歯質が殆どない樋状根・下顎第2大臼歯の治療⇨#18 Intentional Replantation〜1年半経過

の継続記事。

それからさらに時間が経過し、初診から3年8ヶ月の予後を見ることができた。

簡単に治療の前後をまとめてみよう。

主訴:咬合痛が激しかった。

患歯:#18

治療歴:この歯科医院で2度の根管治療

治療前(2019.12.11)

CBCTも撮影していた。

2根管の?C-shaped canalである。

近心根の根尖部には根尖病変が見える。

無菌的な処置が必要であるが、どこまでそれをやるかだ。

正直言って、日本の保険診療ではそうした処置を行うことは不可能だろう。

まずラバーダムが保険診療から無くなった。

正直に言えば、初診料(再診料)に含めてやれという意味であるがそんなことをしてくれる歯科医院はないか、将来の自由診療への練習過程の歯科医院である。

近所に新しい歯科医院ができたとしよう。

そこが自由診療中心で診療を行なっているということはまずない。

なぜか?そんなところに患者は来ないのである。

しかし、地方には勉強意欲に満ち溢れた歯科医師もいるだろう。

近所でそうした歯科医院を見つければそこへ通院するのも一つの手なのかもしれない。

が、素性もわからない歯科医院に行ってそうした処置を受けることは患者さんにとってはレベルが高すぎる処置になるだろう。

一か八かに自分の歯の運命を賭ける人はほとんどいないだろう。

時代が変わったのだ。

ということは歯内療法専門の歯科医院に行くべきだろう。

話が逸れたので元に戻そう。

次が遠心根のCBCTである。

遠心根

ここにも根尖病変が見える。

PAでは見えないが、CBCTでは見えている。

ということで歯内療法学的診断は以下になる。

#18

Pulp Dx:Previously Treated

Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx:Intentional Replantation+Core build up with Fiber Post

ということで治療へ移行した。


Intentional Replantation時(2020.2.25)

★以下、治療画像が出てきます。不快感を感じる方はskipしてください。

先に支台築造を行った。


脱臼させて抜歯を試みた。

すると…レジンコアが脱離してしまった…

このことから、

レジンによる支台築造処置とIntentional Replantationは同日に行ってはいけない

ということがわかると思う。

しかしここはバイト先なので次回に回すとさらに1ヶ月先になること、

またこの歯が樋状根であることから脱臼させれば抜歯が可能であることから、

このまま脱臼を継続した。

すると以下のように抜歯が可能であった。

根切した。

逆根管形成・逆根管充填した。

ビタペックスで根充してある。

小児の患者ではないので無意味であるが…

逆根管形成し、BC puttyで逆根管充填した。

抜歯窩に戻しグラスアイオノマーセメントで仮封した。

その後、PAを撮影した。


さてこの時から時間が経過し、初診から3年8ヶ月が経過した。

この歯は今はどうなっているだろうか?

Intentional Replantation後 3年8ヶ月 Recall(2022.8.23)

初診時にあった咬合痛や、いかなる歯内療法学的不快感も痛みもない。

PA

クラウンが既に装着されている。

CBCTも撮影していただいた。

Intentional Replantation後, 3年8ヶ月 CBCT(2022.8.22)

術前に存在していた根尖部の病変は消失した。

近心根

歯槽骨が復活している。

これでは、歯が折れて残らなくてもインプラントに有効利用できるだろう。

遠心根

こちらも歯槽骨が復活している。

ということで治療前後を比べてみた。

術前にあった根尖病変(頬側面、近心根、遠心根の根尖部にある黒い影)が消失しているのがわかるだろう。

患者さんへ…これが健康な根尖部の組織の状態である。

こうなってない場合、その歯には何らかの問題が起きていると言っていいだろう。

また、この歯が何年あと持つのか?はわからないが、なるべく長く持てばいいと思うし、持たなくなればインプラント処置であるがその際も

Intentional Replantationにより回復した歯槽骨がたっぷりとある場所にインプラントを埋入できるので次の処置に問題がほぼ起きない

だろう。

このように歯内療法は先の処置を見越して治療を行うことができる。

野球で言えば、

中継ぎ投手

である。

野球で例えれば、昔の弓長起浩(阪神)、伊藤敦規(阪神)、遠山奬志(阪神)、葛西稔(阪神)のような存在だ(全員、懐かしい!)。

https://www.youtube.com/watch?v=eBr_q8ByJdM

https://www.youtube.com/watch?v=Td_HKU78l5c

決して大谷やマー君、藤川球児のようにはなれない。

なるべく歯を持たせたいのであれば、どうした処置を行うべきか?あなたはわかるだろうか。

こうした渋いいぶし銀にお金をかけるか?どうか?である。

それを決めるのは、歯科医師ではなくあなたである。

わからないのであれば、あなたはどうかしている。

自分で考えて、正しく物事を判断しましょう。


最後に。

患者さんはこれで一生過ごせるわけでないということも理解している。

歯が割れたらこの歯の機能は終了する。

ここを理解しているか?どうか?が重要である。

一生機能する(持つ)処置はないのだ。

理解がない人は歯科治療には向かないという理由がここにもあるだろう。

以上、Intentional Replantationの長期症例の紹介でした。