他院から紹介の患者さん。(2022.5.6)

主訴は

右上一番奥の歯(#2)が腫れて痛みを感じる

治療歴は以下になる。

2021.12 歯痛により、某歯科を受診し銀歯を外す

2022.1(再根管治療を行わずに)銀歯を再装着

2022.2 歯茎が腫れたため再度受診。再根管治療(4回)の後、腫れが引いたため2022.3に銀歯再装着

2週間後に再度悪化。某歯科を再度受診するも抗生物質を服用して様子を見るように言われる

2022.4 かかりつけ歯科医院へ転院。紹介で当歯科医院受診。

現在も、腫れや痛みがあるという。

歯内療法学的検査は以下のようになった。

#2 Cold N/A, Perc.(++), Palp.(++: P側), BT(++), Perio Propbe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#3 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Cold+4/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#2はPerc., Palp., BT全てのPeriapical testで大きく陽性反応を呈した。感染が原因で痛みが出ている。これをコントロールするのは実は非常に難しい。

炎症ならば麻酔でコントロールが可能だが感染はコントロールが効かないどころかしてはいけない項目が多数であるので不利である。

抗生物質を一定期間(1週間)の投与することになった。

また、PAは以下になる。

CBCTも撮影した。

MB

MB周囲には根尖病変がある。

かなり湾曲した根管だが、この湾曲に沿って抜歯を行えばどうにかなる。

つまり、近心から遠心方向へ脱臼できれば勝負に勝てる可能性が高い。

次がDBである。

MBを遠心方向へ脱臼させると一緒に歯槽骨から脱臼できそうである。

アンダーカットもこの根には見当たらない。

綺麗に抜歯できそうだ。

若干の根尖病変が確認できる。

次に最後が問題のP根である。

P根

P根周囲に歯槽骨がない状況が手に取るようにわかるだろう。

これは脱臼させれば抜歯ができる案件である。

頬側から見た絵は以下である。

P根の周囲には歯槽骨がない。

これは脱臼が容易にできることを示している。

が、同時に歯牙破折の可能性も考慮しなければならない。

具体的には口蓋根が折れていた場合、どうするか?だ。

口蓋だけ取り除くのか?それとも破折線を追って破折線を材料で塞ぐのか。

いずれにしてもそれを決めるには、抜去して歯牙の破折の部分を確認しなければならない。

が、破折がなければこうしたことは忘れてもいいことである。

P根周囲の断層像は以下である。

P根は恐らく、ハンドファイルで根管形成しているために大きくトランスポーテーションしてしまっている。

これを修正して根管形成するのは不可能だろう。

ということで、以上のようにそれぞれの根管に見通しが立った。

歯内療法学的診断は以下である。

#2 Pulp Dx: Previously Treated, Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx:Core build up w/wo Fiber Post, Intentional Replantation

推奨される治療方法はIntentional Replantationである。

理由は口蓋根の根管の根管充填の大きなトランスポーテーションだ。

これを修正して根管形成し、根管充填する技術は私にない。

つまり、

再根管治療(口蓋根の根管の根管充填の大きなトランスポーテーションの修正)vs Intentional Replantationのどちらが簡単か?

という話になる。

私には後者の方が簡単であるので、Intentional Replantationをクラウンを外して支台築造後に行うことになり投薬+服用完了後の1週間後に患者さんは治療計画に同意されて治療が行われた。


Intentional Replantation(2022.5.13)

支台築造をしたのちに、歯牙を脱臼させて抜歯した。

☆以下から治療中の動画を掲載します。気分が悪い方はご試聴をお控えください。

①脱臼+抜歯

歯根端切除

 

口蓋根は歯頸部まで破折線が進んでいた。

この状況では口蓋根を残存させることはできない。

破折線が進行する部分まで口蓋根は抜去した。

いわゆるトライセクションのような形になった。

残りのMB, DBに関しては破折線は見当たらなかったので、Apicoectomyを行なった。

③MB, DB 歯根端切除

④MB, DB 逆根管形成

⑤逆根管充填

⑥口蓋再植後、 GBR処置

抜歯した口蓋根部の骨吸収を防ぐために患者さんの希望でGBRが行われた。

予後不良であれば除去していく。

 

ということでIntentional Replantationは終了した。

PAは以下になる。

⑦Intentional Replantation 直後(2022.5.13)

 

次回は1ヶ月後に経過を見ることになっている。

いい結果が出れば…と思うがさてどうなるだろうか?

1ヶ月後を乞うご期待。