紹介患者さんの根管治療。
前回は#21のRe-RÇTを行なっていたが、
”全く痛くなくなりました…魔法をかけられたみたいです!”
と大喜びであった。
ちなみに私は魔法使いでないことは多くの人が知っている事実だろう。
と与太話は、横に置いといて本題に戻ろう。
この治療が終了してから左の上の小臼歯が痛むようになったという。
場所はどの辺ですか?というと指を刺して患歯?を指し示せるほどだ。
その周囲の歯の歯内療法学的診査が行われた。
歯内療法学的診査(2022.12.2)
#12 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), Palp.(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#13 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), Palp.(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold+3/5, Perc.(-), Palp.(-), Palp.(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#13の痛みがよく感じている痛みだという。
歯内療法で主訴が改善できる可能性が高い。
その部分のデンタル撮影、CBCT撮影も行なった。
PA(2022.12.2)
偏心がほとんど効いていないPAである。
偏心撮影を行うことを失念していたようだ…
しかし、いずれにしても湾曲の強い嫌な感じの歯である。
根管治療…特に尖通がうまくできるか?か鍵である。
そしてグライドパス。
グライドパスは近年のNi-Ti Rotary Fileの進化により大きく変わったと思われる。
昔は…#15のK Fileがスッポスッポになるまで形成!とあったが今も昔も、そんなことをしている人がどれだけいる(いた)だろうか?
そもそもグライドパスもしない人も大多数だろうし、聞かれれて何のことか?答えるのが厳しい人も多いだろう。
非外科的な歯内療法成功の鍵はグライドパスと言える。
しかも現代は、メカニカル?グライドパスである。
#15でなくてそれよりも細い#10でまず形成をすることがそのシステムのNi-Tiをぶっ壊さないで形成する鍵であるし、なるべくそれをしないで形成まで持っていくことも症例を簡単にする鍵であることは論を俟たない。
その意味ではHyFlex EDMは非常に優れたファイルといえる。
#10 C+ Fileで尖通すれば1mm(0.5mm)上は#14(#12)である。
#8 C+ Fileで尖通しても1mm(0.5mm)上は#12(#10.04)である。
つまり、グライドパス用のNi-Ti Fileである#10.05は、
(#8で穿通して作業長をWL=Apex-0.5mmにしない限り)
不要である。
#6 C+ Fileで尖通したら…1mm上は#10.04である。この時は#10.05を使用しなくてはならないだろう。
が、Foramenから#6 C+ Fileを1mm突き出せば、Foramenは#10となるため、Apex-0.5mmで#12を得られるため、#10.05は使用しなくてもよくなるだろう。
こういった事実に一体、どれくらいの人が気づいているだろうか?
私が何を言っているか?全く意味がわからないあなたは、テーパーという言葉の意味が全く理解できていない証拠だ。
Basic Couseやマイクロエンドマンツーマンコース
に出る必要があるだろう。
そんなこと当たり前じゃん!というあなたにはもちろんその必要はない。
あなたの道を突き進んでください。
CTも撮影していた。
CBCT(2022.12.2)
#13の湾曲はかなり強い。
しかも根尖病変だ。
最悪としか言いようがない…
ということで診断は以下になる。
歯内療法学的診断(2022.12.2)
#13
Pulp Dx: Pulp Necrosis
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
推奨される治療は根管治療一択である。
ということで治療計画に患者さんが同意し、治療が始まった。
☆この後、臨床的な動画が出てきます。不快感を感じる方は試聴をSkipしてください。
#13 RCT(2022.12.2)
私の歯髄診査は正しかっただろうか?
SXを用いて根管上部をまず拡大した。
C+ Fileを尖通しやすくするためである。
細い空洞をFileをクネクネさせて尖通するか?調べるよりも、大きな穴にFileをクネクネさせて尖通するか調べた方が尖通しやすいのは感覚的にわかるであろう。
さて上記の動画で#13の根管口は2つになっているがこれはどうだろうか?
上顎第2小臼歯の解剖学的知識はあなたにあるだろうか?
上顎第2小臼歯が2根管である可能性は24%しかない。
打てない守備だけの野球選手のような割合である。
それ以外の75%が1根管である。(Vertucci Type1~3)
よほどのことがない限り、1根管であると言える。
これを頭に入れて根管治療している人がどれほどいるだろうか?
ほとんどの人がこれを考えていない…
話を戻そう。
では、1根管としてあなたはどのように形成していくだろうか?
上顎の機能咬頭は口蓋である。
つまり、口蓋の方が湾曲が強いと言える。
であれば、私はまず頬側を拡大・形成し最後に口蓋とつなげる作業を行うだろう。
SXで上部を拡大し、#6 C+ Fileで尖通させたがWL-Apex-0.5でやろうとしている私は#6 C+ Fileを1mm突き出して後のグライドパスをやりやすくするようにした。
治療の模様は以下になる。
ポイント試適した。
問題ないと判断し、Patency Fileを行いBC sealerでSingle Point根充した。
支台築造を行い、PAを撮影した。
根管充填直後 PA(2022.12.2)
問題ないと判断した。
次回は6ヶ月後である。
それまではプロビジョナルレストレーションの装着をかかりつけ医にはお願いした。
経過観察まで少々お待ちください。