紹介の患者さんの治療。

主訴は以下になる。

普段、前歯に違和感がある。疲れたり体調が悪くなるとそこが痛む。

元々この2本は捻転していたと言う。

それを近所の歯科医師が削って被せれば綺麗になるからということで、歯科治療は進んでいった。

20年以上も前の出来事で、当時の記憶もあまりないと言う。

その後、歯牙が変色してきたため根管治療はせずにCR充填だけをやりかえたと言う。

その後、矯正を地元の歯科医院で行い今に至る。

話を聞いても前後関係が私も掴みにく状況であった。

ただ、治療に関してはApicoectomyは希望していないと言う。

理由は外科は怖いからだという。

再根管治療でなんとかしてほしいという強い要望があった。


初診時(2022.3.23)

歯内療法学的検査は以下になる。

#8 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#10 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

初診時には体調不良はないようで痛みを再現できなかった。

PAは以下になる。

#10の根尖部からはGutta Percha Pointが大きくはみ出ている。

根尖孔の破壊が考えられる。

これを患者さんによれば前医はラバーダムなしで行なったという。

小さなことだが大きな問題である。

また、CBCTは以下になった。

歯槽骨から12mm程度先にApexが存在する。

歯根の長さはPAからもかなり長い方である。

ただこの方の唇は柔らかいので柔軟に治療は対応できるだろう。

また、Apexから3mmの位置で切断した時の頬舌的幅(奥行き)は以下になる。

おそらく5mm程度の深さがあるだろう。

ゼクリアバーの長さが11.0mmであるのでこのバーのおよそ半分が骨窩洞の中に入らなければいけない。

それほど深い窩洞にはならなさそうである。

以上はあくまでも参考程度のものであるが

最後のここぞという時の判断にとても重要

である。

さて歯内療法学的診断は以下になる。

#9 Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis

#10 Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis

どのような治療が適切か?だが、私としては

#10に関しては

ここまで根尖部で大きな拡大がしてあり

既にオーバー根管充填しているし(根尖部の破壊)

テーパー形成も十二分に行われている

ことから外科治療一択であるということを中心に説明した。

なぜか?

既に根尖部を大きく拡大しているのにもかかわらず、どうしてそれ以上の拡大形成が可能であろうか?

既に形成を終えている現状でこれよりも満足がいく結果は得られないだろう。

私には、この状況が根管形成+根管充填のエンドポイントに見えた。

もちろん、#10をRe-RCTしても構わないが、かけたお金に対する効果が得にくいと考えざるを得ない。

ということで、治療計画は以下になった。

Recommended Tx

#9 Re-RCT, Core build up with Fiber Post

#10 Core build up with Fiber Post, Apicoectomy

患者さんは外科治療を避けたかったようだが費用対効果の説明をすると外科治療に同意していただけた。

ということでまず治療初日は#10の支台築造処置と#9 再根管治療, 支台築造処置である。


#10 Core build up with Fiber Post(2022.3.22)

この前装冠を除去すると以下のようなレジンコアが出てきた。

文献によれば、レジンセメントの除去には注水が必要であるので超音波よりもバーで切削した方が早いという。

が、レジンコアそのものを除去するのにどちらが早いか?に関しては私は情報を知らない。

しかしながら、レジンをなるべく薄くすれば超音波で簡単にGutta Percha Pointにたどりつけるかもしれない。

ということで、

①まずはダイヤモンドバーでレジンを削合した。

この時点で、レジンの厚みが薄くなる。

そこを超音波で削合すると根管充填剤に容易にアクセスできる可能性がある。

レジンの削合にはバーか超音波かどちらが有利か?という文献を私は知らないが、

作戦としては繰り返すがレジンの厚みを薄くして超音波でGutta Percha Pointにアクセスするというのが目的である。

最近の私のお気に入りはこのHelse UltrasonicのE15〜The Finderである。

1本85$で販売している。

日本にも輸送可能だ。

ただ…日本でも販売していた。

FEEDである。

そしてなんと、FEEDの方がHelse Ultrasonic社のもの($85)よりも安い。(税込で¥6,578)

これは海外から買う意味はもうなくなるだろう。

レジンをサクサクと削ってくれる。

かなり便利だ。

Youtube動画を引っ張ってきた。

 

さてこの動画のように簡単に私はレジンを除去することができるだろうか?

私の治療動画で確認してみよう。

②超音波によるレジンコアの除去

わずか約50秒でGutta Percha Pointまでアクセス可能であった。

このことが超音波でのレジンの除去の有効性をよく示している。

なお、作業中はアシスタントにエアーを当ててもらっている。

温度上昇を防ぐためだ。

この歯は外科治療を別日で行う予定であるのでGutta Percha Pointの長さだけこの後は調整してFiber Postを用いて支台築造した。

さて、一方の#9はPinを除去して再根管治療が必要である。

これが実はことのほか難しかった。

なぜか?といえば、

このスクリューピンがスーパーボンドでつけられていたから

である。

驚愕の状況であった。

仕方がないのでこの位置までスクリューピンを削合してPAを撮影した。

ここで私は#9も#10もApicoectomyする方法もあるということを説明したが…

患者さんは時間がかかってもいいのでこのピンを除去してほしいという希望であった。

となれば、時間はかかるが頑張ってほしいと声をかけて再根管治療リスタートとなった。

ピンをEndoGuide burやリンデマンバーやロングシャンクのフィッシャーバーで削合してGutta Percha Pointを露出させた。

Gutta Percha Pointは容易に除去できた。

作業長等を測定し直した。

HyFlex EDM #60.02まで形成したが途中でオーバー形成してしまったのでGutta Percha Pointのテーパーを.04に上げて根管充填しようと試みた。

ポイント試適した。

問題がないと判断し、BC sealerを用いて根管充填した。

オーバーフィリング気味になった感じがする。

偏心も撮影した。

ということで#9の再根管治療+Core build up with Fiber Postは終了した。

私は現在某所での治療で福岡の自分の歯科医院に不在である。

なので明後日まですいません、全ての動きが止まります。

私の用事がある先生、もう少々お待ちください。

明日以降、この臨在歯の#10 Apicoectomyの模様をお伝えしたいと思っています。

明日以降のブログの更新まで、少々お待ちください。