先週日曜日、博多駅近郊某所でAdvanced Course 2021の第5回が行われた。
この日のテーマは最初は
Re-Surgeryなど
であったが、
Springerから今年の11月半ばにBiodentineの教科書が出るため、
私は講義の日程を変更させていただき本来は先にやる予定であった内容(Apexogenesis, Apexification、Regeneration)をこの日は講義することとなった。
と言うことで私のUSC時代のCaseに基づいて講義は進めていった。
上記のように歯髄に近接するカリエスがある根未完成歯の歯内療法処置である。
あなたはどのような治療方法を選択するだろうか?
ただし術前情報としては、
自発痛の既往があり
Cold(++)でLingering painがある。
と言うことは今までの常識に照らし合わせると、Symptomatic Irreversible Pulpitisとなる。
となればどのような治療内容が一般的だろうか?
と言えば、根管治療である。
しかし、この症例で適切に根管治療を行うことができるだろうか?
根尖部は開口しており歯根の発育がまだ期待できる段階だ。
そういわゆる歯髄が若いのである。
若い歯髄にはどのような特徴があっただろうか?
生活歯髄療法を行った。
根尖部の閉鎖、歯根の発育が確認できる。
このような症例であれば、今まであなたが歯内療法に持っていた常識を打ち破ることはできるのである。
が、これが年老いた患者だったらどうだろうか?
と言えば、歯髄が劣化してしまっている。
再生能力もない。
それに関して詳しくは、Dental Pulpを参照されたい。
次に私のUSC時代のもう1人の患者の話をした。
制御不能の女児の症例である。
PA1枚を撮るのにアシスタント数人を要し、1時間くらいかかった記憶がある。
私と顔を合わせてはくれない。。。
キモいJapanese野郎!!と思われたに違いない汗
と言うことで宥めて撮影した唯一のPAが以下である。
できない娘を見て母親は失望と同時に全身麻酔での治療を希望したが、小児すぎるので無理と言うことで、静脈内沈静での治療に切り替えられた。
私は今でも覚えている。
女児が手術室に入ってころっと意識が飛んでいったのを。。。
歯内療法、小児歯科医療と鎮静は切っても切り離せない。
密接な関係がある。
米国ではそのための歯科医師向けのセミナーもあるが、日本では一切ない。
まあしかし、それがあったとしても私が静脈内鎮静を患者に施すことはないだろう。
ということでFacultyと話し、One visit Apexificationを行うことになった。
が、根管は血の海でその中にMTAを入れても灰を海の中に詰めてどうにかしようと言うものであった。
途中、小児歯科のレジデントが
「おい、あとどれくらいかかる?」
と聞いてきたので、
「いやあ…それは神様だけが知っているやろ」
とやり返した記憶があり、ダメだこいつはポーズをして小児歯科のレジデントは手術室を出ていった。
Facultyの協力も仰ぎながら私はようやく、MTAで抵抗性を充填時に感じることができてようやく以下のように充填は成功した。
が、PAはこれが奇跡の一枚である。
MTAの上にグラスアイオノマーを充填し、レジンで充填しOne-visit Apexificationは終了した。
さて、この治療にエビデンスがあるか?であるが、以下のような文献がヒットする。
Simon 2007 The use of mineral trioxide aggregate in one-visit apexification treatment: a prospective study
57本の根未完成歯を1回法でApexificationしている。その予後を半年後、1年後、それからは1年おきに追っている。
結果は以下になる。
もう一つは以下の研究になる。
Witherspoon 2008 Retrospective Analysis of Open Apex Teeth Obturated with MTA
Apexification1回法と2回法で予後に臨床的な差が出るか?を考察している。
結果は以下になる。
1回法の方がHealed(根尖病変消失)の割合が高い。
このことは1回法も有効性はあることを示している。
と言う事実をFacultyに説明し、私は治療の許可をもらうのであるが、何とこれが当時のUSCではCaseとして認められなかった。(今はどうか?わからないが。。。)
なぜか?
VPTだからである。
RCT,Re-RCT, Apicoectomy,Intentional ReplantationはCaseとして認めてくれるが当時のUSCは小児のRCT以外のケースはケースとして扱ってくれなかった。。。
骨折り損の…というやつだ。
しかもこの後、この小児の状況は良くなった。
が、
母親が歯の色の変色が気に入らないと私を詰問してきたので私は、
「気持ちはわかるがそれをやるためにまた鎮静するのか?私はもっと大きくなってからやればいいと思う」と対応した。
ということで
ApexogenesisもApexificationも昔からの治療ではあるが歯髄を除去する、根管壁は厚くならないので破折の可能性が残ると言う欠点が拭いされない。
そこをカバーする治療方法として新たに出てきたのがRegenerative Therapyである。
この治療はもともとは日本人が第1号だがアメリカ人にお株を取られてしまい、日本人の治療はなかったこと?にほぼなっている。
現在のRegenerationの術式や現在地点について解説した。
どこまで貼薬するか?がRegendoの成否に影響を与えている、とされている。
根未完成歯の幅が30%増えるには18ヶ月、長さが増すには36ヶ月かかることがわかる。
かなり長い時間だ。
この間にそもそも失敗したらどうするのだろうか?と言うことと、失敗か?成功か?をどう判断すべきだろうか。
それがあなたは分かっただろうか?
MTA-Apexificationは長さも幅も増えないが、Regenerationは長さも幅も増えることがわかっている。
が、幅は18ヶ月で0.3mm、長さは18ヶ月で1.25mm程度である。
つまり、
成功とは
幅や長さが少しだけ増える
と言うことになるに過ぎない。
長さは伸びてもMaxが元の長さの40%増でMinが15%増程度である。
それほど長い長さ伸びるだろうか?
と言えばあまり期待できないと言うことがわかるだろう。
と言うことでCaseを最後に紹介した。
以上の文献通りの結果が得られただろうか?
1年後である。
比較するとどうだろうか?
私には長さはほとんど変化していないようにしか見えない。
幅はどうだろうか?といえば幅は増大しているだろうが筋肉で(=象牙質で)分厚くなった=筋肉ムキムキになっている!という感じはない。
以上から、
Regenerationは確かに再生的療法であるが、実際は期待するほど再生が起きないということがわかる。
また、この再生療法という名前にも注意が必要である。
本当に再生だろうか?
私には、再生的療法にしか見えない。
この治療がこれからもAAEの研究の第一のものになるかどうかはもう答えが出ている?と言っても過言ではないだろう。
しかし、いい治療なのでこれからもっといい術式や予後が出れば世の中も変わるかもしれない。
と言うことで長い1日が終了した。
次回は、11/14(日)に小児の歯内療法について講義する予定である。
1日お疲れ様でした。