紹介患者さんの治療。

#3,4,15の根管治療を依頼された。

主訴は

右上がしみる

である。

歯内療法学的検査が行われた。

歯内療法学的検査(2022.11.10)

#3 Cold++1/3, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#5 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。

初診時 PA(2022.11.10)

生活歯髄療法をしているがその目的が果たせないでいる。

また、CBCTもかかりつけ医に撮影してもらっていた。

初診時 CBCT(2022.11.10)

MB

激しい湾曲の根管に根尖病変が見える。

穿通必須だがかなり難しいだろう。

このように湾曲が強い根管をどのように攻略した方がいいだろうか?という話は後でしようと思う。

次がDBである。

DB

DB根はかなり長い根である。

ここにも根尖病変があるので穿通は必須である。

最後はP根。

P

P根の根尖部にも病変が見られる。

しかし、根尖病変があれば肉芽があるだろうからシーラーが根尖にそのまま落ち込むということは多分ないだろうと思われる。

そして根管の石灰化も進行している。

根管口がどこにあるか?わからないかもしれない。

ではそれらはなぜか?といえば、前医が生活歯髄療法を行ったからである。

大人でなぜ生活歯髄療法を行うのか?といえば、

術者が歯の神経をとると歯が脆くなると信じているから

である。

しかしそうだろうか?

といえば、

多くの文献では失活歯でも歯の強さや強度は生活歯と変わらない

とされている。

Reeh 1989

Sedgley & Messer 1992

Huang 1992

Yan 2019

Yan 2021

しかも

in vivo(人!!)では、クラウンにしなくても良いのではないか?という文献もある

くらいだ。

Suksaphar 2018

この件に関しては、来年

北欧歯科と生活歯髄療法のセミナーを行うので

ぜひそれに出席していただきたい。

今までのあなたの”常識”が”非常識”に変わるだろう。

と話がそれたので元に戻そう。

診断は以下になる。

#3

Pulp Dx: Symptomatic irreversible pulpitis

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: RCT

ということで通常通りのRCTであるが、まずこの歯のMBに関してはMB2はあるがMB1と近接していること、MB1とMB2は合流する可能性が80%もあること、CBCTで合流しているように見えることから私はその存在は無視して、MB1のみを根管形成することにした。

ということで根管治療へ移行した。


☆この後、臨床的な動画が出てきます。気分を害する方は試聴をSkipしてください。


#3 RCT①(2022.12.13)

Tekを外してチャンバーオープンした時、そこは血の海になるだろうか?

私の予想はならないと考える。

血の海にはやはりならなかった。

おそらく…Necrosisへ移行しているのだろう。

しかし…生活歯髄療法の影響で石灰化し、P根の根管口がない。

この時、髄床底のロードマップを探索し根管口の発見を図った。

この際に有利なのが鋭い短針の使用である。

鋭い短針を使用すると根管口をあっさり見つけることができる。

あとは、Munce discovery burの利用だろう。

根管口が見つかったら、SXで上部を拡大する。

特にMBはカーブが強いので十分に拡大しておく必要がある。

ということで術前にCBCTで予想していた。

下に示す。

P

DB

MB

作業長の予想は

P 19.0mm

DB 17.0mm

MB 16.0mm

と思われる。

もちろん誤差はあるだろうが大体の長さがわかるというのは治療の際に大いに役立つ情報である。

これがCBCTを根管治療へ適応する醍醐味と言える。

実際にRoot ZXを使用し、作業長を計測した。

下に示す。

MBは4回目のトライで穿通した。

それまで、SXの使用→C+ File #10⇨#8⇨#6⇨C File #10⇨#8⇨#6⇨洗浄, 再度穿通を試みると繰り返していた。

湾曲が強い根管を制する鍵はファイルを気にせず治療することである。

ここは大学病院ではないのだから。

またSXで十分、上部拡大をすることである。

ということで、MBはC File #6で穿通した。

ということは1mm上部は#8であり、いかなるHyFlex EDMのNi-Ti Fileも使用できないので、私はCファイルをわざとForamenから2mm突き出した。

するとApical Foramenが#10になりその0.5mm上部が#11であるのでHyFlex EDMの#10.05を使用しなくてもよくなる。

ところで、最近HyFlex EDMが人気のようだ。

福岡で入ってきたそれが、10キット某社であったそうだがそのうちの6つをうちの歯科医院が注文させてもらった。

これで困ることが少ないだろう。

もしなければ…アメリカから買えばいいのだが。

実はこのHyFlex EDMの#10.05は非常に重要なファイルだ。

根管治療は(メカニカル)グライドパスが重要だからである。

ということでポイント試適した。

やや口蓋根がアンダー気味に見えるがそれが正しいかどうかは誰にもわからない。

しかもMTAシーラーで根管充填するこの時代、そこまで重要な案件でないと考える。

根管治療はそんなことよりも、無菌的に治療することの方がはるかに重要である。

ということでBC sealerを用いて根管充填へ移行した。

根充後にPAを撮影した。

MB, Pからはシーラーパフがあったが、DBからはなかった。

作業長を計測ミスしたかもしれない。

が、精一杯やったので思うところはない。

次回は半年後である。

CBCTをその際は撮影してもらい、初診時と比較したい。

それまで少々お待ちください。