#15 Intentional Replantationに目処がついたのでご報告しよう。
初診日は2021.2.21であった。
最終経過観察日は2022.5.18である。
この患者さんには前医で治療歴があったがそれは以下のようである。
2018年9月26日に強い自発痛・打診痛,歯髄に至るカリエスのため抜髄。
かなり太い根管で#50-19mmにて拡大し、症状の消失を確認したので同年11月20日に根管充填。
その後、同年12月6日に同部位の咬合痛を訴えたため咬合調整にて経過を見ていたが、打診痛の改善が見られないため2019年1月17日再度根管治療を行う。
遠方から来院されているので根管貼薬を月に1度のペースでしていたが症状消失せず。ビタペックスを入れてCT撮影したところ、根尖部より上顎洞への穿孔を確認。
恐らく過度の根尖部の拡大とファイル操作が原因と考えられる。
(以下、前医からいただいたPA、CBCTである)
根管充填しているがここでは仮封がない。
仮封がなければ唾液が数週間で根尖部へ流出してしまう。
パノラマ・CBCTを撮影していた。
断層像は以下になる。
根尖が完全に破壊されている。
これは歯牙の破折を招く重大な問題だ。
この状態で紹介された。
初診時(2021.2.21)
(ここからは当歯科医院で撮影したPAである。)
歯内療法学的検査の結果は以下になった。
#15 Cold N/A, Perc.(++), Palp.(+), BT(+), Perio pocket(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold+3/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio pocket(WNL), Mobility(WNL)
診断は以下になった。
Pulp Dx:Previously Initiated Therapy(根充材がビタペックスのため)
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: #15 Core build up→Intentional Replantation
推奨される治療はIntentional Replantationである。
患者さんは治療内容に同意し治療が行われた。
Intentional Replantation時(2021.2.21)
支台築造を行い、根切を口腔外でおこなった。
逆根管形成し、逆根管充填した。
PAを撮影した。
問題はないと判断し、抜歯窩へ再植した。
ここから経過観察をしていくが、文献上のヒントはほとんどない。
私が好きで用いているものはRatを使用した研究であり、病気のない歯牙で再植をしているものである。
Panzarini 2013によれば治癒は以下のように進んでいく。
2週間でくっついた感じがしてくる。
そして、
1ヶ月でPDLがOrganizedされて2ヶ月で治癒する。
通常、問題がなければ2ヶ月で治癒する。
しかし、長引く場合もある。
なぜかと言えば、上記の研究は病気のないRatの歯で行っているからである。
病気がある人の歯だともっと違うこともあるだろう。
この治療の鍵は、
”待てるか?”
である。
1ヶ月後、患者を呼ぶと喜び爆発であった。
もう痛くなくなった!
のである。
だがこの喜びはぬか喜びに変わる。
2ヶ月目のRecallで噛むと痛いに変わったからだ。
2M Recall(2021.4.13)
根尖部の骨欠損はかなり回復しているように思われるが…痛みがある。
が、患者さんの希望で経過を追うことになった。
6M recall(2021.8.25)
問診を行うと、以前あった痛みはかなり減少したという。
Pain scaleは2/10とのことである。
歯内療法学的検査は以下になる。
#15 Perc.(±), Palp.(-), BT(±), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下である。
根切した部位には歯槽骨が回復しているように見られる。
Intentional Replantation前の#15は
#15 Perc.(++), Palp.(+), BT(+), Perio pocket(WNL), Mobility(WNL)
であったのでだいぶ主訴が改善していることになる。
ここから私は一つの推論を考えた。
それは、Intentional Replantationですぐに結果が出なくても時間をおいて経過観察すれば治癒する可能性があるということだ。
私は患者さんにさらに3ヶ月後に経過観察させて欲しい旨を伝え了解していただき、かかりつけ医にはプロビジョナルレストレーションを装着してもらい、
この日のリコールは終了した。
9M recall(2022.1.27)
痛みは若干あるがほとんど問題ないという。
検査をおこなった。
#15 Perc.(±), Palp.(-), BT(±), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
前回とほとんど変わらない。
ここまで来れば…もう3ヶ月置いてみようという話になった。
そして1年経過時のCBCTを撮影することにしてこの日のリコールは終了した。
1yr recall(2022.5.18)
患者さんに#15の状況を聞いたところ、
”若干痛みはあるが、日常生活に支障はない”
という回答を得られた。
PAに先駆け、検査をおこなった。
#15 Perc.(±), Palp.(-), BT(±), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
PAを撮影した。
また、1年経過したため#15 CBCTも撮影した。
CBCTでは問題があるような絵が得られなかった。
これは、歯内療法の治癒の評価で言えば、以下のAAEの基準に乗っ取れば、”Helaling”であると言っていい。
AAE Success and Failure
以上の話を患者さんとして、
症状はあるが歯牙として機能はしているので、現段階では”Healing”として最終補綴を装着することになった。
ということで1年にわたる経過観察は終了したのである。
以下、比較写真である。
次回は、1年後が経過観察である。
2023.5を予定している。
その模様は来年報告しよう。