昨日の続編。
別日に、Apicoectomyが行われた。
今日私が力説したいのは、
外科前の事前準備の徹底の重要性
である。
治療前にCBCTを撮影した。
#8
#9
#8の詳細を計測した。
CEJよりも11mm先にApexがある。
そこを3mm切断するには頬舌的に4mm切断しなくてはならない。
これが、
簡単か?
難しいか?
あなたには判断できるだろうか?
判断できれば、Apicoectomyは容易だろう。
次が#9だ。
Apexから3mmで切ると頬舌的に5mmの切断量になる。
さて、ここで違和感をあなたは覚えただろうか?
どうして#9は5mmで#8は4mmなのだろうか?
答えは正面観にある。
#9は#8よりも2mm既に短い。
ということはだ、
理論的には#9は1mmだけ切断すればいいということになる。
もちろんそうでないかもしれない。
が、これが合理的な考えだろう。
それとも3mm問答無用で切断するか?のどちらかだ。
もちろんそんなことに答えはない。
ここが臨床力だろう。
1mmだけ切断するとすれば以下のような画像になる。
私にはこっちの方がしっくりくる。
こんなことに答えはあるか?といえば、ない。
3mm切っても動揺などでないし問題はない。
あなたの臨床哲学であろう。
そして前歯2本を行うのであれば、どのようなFlapをデザインするか?であるが、
Papilla base incisionでやるのであれば、
#6,7,8,9,10,11までが術野になる。つまり広い術野になる。すると麻酔による痛みのコントロールが難しくなる。何のことか?意味がわからないあなたはApicoectomyというリングに立つことはできないだろう。そして術後には歯肉退縮が起きる。が、プロビジョナルレストレーションの状態なので問題は少ないだろう。
Submarginal flapでやるのであれば、
#7,8,9,10が術野になる。術野が狭くて済む。すると麻酔による痛みのコントロールがつきやすくなる。が、術後に瘢痕治癒が起きてしまう。このことは審美にうるさい患者さんには心の傷になるかもしれない。が、このケースであれば適応症である。理由は頬側に皮質骨が残存しているからだ。そうでなければこのFlapデザインは禁忌症になる。
さあ、あなたはどうするだろうか?
といえば、
それを決めるのは患者さんである。
患者さんは、
術中の痛みのコントロールがつきにくいやり方よりも、コントロールがつきやすい方法を選択された。
ということで、Submarginal FlapでApicoectomyが行われた。
その際、
このような治療計画図を作成し、ユニット横に貼り付けておく必要がある。
それが事前準備というやつだ。
そして、ここからもさらにコツがある。
まずマイクロミラーは何をあなたは選ぶだろうか?
それぞれの切断面は、
両方とも丸である。
そして直径は約4mmだ。
このことから、選ぶべきマイクロミラーは、どれになりますか?
分からない人は…まあもうやめておこう。
ということで、事前に準備してApicoectomyへ移行した。
⭐︎この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#8,9 Apicoectomy(2024.10.23)
バーに長さをマークしてRoot resectionしたものの、完全に切断できていない。
顎が残存している。
しかし…これが現実だ。
切断しなおした。
問題は修正された。
逆根管形成した。
Gutta Perchaも問題なく根管内に圧接されている。
逆根管充填した。
さあ、上記動画と今までの動画の違いにあなたは気づいただろうか?
そう。Lid Techniqueしていないのである。
シーラーだけ入れて余剰をマイクロブラシで洗って除去している。
何だそれは?というあなた。
ここで新・材料情報だ。
非常にApicoectomyに役立つ材料がペントロンジャパン社から新しく販売されたのでそれを使用した。
以下の材料だ。
この材料の特徴は、
硬化が早く、Putty不要で、逆根充用のチップが装着でき逆根充できる
というものである。
詳細はAdvanced Courseでお話しするが、
Apicoectomyの時短には現時点において欠かすことができない材料
であると言える。
なぜか?
今までは、
シーラーを逆根管形成した後の根管に挿入し、BC puttyで圧接していたLid Techniqueであったが、これがあれば、シーラーだけで硬化するのでそれが不要である
のは、昨日、おとといの記事でも言及した通りだ。
そしてこの材料の最大のメリットが、
逆根管充填用のチップが装着できる
という点である。
今までのペントロンのシーラーには装着できなかったが、この新商品は逆根管充填用のチップがつくので根管へ容易に挿入することができる。
これは時間を短縮させることができるので、外科治療においては非常に大きなメリットである。
もはやこの時点で、
BC sealerとBC puttyを海外から個人輸入する理由がなくなった
と言える。
そう、
この材料の開発で、Lid Techniqueがもはや、過去の手法になった
のだ。
ということで、#9へ移行した。
OsteotomyしてApexの発見に務めるが…
わかるだろうか?
長さを確認せずに行うことの危うさが。
Apex付近に浮遊したGutta Perchaを見つけた私は、Apexはこの辺だ!とOsteotomyを繰り返すが見つからない。
そのうち血まみれになってわけがわからなくなり、Racelletの登場だ。
使用した個数をアシスタントと共有しなければならない。
すると…
全く見当違いの場所を削合していることが判明した。
なぜこのようなことになったか?だが、これが原因だ。
はっ?
こんな絵で原因なんてわかるわけないだろ!というあなた。
では、これではどうだろうか?
そう。
このはみ出ているGutta Perchaが私の臨床的判断能力を鈍らせた
のだ。
術前にApexまでの長さを計測し、準備していたにも関わらずである。
クラウンマージン部からApexまでの距離を測定してユニット横に貼り付けておくべきであった。。。
が、さておき、以下の絵で私は#9のApexの場所に気がついたのである。
この絵が全てであった。
メチレンブルーで濃く染まっている部分がApical Foramenである。
これに気づいた私は、1mmの切断を行った。
すると…以下の絵を得たのである。
この部分を逆根管形成した。
Gutta Perchaのモサモサがなかなか除去できずにいる。
これを簡単に除去する方法が実はあるのだが、うちにまだその器具がないので除去に手間取っているのがわかる。
これは手に入り次第、公開したいと思う。
ということで、ここも逆根管充填した。
問題はないと思われる。
さあそしてここでもう一つのポイントに気づいただろうか?
そう。
マイクロミラーにバキュームを置いていないのに曇らないのである。
その理由はなんだろうか?
これは、Advanced Course 2024で受講者の先生に教わった知識だ。
上記動画、画像で、マイクロミラーの近傍にバキュームを置いていないのには理由がある。
その理由・手技・方法を知りたい方は、
Advanced Course 2025
でお待ちしています。
PA, CBCTを撮影した。
#8
#9
問題はないと思われる。
縫合して終了した。
次回は1年後である。
また状況をご報告したい。