他院より紹介の患者さん。

主訴は

右上奥歯が痛む。食事の時に噛めない

であった。

初診時歯内療法学的検査(2018.7.31)

#2 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴が再現できている。

適切な治療を行えば、主訴は改善するはずだ。

初診時PA(2018.7.31)

Systemが変わり以前のPAが採取できなくなってしまった…

契約書にかつてのPAが残存していた。

それを掲載している。

初診時CBCT(2018.7.31)

MB

絶望的になるくらい、歯槽骨が吸収されている。

歯が割れている

とか言い出されそうな案件だ。

分岐部にまたがるほど大きな骨欠損ができている。

これを治療でどうにかできるだろうか?

DB

DBにも大きな骨欠損がある。

これはDB由来だろうか?それともMBか?といえば、それは誰にもわからない。

ここも骨欠損がありそうだ。

P

口蓋側に病変はなさそうだ。

MB, DBのマネージメントが重要であるが、

この患者さんは口角が異常に硬く、おそらくDBのApicoectomyは無理

であると思われる。

歯内療法学的診断(2018.7.30)

#3

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy(MBのみ)

DBを切るのは物理的に不可能なので、MBのみのApicoectomyとした。

術前はRE-RCTであるが、以下のPAをかかりつけ医からもらったために、私はこの根管治療を信頼しているからだ。

#3は2018.4.24にはSinus tractがあり、ラバーダムをかけて再治療をしている。が、治癒していない。

ということは、つまり、外科案件の治療であった。


☆この後、外科治療の動画が出てきます。試聴が苦手な方はSkipしてください。


#3 Apicoectomy(2018.8.21)

当時の動画が残っていた。奇跡だ。。。

パピラベースで切開している。

当時はまだ、MTAセメントを使用していた。

縫合した。

術後のPAは以下である。

さてここから5年が経過している。

この歯はどうなっただろうか?


#3 Apicoectomy 5yr Recall(2023.2.2)

術前にあった不快症状等は一切ない。

5年前に#3にあった、

Perc.(+), Palp.(+), BT(++)は消失していた。

PAは以下である。

MBの根尖部には歯槽骨が出来上がっているようであった。

CBCT #3 Apicoectomy 5yr Recall(2023.2.2)

MB

近心根の根尖部にあった大きな骨欠損は消失した。

治癒はかなりいいと思われる。

歯内療法はこのように歯周病治療と異なり、歯槽骨を再生させることができる。

DB

DBに存在しているように見えていた根尖病変様の透過像は消失した。

やはり原因はMBであった。

P

#3のP根は問題ないが、#2のP根の根尖部に見えるのは???

深い修復治療に根尖病変様の透過像が見える。

#3のPに問題はなさそうである。

ということは#2の歯の神経は失活している可能性が濃厚である。

また、#3の術前術後を比較してみた。

Apicoectomyを行うことで急速に皮質骨が回復したことがわかる。

このように歯内療法は皮質骨を再生できるが、歯周病治療は無理である。

また、話を戻して、#2は本当に失活しているだろうか?

PAを再度見てみよう。

歯髄に到達せんばかりの大きな歯髄覆罩材の上部にメタルインレーが装着されている。

そして石灰化が進行していっている。

根尖部に病変も見える。

これを食い止めるには…根管治療しかない。

もう一度CBCTを見てみよう。

#2にはMB, DB, Pという根管を見て取ることができる。

つまり、石灰化で根管治療ができない…という事態にはならないと考える。

詳細を見てみよう。

#2

MB

根管口は見えている。

PAも参考にするとこのMB根管が一番見つかりやすい可能性はある。

近心のセメントを除去すると、MB根管口は容易に見つかりそうだ。

しかも根尖病変はない。

ということは必ずしもMB2を見つける必要がないとわかる。

MBの根管口部付近を見てみよう。

2根管あるが、二つはかなり近接している。

MBの根尖部を見てみよう。

 

おそらく、Vertucci TypeⅢである可能性が高い。

しかも根尖病変がないので必ずしも穿通させる必要がない。

そこまでクレージーに追求しなくてもいいだろう。

DB

根管口は見えているようだ。

石灰化はそこまで進行していない。

ということでそこまでこの根管も難しくなさそうだ。

P

口蓋は歯槽骨の吸収がこのレベル(根管口付近)でも見られる。

根尖病変があり、これが上顎洞底線を消失させる原因になっている。

石灰化は起きているが、根管を全て隠すほどはないと思われる。

が、根尖病変があるので穿通は必須だ。

ということで、#2の根管治療まとめると

①P根に根尖病変があり、同部は穿通が必要

②MB, DBには根尖病変がないのでクレイジーに根管を探す必要はない

③過去のVPTで石灰化は進行しているが、まばらなため根管治療を行うことは可能

ということがわかる。

それほど難しい治療ではないだろう。

ということでこの日の経過観察時の主訴が

右上の奥歯、以前治療したところが最近、物を噛むとズーンとした感覚がありものを紙のがつらい

であったため、#2の治療も行うことになった。

その模様はまたこのブログでお知らせする。

ということでこの日の経過観察は終了した。

その内容の詳細は少々お待ちください。