紹介患者さんの治療。

主訴は、

左下奥歯が死ぬほど痛くて子供が夜も寝れない…

である。

この患者さんの主訴というよりは、この患者さんの親御さんの主訴と言ってもいいだろう。

歯が痛くてとにかく子供を寝かしつけることもできない…という困り事であった。

歯内療法学的検査(2025.6.2)

#19 Cold+1/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#20 Cold++1/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#21 Cold+1/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴は強い冷水痛とそれに対する持続痛がある#20だろう。

OPG(2025.6.2)

CBCT(2025.6.2)

中心結節が破折して歯内療法が必要になっている。

このことから何がわかるか?だが、

やはり

小児期は歯科医院に定期的に予防・管理に通院した方がいい

という事実だろう。

そこで清掃もしてくれるし、フッ素塗布もしてくれるし、必要に応じて(というよりもほぼ強制的に)シーラーントもしてくれる。

そして虫歯があればそれに対する処置もしてくれる。

CR充填か、サホライド塗布かだ。

どちらを取るかは、担当医と相談すればいい話だ。

ちなみにうちの息子(4人いて、4人とも男児)は乳歯に虫歯ができた場合はサホライド塗布した。

理由は男だし、乳歯は抜けるからだ。

その判断は家庭の価値観?で決まるだろう。

また、定期管理すれば咬合等の問題も指摘してくれるし(矯正治療である)、その管理もしてくれるだろう。

このことを考えると、

もはや歯科医院に対する定期的な受診は小児歯科でのみ必要な案件

だと言ってもいい。

そこは、歯科治療ではなく、予防・管理が行われる場であるからだ。

それはどんな子供でも必要だろう。

歯内療法学的診断(2025.6.2)

Pulp Dx: Pulp Necrosis

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Regenerative therapy

治療はRegenerative therapyだが、当日それを行うのが困難な状況であった。

そうした時はどうすればいいだろうか?

以下である。

#20 T-Fix(2025.6.2)

Super Bond固定後、痛みは消失した。

この後、時間を空けて歯科治療へ移行している。

1ヶ月後に再来院してもらったがこの際には以下の文献の結果を参考に治療を進めて終了している。

ACCL Cerqueira-Neto 2021 Clinical and Radiographic Outcomes of Regenerative Endodontic Procedures in Traumatized Immature Permanent Teeth: Interappointment Dressing or Single-Visit?

1回法

この手の治療では禁忌であるとUSC時代に習ったCHXで洗浄している。理由は歯小嚢からの歯髄再生細胞を死滅させるからだ。

Advanced Course 2021 第5回

が、それを使用している。

もうめちゃくちゃだ。

そして貼薬せずに1回で治療を終了させている。

ちなみに2回法の場合は以下である。

2回法

2回法はこの後、21日後に患者を呼び

10ml 生食,

3ml 17% EDTA,

5ml生食で洗浄したのちに,

血餅を誘導させ, 歯頸部にバリア(水酸化カルシウム, 2% CHX gel, ユージノールを練ったもの)を置き, Coltsolで仮封し, レジンでアクセス窩洞を埋めている。

その一つ一つが臨床的にどのような意味を持つのか?私には不明である。

もはや、この手の治療にその臨床的意味合いを求めるのは無意味ではないか?と私は思う。

そしてもちろん麻酔はスキャンドネストでなく、キシロカインだ。

In the second treatment visit, 21 days later, in the absence of clinical symptoms,

the tooth was anesthetized with 2% lidocaine with a vasoconstrictor as previously mentioned.

と原文にはある。

また予後も、

Primary outcome

: analysis of clinical and radiographic outcomes and tooth survival.
Failures consisted of the persistence or increase in the size of the periapical radiolucency or the persistence of clinical signs and symptoms, and/or additional root canal therapy after REP, and/or tooth extraction, and/or increased external inflammatory root resorption, and/or replacement resorption.

=臨床症状がなく、根尖部の病変が術前と比べて縮小傾向にあり、根管治療(Apexificationのことである)や抜歯、侵襲性外部吸収や置換性骨吸収がおきていないこと

Secondary outcome

: root development evaluation. Radiographic modifications in root length, root width, and apical diameter were examined. Only teeth with an increase of 20% or more in the radiographic parameters were included as a favorable secondary outcome.

=歯根長が術前と比較して20%以上伸びている場合, 歯頸部の歯根の幅の増大, 根尖部の閉鎖が術前と比較して見られる場合

Tertiary outcome

: analysis of the return of pulp sensibility. For this, responses to pulp cold sensibility (Endo Frost, Roeko, Wilcos, Petropolis, RJ, Brazil) and electric pulp (Odous de Deus, Belo Horizonte, MG, Brazil) tests were assessed.

=Cold Test, EPTに反応する場合

その結果は以下である。

1回法でRegenerationすると臨床症状がなく、根尖部の病変が術前と比べて縮小傾向にあり、根管治療(Apexificationのことである)や抜歯、侵襲性外部吸収や置換性骨吸収がおきていない歯が9本中9本であったという結果が出ている。

また、

1回法でRegenerationすると歯根長が術前と比較して20%以上伸びており, 歯頸部の歯根の幅の増大, 根尖部の閉鎖が術前と比較して見られる歯が9本中6本あったという。

また、

1回法でRegenerationするとCold Test, EPTに反応する歯は9本中3本あったという。

それに対して、

2回法でそれを行なっても、

臨床症状がなく、根尖部の病変が術前と比べて縮小傾向にあり、根管治療(Apexificationのことである)や抜歯、侵襲性外部吸収や置換性骨吸収がおきていない歯が11本中9本であり,

歯根長が術前と比較して20%以上伸びており, 歯頸部の歯根の幅の増大, 根尖部の閉鎖が術前と比較して見られる歯が11本中5本であり,

Cold Test, EPTに反応する歯は11本中1本であり、

それらをそれぞれ統計にかけても有意差が見られなかったという。

このことから、

1回法で行なっても、2回法で行なっても、Regenerative therapyで術前の臨床症状がなく、根尖部の病変が術前と比べて縮小傾向にあり、根管治療(Apexificationのことである)や抜歯、侵襲性外部吸収や置換性骨吸収がおきていない可能性,

歯根長が術前と比較して20%以上伸びており, 歯頸部の歯根の幅の増大, 根尖部の閉鎖が術前と比較して見られる可能性,

Cold Test, EPTに反応する歯の可能性

はそれぞれ優位差がないということがわかった。

ということは、

1回法でも2回法でもいいという話である。

ということで

1回法でも2回法でも結果に差がない

ので私は

Regenerationは1回法、麻酔はキシロカインで行っている。

以上を患者さんに伝える必要があるか?と言えば、それはないだろう。

患者さんはあなたを信じて来院しているのだから。

#20 Regenerative therapy(2025.7.1)

チャンバーオープンするとそこは暗赤色の出血だ。

炎症が強いことを示唆している。

初診時(2025.6.2)には、

であったが、

1ヶ月後には

である。

 

フェネストレーション状に歯槽骨が吸収している。

ヒポクロアクシデントが起きかねない状況であるので、

私はメイン洗浄液を2% CHXにし、

サブを17% EDTAとした。

この選択の意味が、

???なあなたはものを知らないと言っていいだろう。

Basic Course 2025

でお待ちしています。

その後、血液を根尖部から誘導し、

Colaplugを置き、Puttyで充填して終了した。

術後のPA, CBCTは以下である。

次回は1年後である。

またその模様をお伝えしたい。

ということで当歯科医院は明日から8/17まで夏季休暇である。

その間はBlogも休止します。

よろしくお願いいたします。