外部からの依頼治療。

初診日は検査とPA、CBCTの分析等を行った。

初診日(2022.9.13)

歯内療法学的診断は以下になる。

#18 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#19 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。

偏心(偏近心)でPAを撮影している。

ファイルはこの先生の言う通り、MB根に存在するだろう。

しかし、それ自体が問題があるか?と言われれば問題はないのだが。。。

この先生から穿孔させたと言うPAもいただいている。以下になる。

ただこの後はMTAセメント等で封鎖を得られているので基本的には問題ないだろうと考える。

CBCTもいただいていた。

CBCT(2022.9.12)

咬合面から観察するに既に多くの歯槽骨が吸収されている。

何が原因だろうか?

いただいたPAにはラバーダムのクランプのような物が見える。

ということは唾液に配慮して治療していたのがわかる。

そこが問題ではないのだろう。


MB根

MB根管にはファイル破折があるのがわかる。

これをどうにかしようとしたら穿孔してしまったというのが今回の主訴だ。

根尖部でファイルが破折している。

このように根尖部で折れたファイルを除去しようとすると起こりうる問題をあなたは覚えているだろうか?

そう、高い確率で穿孔が起きることが知られている。

覚えていないのであれば、Basic Courseに出席するしかないだろう。

俺は他のやつと違う!

と吠えてもあなたも同じになるのだから。


ML根

MLは既に大きなサイズに拡大形成されている。

そして根管充填も…

これを改良して再根管治療を行うことはかなり厳しいと言える。

この点からも再根管治療ではなく、Intentional Replantationの適応症だろうと思われる。


D根

最後がD根だ。

D根は根尖孔が破壊されてしまっている。

Gutta Perchaの溢出も見られる。

このことから再根管治療は厳しいだろう。


以上のことから#18の治療は以下になる。

#18

Pulp Dx:Previously Treated

Periapical Dx:Chronic apical abscess

Recommended Tx:Core build up→Intentional Replantation


Intentional ReplantationとCore build upを同時にやるかどうか?だが、この症例では同時に行っていいと私は考える。

なぜなら、まだ多くのエナメル質が残存しているからだ。

それなら外れることもないだろう。

治療は予定の関係で別日(といっても明くる日)に行われた。


Core build up(2022.9.14)

根管内部をよく見てもらっただろうか?

MB根にはMTAセメントが充填されている。

そしてそこに穿孔が生じている。

理想的には穿孔部自体を封鎖することだが、細いファイル(#15)が穿孔しただけである。

外科で見つかれば外部から封鎖するが、見つからなければ…それは仕方がないだろう。

ではもう一度、早送りせずに確認してみよう。


この後、同日にIntentional Replantationが行われた。

#18 Intentional Replantation① 脱臼・抜歯・抜歯窩掻爬(2022.9.14)

まず脱臼させて抜歯した。


次の治療の目的は、穿孔の位置を確認することだ。

近心根の近心に穿孔はあるだろうか?

#18 Intentional Replantation② 穿孔部位観察(2022.9.14)

あなたは確認できただろうか?

私にはできない。

目が悪いのか?と言えば、悪いがそれとこれとはあまり関係ないだろう。

メチレンブルーを使用するべきだっただろうか?

Intentional Replantationでは歯根膜を傷つけてもその大きさが 9mm2以下であれば2ヶ月で治癒することが分かっている。

このファイルの大きさであれば穿孔部位は修復される可能性はあるだろう。


#18 Intentional Replantation③   歯根端切除(2022.9.14)

根管と破折ファイルの位置を比較してみよう。

破折ファイルをどのように扱うか?頭が痛いところだ…

破折ファイルを除去すると歯根を失う。

もしくは新たな穿孔部位を作りかねない。

破折ファイルも除去して、逆根管形成もきちんとして、新たな穿孔も作らずに、逆根管充填もきちんとできるだろうか?

また、きちんとという言葉の意味合いはなんだろうか?

非常に難しい判断をせざるを得ないだろう。

ということで私は破折ファイルの除去は行わずにそのまま逆根管形成することにした。


#18 Intentional Replantation④ 逆根管形成(2022.9.16)


#18 Intentional Replantation⑤ 逆根管充填(2022.9.16)


PAを撮影した。

折れたファイルは取れていない。

穿孔も見つけられなかった。

が、逆根管充填で穿孔部位も一緒に封鎖できた可能性がある。

封鎖できていなければ、時間経過しても根尖病変は治癒しないだろう。

抜歯窩に再植した。固定はしていない。


最後にPAを撮影した。

Intentional Replantation後 PA(2022.9.16)

次回は、1ヶ月後 & 2ヶ月後に経過観察を行う予定である。

その際の報告を少々お待ちください。