしれない。
これでは、
あなたは作業ができても治療内容が患者さんに伝わらない。マスターベーションのようなマイクロスコープを購入して何になるのだろうか?と思わざるを得ない。
ということで、逆根管形成、逆根管充填に移行した。
術後にPAを撮影した。
問題はないだろう。
この後、口腔外で支台築造した。最高の防湿環境だ。
この後、再植したのだが、これだけ脱臼に時間を要したということは再植にも困難性がつきまとうだろう。
Tooth sloothを使用せずに済んだ。
脱臼させて抜歯した歯を再植する場合、ここが最も難しい局面と言えるかもしれない。
この後、滅菌ガーゼを5分間咬合してもらい、最後に動揺や咬合をチェックした。
こんなことをして歯が取れないのか?という人がいる。
アンダーカットを越えて抜歯しているのにどうして自然脱落しようか?
考えればわかることだろう。
事実、上記動画で激しい動揺が出ているだろうか?
全くないことがわかる。
ということで、最後にPAとCBCTを撮影した。
問題はないだろう。
次回は1年後の模様をまたお伝えしたい。