紹介患者さんの治療。
主訴は、
フィステルを治したい。痛みはないが…
である。
歯内療法学的検査(2023.9.25)
#2 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#3にはSinus tractがありここが患歯だ。
⭐︎この後、検査動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
PA, CBCTを撮影した。
PA(2023.9.25)
野太いメタルポストコアはVRFを惹起させる。
が、折れているかどうか?はこれではわからない。
MBは大きくトランスポーテーションしている。
これでは…再根管形成に勝算はないだろう。
CTも撮影した。
CBCT(2023.9.25)
MB
DB
P
MBには大きなトランスポーテーションと根尖病変があり、主訴からApicoectomyが決定的だ。
が、Vertical Root Fractureも疑われるような状況である。
しかし、折れているかどうかはApicoectomyで確認しなければわからないだろうし、Apicoectomyでは頬側しか確認できない。
CBCTからMB根の遠心壁も要精査であろう。
が、DB, Pには病変がない。
ということは、
治療内容としては
まずこの野太いメタルポストコアを除去して、ファイバーポストを用いたレジンコアに変えて、
それからApicoectomyへ移行するという内容である。その際に、VRFがないか?要チェックである。
歯内療法学的診断(2023.9.25)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Core build up→Apicoectomy
ということで、まずは同日にレジンコアに変える治療を行った。
#3 Core build up with Fiber Post(2023.9.25)
頬側と口蓋に分割し、セメントラインを全周出して、VPチップで除去する。
教科書通りの方法である。
その後、築造した。
ということでこの別日に、Apicoectomyへ移行した。
術後にCBCTを撮影して、次回の外科のシミュレーションをしている。
MBは病変ごと切除することにした。
Apexから分岐部透過像までの距離が9mmである。
ここを切断するとすれば、頬舌的に7.3mm切断が必要である。
ゼックリヤバーの半分以上である。
やや難しいと思われる。
別日にApicoectomyへ移行した。
⭐︎この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#3 Apicoectomy(2023.10.17)
Apexが存在すると思しき場所をOsteotomyした。
歯根を切断したが、
なるべく分岐部に近く、病変が消えるであろう位置まで、かつ、Apicomarginal diffectが出ないような位置まで切断した。
その後、切断した歯根を確認したがVRFはなかった。
ということは、純粋に根管治療の不作為が想定できる。
この後、骨窩洞にRacelletを入れて、逆根管形成した。
3mmの深さMB1~MB2形成するのは口で言うよりも難しい。
複数本の超音波チップが必要な時もあるだろう。
問題ないことを確認し、逆根管充填した。
PA, CBCTを撮影した。
切断部位にアゴが残存している。
これは問題になるだろうか?といえば、
MBのCEJからApexまでの長さは11mmである。
この全長およそ11mmの長さのうち、9mmをApicoectomyで切断している。
9/11切断している。
側枝の歯根におけるその分布と割合は、
82%の歯根が切断されているのでアゴが多少残っても問題はないだろう、と私は判断した。
こういうのは、文献がどうとかじゃなく臨床的な
“考える力”
だろう。
縫合して終了した。
次回は1年後である。
またその経過をお伝えしたい。