50代女性。

1年前にApicoectomyを行った患者である。⇨患者にもわかるような治療画像がなければ、マイクロスコープを持っていても無意味…〜#9 Apicoectomyと側枝の根管形成+逆根管充填 with Biodentine

そのときの主訴は

前歯の付け根を押さえると痛い

であった。

患者曰くかなり前の根管治療でラバーダムもしていないとのことであった。

歯内療法学的検査を行った。

#8 Cold+3/1, Perc.(-), Palp(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), Bite(-) Perio Pocket(WNL), Mobility(WNL)

#10 Cold+4/18, Perc.(-), Palp(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。

著しく不適合なレジン充填が遠心に認められる。

これで歯磨きをしろ!と患者に言っても無理な話だ。

どうやって綺麗にすればいいのだろうか?

方法があれば教えてほしい。

歯内療法学的診断は以下のようになる。

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

根尖部は石灰化が進んでいると思われた。

ということは、この状況を打開するにはApicoectomyしかない。

ということで日にちを改めて、Apicoectomyが行われた。

患者さんは治療に対する恐怖が怖く、外科治療の日は、やっぱり外科治療はしたくない、昨日は寝れなかった…と話していたが、外科治療中は爆睡していた。

そりゃそうだ。

外科治療中に痛いということは稀であり、痛みが出そうな部位は予想ができるからだ。

Nerves sprout and grow into areas of inflammation, increasing the size of their receptive field. Inflammation causes increased neuropeptides (SP, CGRP).

痛みが出やすいのはこのように根尖病変があるところである。

(約8倍痛みを伝える神経が増える)

このように根尖病変部位を触るときは、触る前に

”痛いかもしれない部分を触るので、痛かったらすぐに手をあげて教えてください”

と声をかけている。

この外科治療時は、Biodentineを用いてApicoectomyしていた。

が、頬側に側枝がありそこも充填せねばならなくなったが、困ったことにレントゲンに写りにくい部位である。

この歯科医院のマイクロスコープはカメラがないものであったため、絵に書いて説明すると下図のようになる。

そうしてApicoectomyは終了した。

PAは以下になる。

それから、

半年が経過した。(2021.6.5)

初診時にあった根尖部の圧痛は消失していた。

PAを見る限り、根尖部の透過像はかなり縮小しているように見える。

レジン充填もきちんとやり直していただいた。

そして、この経過観察の日、いよいよ1年経過のPAを撮影することができたのである。

1yr Recall(2021.12.11)

根尖部の透過像は消失している。

主訴だった圧痛は消失している。

痛みも何もないそうだ。

外科治療して欠損した部位も歯槽骨の添加が見られた。

このように、Biodentineというのは改めて実に不思議な材料だ。

これはあるサイトからの引用であるが、再根管治療をしてBiodentineで充填したら根管ごと石灰化したように見えている。

しかし間違ってはいけないのは、この薬剤の力で治癒しているわけではないということだ。

治療前の根管充填がほとんどなされていないので形成し再根充したら根尖病変が消失したという事実である。

再根管形成の余地があれば(=根尖部を大きく拡大できて、作業長の調整ができて、テーパーが付けれれば)勝負に勝つことができるのである。

私も破折した患者さんのリペアをこれで行ったが、概ね順調である。

この材料には、我々に予想ができない何かがあるのかもしれない。

それを私は研究しに来年は、岩手医科大学まで赴く予定だ。

ということで1年リコールは問題なく終了した。

次回はまた1年後である。

その間に問題が出れば連絡してもらうように患者さんには伝えている。

なるべくこの状態が長く続いてほしいと私は祈っている。