紹介患者さんの治療。
主訴は、
左上奥歯で噛めない。柔らかいものでも噛むと痛い…
である。
歯内療法学的検査(2025.5.15)
#12 Cold+1/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#13 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#15 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴は左上臼歯(#13,14,15)だ。
が、特に#14が痛むと強く痛むという。
PA(2025.5.15)
CBCT(2025.5.15)
MB
DB
P
根尖病変があるのはMBのみだ。ここが主訴の病因だろう。
そして、
MB2はMB1の近傍にあることがわかる。
上顎大臼歯の解剖がああだ、こうだ、いう前に、
CBCTを“見える絵”にすればここまで治療の前に予測ができる。
予測ができればそれは、砂漠の中にいても地図と羅針盤を手に出口が探せるだろう。
が、それがなければ見果てぬゲームをすることになる。
それでは…どうしようもない。
が、私が知る限り
CBCTを“見える絵”にして臨床している臨床家をほとんど知らない。
可哀想なことである。
そして、
CBCTは “見える絵” にして初めてその存在意義が成り立つ
と言っていいだろう。
歯内療法学的診断(2025.5.15)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT
⭐︎この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#14 Re-RCT(2025.5.15)
まず除冠し、ラバーダムをかけて処置できるかどうか?を判定した。
この時点での意思決定方法は、
歯質が十二分にあるならラバーダム下でメタルコア除去へ、
なければメタルコアのみラバーダムをかけずにメタルコア除去
だが、どちらだろうか?
これは歯質がある方だろう。
ラバーダム防湿下でメタルコア除去すると意思決定した。
とすれば、どのようにしてそれを除去するか?だが、
頬側と口蓋側と半分に分割してセメントラインを全周出してVPチップを当てる作戦である。
これも意思決定だ。
歯科治療とは意思決定の連続である。
頬側・口蓋側の中間で分割する。
この際に、除去バーだと短いので
マニーのサージカルバー
を途中から使用している。
以下だ。
しかし、これを見ていて気づいたが、この道具は5倍速につけるものなのか。。。
知らなかった。。。
あれは留学前、私も5倍速愛好者であったがアメリカへ留学するとUSCには、
A-decのユニット(アメリカで最もシェアが大きなユニット会社である)
しかなく、そのユニットからはエンジンから水が出ないのでタービン愛好者へと変わっていった。
今回もタービンでそれを使用しているが、使用感に問題はないと思われる。
除去後に遠心部に歯質がないので、
Zooを用いて
隔壁形成(Temporary Core Build up)
した。
この際の臨床的コツは隔壁形成したらレジンをバーで研磨することである。
さもなければ、ラバーダムの隙間を埋めるレジンを使用した際にブルーのレジンが隔壁形成に使用したレジンにくっついてしまう。
これでラバーダムをかけて再治療する準備が整った。
以前の記事で紹介した通りである。
仮の作業長をCBCTでReference PointからApexまでの長さを測定し、そこからクラウンの厚みを引いた長さからさらに-1mmの長さで仮作業長を設定する。
以下の通りである。
P
PのGutta Percha Point除去の長さは、仮のRIL−クラウンの厚み−1mmである。
この場合は、
22.7-1.2-1=20.5mmとなる。
この長さ、何も考えずに根管へ挿入し再形成すればいい。
DB
DBには根尖病変が見えない。
が、根充が粗である。
ここもGutta Percha Point除去の長さは、
19.8-CrownのDB部分の厚み-先端のGutta Percha Pointの厚み(1mm)で
19.9-1.2-1=17.7mmだ。
MB
同じようにこの3根管の中で最も病変の大きなMBは
22.2-1.2-1=20 20mmがGutta Percha Point除去の長さだ。
以上より一般則が導き出せる。
Gutta Percha Point除去の長さ=CBCT上でのReference PointからApexまでの長さ−残存させる根尖部のGutta Percha Pointの長さ(私は1mm程度が楽だと考えるので1mmと今はしている)
という法則である。
が、この法則は
CBCTを見せれる絵にしないと成り立たない。
それには簡単なトレーニングが必要だ。
PからC-solutionを使用し、Do Well Dentalの短針でスカウティングし、Gutta Percha Point除去用のNi-Ti File(これには数種類ある。後ほどのBlogでこれに関しては公開しよう)で再根管形成する。
その後、作業長を測定した。
次がDBだ。
ここは#10→#8→#6と番手を下げたが、穿通しなかった。
最後がMB1だ。
残存Gutta Percha PointにはC-solutionを挿入し軟化させ、ハンドファイルで作業長を測定した。
すると以下になる。
長さを決定したら何号まで拡大するか?
いわゆる、
Master Apical File
を決めなければならない。
その決定方法は臨床家が使用するNi-Ti Rotary Fileのシステムで決定される。
私は、HyFlex EDMを使用するので以下である。
これによれば、Hand Fileで穿通したらHyFlex EDM #10.05を使用してグライドパスしろ、とあるがそれを使用する必要がなくなるHand Fileがある。
それがDentsplyのC+ Fileだ。
その理論は各種セミナーで説明しているのでそちらで聞いてほしい。
この#25.Vの入り方から、MAFは
Pは#60.02とし、
DB,MBは#40.04とした。
すると作業長表は以下になる。
基本3根管の形成が終われば、MB2の探索である。
通法通り探索したが、MB1に合流していた。
ということで、MAFより小さなGutta Percha Pointを選択しSingle PointでBC sealerと共に根管充填した。
PA, CBCTを撮影した。
MB
DB
P
MB2は、
一連のこの画像からやはり合流していたという判断で間違いないようだ。
ということで次回は半年後である。
またその模様をお伝えしたい。