以前の歯科医院の患者さんのリコール。

前回は、2020.12.17に投稿している。

約1.9年ぶりのリコール〜#12,13 Apicoectomy後、3年経過患者

某大学病院から

嚢胞がある

と指摘された患者である。

ちなみに、

嚢胞か?膿瘍か?は術前のPAで知ることはできない。

そのような類の記事があれば、疑うことを推奨する。

理由は以下である。

Ricucci 2006 A study of periapical lesions correlating the presence of a radiopaque lamina with histological findings

レントゲンで嚢胞に見えるような状態のもの10本を生検に出すと、7/10が膿瘍であった。

に対して、レントゲンで膿瘍にみえるもの47本を生検に出すと、10/47も曩胞が存在した。

レントゲンで嚢胞か?膿瘍か?判断ができないとされる有名な論文である。

この手の論文を読んだことがない人にはびっくり話だろう。

ということで、デンタルやCBCTで嚢胞かどうかはわからないのである。

が、上記の治療計画書には

嚢胞摘出術

と堂々と書いてある。

これ以上私が何かを言わなくても言いたいことはわかるであろう。

そう。そういうことだ。

学習が重要であるというのを痛感させられる話である。

また、皮下出血が起きる可能性は外科治療だからあり得る。これは間違いのない指摘であろう。

が、オペしてメタルが見えるようになるか?といえばこれは何ともいえない。

また、術後感染には抗生物質で対応するとあるがこれも無意味だ。

興味がある方は、AAEの抗生物質に関わるペーパーを読むことをお勧めする。

Antibiotic Prophylaxis 2017 Update

初診時の検査は以下のようになった。

#11 Cold+3/4, Perc.(-), Bite(-), Palp.(-), Bite(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#12 Perc.(-), Bite(-), Palp.(+), Bite(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#13 Perc.(-), Bite(-), Palp.(+), Bite(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#14 Cold+5/5, Perc.(-), Bite(-), Palp.(-), Bite(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAを撮影した。

CBCTも撮影していただいた。(2018.1.9)

#12

#13

歯内療法学的診断は以下になる。

#12 Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

#13 Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: #12,13 Apicoectomy


#12,13は連結冠で歯質もあまりなかったが、患者さんが保存を強く希望したためApicoectomyを行うことになった。

2018.1.31 Apico直後

Apicoectomy 6M後(2018.8.2)

脳出血で倒れる前の最後のリコールを行った。

Apicoectomyを行って、1年2ヶ月が経過している。(2019.3.8)

この後、私は脳出血で倒れてこの患者の予後を追えないでいたが患者さんに連絡するとRecallに応じてくれた。

外科治療(Apicoectomy)から気づけば4年が経過していた。

CBCTも一緒に撮影していただいた。(2022.1.22)

いかなる臨床症状もない。

PA(2022.1.22)

CBCT(2022.1.22)

#13(2022.1.22)

術前と比べるとその治り具合がわかるだろう。

この治療がようやく、ひと段落ついたといえる。

患者さんは今は働きに出ているので今後はRecallするのが難しいかもしれない。

4年リコールが終了した。

ご自身の歯牙を保存できて今は喜んでおられる。

しかし。

私はこれが永遠に続くとは思っていない。

特に歯質の過小な#13は破折などのリスクもあり得るだろう。

が、

その時はインプラントが可能な状態にしたつもりだ。

あくまでも歯内療法は中継ぎであり、先発完投ではない。

それを肝に銘じて臨床に当たらなければならない。

以下、患者さんの感想。

先生、治療していただいてありがとうございました。この歯がなるべく長く持つように管理をきちんと行っていきます。でも本当に抜かなくてよかったです…あの時の口腔外科医にこの状態を見せれないのが心残りですが(笑)きちんと管理して頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。

ということで、また来年リコールの模様はご報告しよう。