紹介患者さんの治療。

主訴は、

右下奥歯の咬合痛。硬いものを噛むと歯が痛む

である。

歯内療法学的検査(2024.4.2)

#30 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴通りの検査結果だ。

PA(2024.4.2)

#30の近心根に根尖病変がある。

ここが原因だろう。

CBCT(2024.4.2)

MB

ML

D

近心根に病変がある。

遠心根にはない。

ここが痛みの原因だろう。

そして、既に近心根は形成がなされている。

このことから、Apicoectomy一択が治療の選択肢であるとわかる。

が、

右下だ。

私は右利きなので非常に治療がやりづらくなる。

左利きならまだしも、だ。

私は左手も多少は使えるが、細かい歯科治療でそれが有効か?は鍛錬が必要だろう というレベルである。

歯内療法学的診断(2024.4.2)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy

推奨される治療はApicoectomy一択だ。

が、かなり困難が予想だれるだろう。

スタッフ総出で治療が必要である。

治療は別日に行われた。

⭐︎この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#30 Apicoectomy(2024.9.25)

歯茎が薄くFlapを反転しにくい。

そしてこのケースから学べる最大のポイントは

歯頸部に歯槽骨が盛り上がって存在している

ということである。

これは、縫合がやりにくくなる。

縫合時は大きい針よりも小さい針を使用しなければならないし、

パピラベースのパピラを比較的大きく切開しなければならない 

だろう。

そもなければ、縫合がしにくい。

が、歯周病の患者さんではないので最終的には神様が治してくれる。

それほど目くじらを立てることもないだろう。

が、上記動画でのパピラの大きさは大きいとは言えない。

これは縫合時に苦戦することを意味している。

M根のApexの場所であるが、

CEJよりも10mm下部にApexがあり、

Apexに到達するためには皮質骨を1mm穿孔しなければならず、

そこを3mm切断すると、

頬舌的に

6.5mm切断しなければならず、

MBとMLを逆根管形成で繋がなければならない。

私が左利きなら簡単だが、右利きなので困難が予想されるだろう。

ということで

1mm Osteotomyし、

Apexを発見し、3mmで切断した。

さて。

切断面が見えるだろうか?

なぜ見えないのか?あなたは分かるだろうか?

この後、マイクロスコープにちょっとした調整をすると以下のようになった。

以下のような画像になっていないということは、真っ直ぐ切れていないのだろう。

頬側はかなりえぐれていることがわかる。

計測すれば誰でも上手くいく!というわけではない

のがわかる。

ここは鍛錬だろう。

切断の長さを把握してもこの様だ。

45°のタービンを左手に持ち、ガタガタを調整した。

このことからもやはりApicoectomyは45°の5倍速よりも45°のタービンの方が一日の長があるということがわかるだろう。

タービンの方がスピーディーだからだ。

この感覚はUSC入学後に身につけたものである。

メチレンブルーで染め出して逆根管形成した。

この際の臨床的コツは0:30~である。

スタッフが何かをしている。

その前と後でこの動画の何かが変化している。

こういう

気が利くアシスタントがいれば歯内療法の歯科医院は回る

が、

お地蔵さんだけでは回らない。

彼女のヘルプがなければ…Retroprepのチップは折れてしまうだろう。

瑣末なことだが非常に重要であるし、Apicoectomyはアシスト一人ではできないことを如実に示している。

最後に逆根充した。

Lid techniqueなので逆根充自体がかなり容易だ。

PA, CBCTを撮影した。

問題はない。

最後に縫合して終了した。

次回は1年後である。

またその模様をお伝えしたい。