バイト先での経過観察。

患者は30代女性。

1年前に上顎小臼歯の再治療を行なっていたが、途中でリコールできなくなってしまっていた。

ここで初診時からの経過を追ってみよう。


初診時(2020.7.11)

主訴:左上の奥歯が他の歯とは違う違和感がある

歯内療法学的検査をおこなった。

#12 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#13 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#14 Cold+3/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。

1根管で歯質は十二分に残存している。

根尖病変はあるが、根管形成はほとんど行われていない。

テーパーもついていない。

細いGutta Perchaがひょろっと根管充填されている。

作業長の位置だけが理想的?だろう。

ちなみにラバーダムは見たこともしたこともない、という。

これだけの情報を総合すると、

再形成が十分に可能であり上記の問題を修正できる可能性が高い。

つまり、再治療でどうにかなる症例だろう。

根尖病変が治癒する可能性(主訴が改善する可能性)もかなり高い(90%)と考えられる。

患者さんにはそのように術前に伝えた。

また、歯周ポケットも正常であったため、ひとまず破折の心配もなさそうだ。

歯内療法学的診断は以下になる。

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT+Core build up with Fiber Post

患者さんは治療内容に同意したため、再根管治療が行われた。(2020.7.11)

作業長を測定し, HyFlex EDMの#50.03まで形成して#40.04のGutta PerchaでSingle pointで根管充填をしようと思い、試適してPAを撮影した。

最終的にFiber Postを使用してレジンで支台築造処置している。


と、ここで来院が途絶えてしまった。

何でも、治療後に遠方(県外)に引っ越されたそうである。

補綴治療は近隣の歯科医院で行ったそうだ。

ということで、治療をしてから1年経過してのリコールが行われた。

歯内療法学的検査は以下になる。

#12 Cold+2/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#13 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#14 Cold+5/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

歯内療法を行なった歯には白いクラウン(ジルコニア?ベースのセラミック??)が装着されていた。

PAは以下になる。

歯根膜空隙の拡大は見られるが、

根尖病変は消失していた。

術前の予想通りである。

なぜそんな予想ができるか?

それは、私がノストラダムスのような預言者?だからではない。

それは科学の力である。

私よりもずっと偉大な先人がこの世界の道を作ってくれて私はそこを歩いているだけである。

それをみなさんになるべくわかりやすい形でこのブログに紹介している。

しかし、これが本来の歯科治療のあるべき姿なのだ。

このような予想に基づく医療を行う科が他にあるだろうか?

その意味でも歯科医療の価値はあると思う。

しかし、命は助けられない。

そこに理解がある患者さんがもっと増えれば日本も良くなる?のかもしれない。

と考えさせられるリコール患者であった。

次回は1年後にリコールを行う予定である。