Regenerationから4年が経過した。
その模様をご報告する。
初診は2018.7.2。
他院で根管治療を勧められたが、再生療法ができるはずだ!とネットで調べて博多駅東の当時のまつうら歯科医院に来院された。
それまでの流れは以下のようになる。
2018.4に外傷にて#8嵌入したものの、経過観察をしていると挺出傾向を示していたが歯冠に変色を認めたため2018.6にPAを撮影(外傷後1ヶ月)。
するとPAで外部吸収が見られたという。
CBCTも撮影した。
その後、かかりつけ医は歯内療法処置を開始。ドライ綿栓でのみ経過を診ていたという。
その処置後、母親から
”感染根管治療の必要性があったのか? 他の治療方法はないのか?”と問い合わせがあり、ここで当時の博多駅東のまつうら歯科医院の受診を希望されたため紹介となった。
当時の資料(紙媒体)がカルテに残っていた。
外傷の既往と治療歴
まずこの患者さんは、2018.5.7に外傷が発生している。
#8が嵌入してしまっている。Intrusionである。
外部の歯科医院で外傷の対応が行われた。
2018.5.7(外傷の処置)
嵌入したため、固定を行なっている。
約2週間後に固定は除去された。(2018.5.23)
この後、換入した歯は自然挺出傾向を示していたという。
歯冠には変色も疑われたが、1ヶ月経過観察をしていてPAを撮影すると外部吸収が進んでいたという。
そしてCBCTも撮影となった。
担当歯科医師は母親に根管治療の必要性があると告げ、治療が開始された。
#8 RCT開始(2018.6.6)
そこから2週間が経過した。
#8 RCT 2wk 経過時(2018.6.22)
ここで母親から担当歯科医師に質問が飛ぶ。
①根管治療の必要性が本当にあったのか?
②他の方法はないのか?
③再生療法はできないのか?
この歯科医院では再生療法をしていないので私に紹介となった。
これが2018.6.27のことである。
当歯科医院で歯内療法学的検査が行われた。
2018.7.2(初診時)
#7 Cold+7/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#8 Cold+5/1, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#9 Cold+2/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
PAを撮影した。
CBCTの情報は以下になる。
2018.7.2(初診時CBCT)
根尖部が閉鎖する前に歯髄が失活してしまっている。
これは問題である。
根が閉鎖していないということは根管治療で根管充填する材料が全て抜けてしまう。
つまり治療がうまくいかない。
また歯根がこれだけ開いているということは、従来の道具では清掃ができないだろう。
ということでこの状況に陥ると治療方法は従来は、Apexification(アペキシフィケーション)一択であった。
が、時代は進化し現在は別の治療方法も提唱されている。
それが、Regenerationだ。
元々この治療方法は日本人が偶然?おこしてしまった治療だが、のちにアメリカ人にそれを奪われてしまった。
少し物悲しい治療方法である。
話の流れとしては、
根管内部を洗浄し、一度根管内部を水酸化カルシウムで貼薬して仮封する。
その後、根管洗浄し根管内に血液を溜めて、その上にMTAセメント置き、窩洞を充填すると根尖部が閉鎖するという魔法の?治療だ。
昔は他院からの紹介で、年に何ケースか行われていた。
治療の特徴としては以下になる。当歯科医院の同意書をもとにして説明しよう。
AAEはこの治療方法を公式に認めていない。従ってデータベースでデータを募集している。
治療回数は2回必要だ。
1回目が根管内部の洗浄。
2回目が出血させて根管内部に幹細胞、成長因子、血餅を誘導し歯根の成長を促すという治療である。
1回目の洗浄で細菌の減少ができなければ、再度根管洗浄するか根管治療に切り替える必要がある。それは患者さんというよりは母親と協議して決めることになる。
経過観察には3年が必要でその期間で治療がうまくいったか?そうでないか?判断することになる。
治療のゴールは3つである。
①Primary Goal・・・症状の緩和、根尖病変の消失
②Secondary Goal・・・歯根の成長(歯根の長さ・幅の増幅)
③Tertiary Goal・・・歯髄反応の獲得(Cold, EPTに対する陽性反応の獲得)
治療の欠点は歯根の成長が見られた末に歯根が破折する可能性もあるという事実である。
100%予後が確定した治療方法はないからだ。
以上の説明に患者さんの母親が同意したため、治療開始となった。
Regenrationには以下のAAEの治療のガイドラインが役立つ?であろう。
Clinical Considerations for Regenerative Procedures
Regenration 1回目(2018.7.13)
1回目の治療は根管内部の洗浄である。
20mlのヒポクロとEDTAを使用して根管内部を洗浄する。
ヒポクロには抗菌効果を、EDTAには象牙質からの成長因子の放出を期待している。
その後、根管内をペーパーポイントで乾燥し、水酸化カルシウムで貼薬する。
仮封して1~4週間後にRecallする。
PAは以下になった。
Regeneration2回目
2回目来院時に臨床症状は消失していた。
ガイドラインによれば、治療の流れは以下になる。
3%スキャンドネストで麻酔をしろ、とある。
が、現実的には不可能だろう。
私も経験があるがとにかくすぐきれる。
そして麻酔を追加する。
そしてまたきれる。
この繰り返しである。
で、何本まで打てるか?と言えばその本数は限られている。
非常に重要な話である。
JOEから目を移し、IEJによればスキャンドネストは理想的だが麻酔のコントロールが難しく現実的でないという記述があった。
私は臨床的にはキシロカインで治療している。
それでも血液は誘導できるからだ。
ただ、鈍くやっていると出血不可能になるので要注意である。
ということで2回目の治療は以下のように終了した。
そこから6ヶ月が経過した。
2019.1.23(6M recall)
この後も経過を見るはずであったが、倒れたため見れなくなってしまった。
が、経過によぶと現在の状況を見せていただけた。
以下のようになる。
治療から4年目を迎えようとしていた。
4yr recall(2022.3.25)
術前術後を比較した。
根尖病変が消失し、歯根の幅も増えている。
問題があれば根管治療またはApicoectomyする予定である。
この子供も当時は7歳であったのに今は11歳だ。
このように時は動いていく。
おっさん一人だけが世の中から取り残された?感じになる。。。
寂しさと嬉しさが同居する経過観察となった。
次回は1年後である。
CBCTの撮影も予定している。
それまでお待ちください。