歯科医院にいて自宅に帰ろうとしたら、大きな警告音が携帯から聞こえてきた。
なんと、緊急地震速報である。
警告音のすぐ後に大きく揺れた。
ニュースを見ると、福岡市博多区は震度3だという。
地震に慣れない私としては久々焦った。
多くの人が私と同じかこれで起こされた人が多かったのではないだろうか?
大きな被害がないことを祈っています。
さて。
おととい
”寝ている時に歯が痛くなる”
という患者さんから電話連絡がありこの日は応急処置を覚悟して歯科医院に向かった。
私がかつての歯科医院(福岡市東区のまつうら精密歯科医院、福岡市東区のまつうら歯科医院、福岡市博多区博多駅東のまつうら歯科医院 歯内療法専門室)で治療した旧知の患者さんである。
患者さんに話を聞くと、
主訴:夜中に歯が痛くて(特に右下奥歯, #30,31あたり)目が覚める。(1週間前くらいから。ピークは3日前。今現在は少し痛みは落ち着いたがなんとなく痛むという)
であった。
以上の話を聞くと、
急性の歯髄炎
急性の歯髄壊死
などが考えられた。
しかし、口腔内を観察したがそうした状況を引き起こすような大きなカリエスもなければPerを引き起こすような問題がある歯も見当たらない。
関連痛も疑い上顎の歯を観察したがここにも大きなカリエスはなかった。
歯内療法学的検査を行った。
#29 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(✴︎), Mobility(WNL)
#30 Cold+3/6, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(✴︎), Mobility(WNL)
#31 Cold+6/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(✴︎), Mobility(WNL)
色々検査を行い、最後に歯周ポケットを測定しようとした時である。
対象歯の周囲には歯垢や歯石が沈着していた。(✴︎)
特に、舌側の歯周ポケットを測ろうとすると…大きな問題を発見した。
古い歯石が沈着している。
その周囲にレッドバンドを呈した歯肉が散見される。
不良補綴物が装着されていないのにもかかわらず歯肉にレッドバンドが形成されているのを久々観察した気がする。
これがあると、歯石や歯垢をポケットを測定する際にポケットの中に推し進めてしまい急発を招いてしまうのでポケット測定ができない。
歯磨き指導やスケーリングは必須であろう。
この患者さんの痛みを起こした原因も少なくともこの歯周環境の状態が寄与した可能性が高いと考える。
上下のPAは以下になる。
#3のMBには根尖病変があるが、大きなカリエスはない。
これは近心に不適合修復物が入っていることが大きく寄与していると思われる。
(近心は不適合修復になって2次カリエスになっている)
が、関連痛も起きる大きな問題はなかった。
#30,31 Pulp Dx: Normal Pulp, Periapical Dx: Normal Apical Tissues
歯内療法をする必要性はないと考える。
それよりも歯周治療や修復治療が必要である。
念の為、かつて歯内療法を行った部分(#19,#15,#13)も観察してみた。
#19(左下第1大臼歯)
#19 RCT前(2017.4.20)
#19 RCT後(2017.6.6)
抜髄であるので、どアンダーで終わった。
それで問題が出ることがないからだ。
#19 RCT5年後(2022.1.21)
この下手?根管治療をおこなっているが、根尖病変はできていない。
が、遠心にカリエスができてしまっている。
このままだと歯内療法の問題が早晩起きるだろう。
そこは改善しなければならない。
#13(左上第2小臼歯)、#15(左上第2大臼歯)
#15 治療前(2017.4.20)
#15 RCT後(2017.9.1)
頬側に転移している歯の根管治療で口がほとんど開かないという最悪のコンディションであった。
しかも嘔吐反射(Gag Reflex)があるため、奥にフィルムが入れられない。
PAが非常に取りにくいのである。
このことからも、上顎の方が下顎よりも治療が難しいと言える。
以上のことからも、この歯の治療は極めて難しいと言える。
そのためか?MB根にファイルが破折してしまった。
が、根尖病変はないので特別それは心配ない。
しかしそれを治療の前に説明しておかないと、ペテン師になる。
#15 RCT後5年経過時(2022.1.21)
根尖病変の発生などはみられない。
なぜか?コーンカットしているものや根尖部が映っていないデンタルしかないが、
ラバーダムして根管治療していたからである。(2017.7.28)
このことからも、ラバーダムが歯内療法で必須であるということがわかるだろう。
このPAから左上の第2小臼歯の現状も確認できた。
治療前にあった根尖病変はかなり小さくなっている。
アンダー根充であったが問題が出ていない。(痛みが出ていないしSinus tractもない)
なぜか?
治療の際、ラバーダムをしていたからである。(2017.6.26)
細菌を根管の中に入れるのを防いだからだ。
このことからも、ラバーダムが歯内療法で必須であるということがわかるだろう。
引っかかるのは、
#13も#15もTekも何も装着されていないという事実である。
しかしもっと驚くことはそれによって根尖病変ができていない。
このことは歯内療法には修復治療が大事であるという事実に影を落とすものではないだろうか?
VitroとVivoはやはり異なるようだ。
以上から、近隣の信頼できる歯科医院を紹介して歯周治療を行なってもらうことを伝えた。
次回は、1年後のRecallもしくは紹介先が治療が必要だと考える部分の処置を行う予定である。(特に#3のMBや#12,#13など)
しかし。
歯周治療も修復治療も患者さんの協力(歯磨きの状態)が必要なので大変だ。
自分が頑張っても患者が頑張らなければ治療計画自体が崩壊する。
私は…そのような治療に対して情熱を注ぐことが昔からできない。
そういう仕事をしている先生は大変だと思う。
頑張れ!と患者のやる気を引き出さなければならないが、患者さんにやる気がなければ治療が続かないからだ。
我々は本当にとても難しい仕事をしていると感じる。
ということで、この日のRecallは終了した。
しかし考えてみれば、
私が5年前に歯内療法を行った部分には問題が起きていない
のである。
なぜか?といえば、
どれだけ患者さんのモチベーションや歯磨きのテクニックが低く口腔内の感染状況がひどくても、根管治療時にそれを防御するシステムを構築していれば(ラバーダムを使用する、新品のファイルを使用する、根管充填時に注意すべきことを守る)問題が起きない
からである。
この患者のモチベーションを引き上げられるか?また1年後を楽しみに待ちたいと思う。