他院から紹介の患者さん。

主訴は以下になる。

”左上の犬歯がずっと気になっている。違和感があり時々ズキンとする。(Pain Scale 1/10)インプラントが増えたので自分の歯をきちんと残したい”

歯内療法学的検査が行われた。

#10 Cold+3/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#11 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

BTは+であったが、これは主訴の痛みを再現できてはいない。

患者さん曰く、

”これ(BT+)” ではない

のだ。

治療によって患者が期待する結果が出ない可能性が高いだろう。

また、PAは以下になる。

CBCT画像もいただいた。

#12,14にはインプラントが埋入されている。

#11の根尖部付近には根尖病変があるが、何度も言うように歯内療法学的検査でこの患者さんの違和感は再現できなかった。

ということで、歯内療法学的診断は以下になる。

#11 Pulp Dx: Previously Treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

推奨される治療は、

①前医が根尖部を十二分に拡大していない(拡大形成不足)

②前医はもちろんラバーダムを使用していない

③作業長をApical Foramenに近づけた根管形成が可能

④テーパー形成を行える余地がある

ことから

再根管治療を提案した。

患者さんは治療内容に同意し、再根管治療が行われた。

今回の再治療で最も大きなテーマは穿通できるか?できないか?である。

穿通できなければ、治療の成功率は60%であるが穿通できれば90%である。

それが治療前に予言できればいいが、預言者ではないので治療前にそれを患者さんに告げることはできない。

と言うことで責任重大な?治療である。

ポストコアをまず除去した。

これにはペントロンジャパンのVPチップが有効であるとこのブログで何度か述べた通りである。除去の模様は以下になる。

メタルポストコアの除去を有効に行うには除去前の準備が必要である。

そのコツは, Pathways of the Pulp 11th editionにも記載の通りである。

  1. The bulk of the core material around the post and within the chamber should be removed.

  2. Once the post is well isolated and freed from all restorative materials, the interface between the post and the tooth (the cement line) should be disrupted by ultrasonic or small round bar.

  3. When the post becomes moving, ultrasonic tip should be touched. Remember, don’t need too much force, as this will dampen the ultrasonic wave and actually reduce the effectiveness of this technique.

これは口で説明してもなかなかわかっていただけない。

以下のような動画が有効かもしれないのでアップしてみた。

下地が完成すればVPチップを当てるだけである。

非常に簡単に・短時間で除去できる。

前歯部用のクランプを使用して再根管治療が行われた。

手用ファイル(C+ File #10,#8,#6やC File #10,#8,#6)では穿通できなかったので機械的な穿通を試みた。

こうした際、CBCTは有効である。

まず, RaCe EVO #10.04を使用して機械的に穿通させた。

レッジができていたためそれを修正した。

作業長を計測した。

 

修正後は、Gutta Percha Pointも調整が必要である。

Cold sprayを当ててGutta Percha Pointを一時的に硬化させてポイント試適を試みる。

作業長までいかなければ…その際はシーラーで根管充填することになる。

その模様は以下の動画の通りになる。

ポイント試適しPAを撮影した。

問題ないと判断し、BC sealerを用いてSingle Pointで根管充填した。

Apex付近でのシーラーパフが緊密な根管充填をおこなったことを示している。

と言うことで最後に支台築造を行いこの日の治療は終了した。

次回は半年後である。

そこでこの患者さんが感じていた違和感が改善されればいいが…

半年後をお待ちいただきたい。