バイト先での治療。

患者は50代男性。

このバイト先に院外の先生が紹介してくださった症例であった。

主訴などは特にないが、副鼻腔炎的な症状があるらしい。

患歯は#2である。Provisional Restorationは外れていた。

また、#3はすでにImplantが挿入されていた。

歯内療法学的検査を行なった。

#2 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#4 Cold+3/6, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAを撮影した。

この状態だけでは何のことなのか???なので、CBCTを撮影し詳細をチェックした。

MBとDBには根尖病変はなさそうである。

Pに関しては根尖病変があった。

しかしながら、上顎洞との交通はなさそうである。

歯内療法学的診断は以下のようになる。

Pulp Dx:Previously initiated therapy

Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis

さて、この歯にどのような治療をおこなうだろうか?と言っても、紹介先がRe-RCTを希望しているのでRe-RCTを行うことにした。

無論、うまくいかなければIntentional Replantationが必要であることなども伝えている。

患者さんは了承し、根管治療が開始された。

まずP根から治療は行われた。すでに充填してあったスカスカのGutta Percha PointをOKマイクロエキスカで除去し、作業長を測定し根管再形成を行う。

MBにもGutta Perchaが入っていたがレントゲンには写っていなかった。CBCTにもだ。

DBはかなりの時間かけて探索したが、見つけることができなかった。

作業長などは以下のようになった。

MB:WL=閉鎖, MAF=#40.04まで形成

DB:私の技術では見つからず。石灰化か?? CBCTではそれらしいものが見えるが…

P:RIL=16.5mm, Reference point=P, MAF=#60.02

Gutta Percha Pointを挿入し、PAを撮影した。

問題ないと判断し、Gutta Percha PointとBC sealerを用いて根管充填した。

根充材の上に水酸化カルシウムを置き、その上にFuji Ⅷ(Pink Fuji)で仮封している。

コアの印象時にはPink Fujiを削って外してimpしてもらうように依頼した。

さて根管充填後のPAを見るとシーラーがパフしている。

これは上顎洞に行ってしまったのか?といえば、もう一度術前のCBCTを思い出してほしい。

上顎洞とP根は交通していないのでシーラーパフが上顎洞へ埋入することはありえない。

MBのGutta Perchaは#40.04の方がカッコよく?見えたかもしれない。

DBに関しては探しても見つからなかったので根管形成しようがないが、根尖病変がないのである。ということはそこまで一生懸命に見つけに行く必要性はないだろう。

しかし、以下のような症例であったらどうだろうか??

USC時代の症例である。右下6に痛みがあり、歯科治療恐怖症で治療中も常にipodを大音量で聞いている女性だった。

RCTとなったが、このケースでは私はM, Dともに穿通させなければならない。

根尖病変があるからだ。

しかし、私の拙い技術ではM根の根管が見つからなかった。

その後二人のFaculty(歯科医師、いわゆる指導医)のヘルプを仰いだが無理だった…

結局痛みは取れず、私は外科治療を行うことになったがそれで本当にいいのだろうか??

このような治療に対して示唆を与えてくれる論文がある。

Jonasson 2017である。

この研究は実際の人で行われている。

補綴を敢えて外さずに外科的歯内療法を行い、その2年予後を見たものである。

成功率は90%であった。

これはApicoectomyの予後と一致する。

つまりここから何が言えるか?だが、短期的な予後であれば外科治療で根尖病変をマネージメントできるという意味である。

ということで私は外科治療を提案し、行なった。

さて、この1年後この患者はどうなっていただろうか??

根尖病変は消失している。

という事でメデタク?この患者のマネージメントができたということになる。

今でも覚えているが、この患者は外科治療前に鎮静剤を服用してきていた。

治療中もipodは離せない。音楽大音量であった。

帰りは家族に車で迎えにきてもらっていたのが記憶にある。

ということで、根管が石灰化したPreviously Treated, Previously Initiated Therapyで重要なことは根尖病変があるのか?ないのか?ということである。

そして、その根管がマネージメントできなくても根尖病変がなければ予後にはそれほど影響を与えない。

もし、根尖病変があるのであれば外科治療へ進む可能性が高い、ということになる。

その意味で今回の#2の再治療は、外科治療になる可能性を回避できた可能性が高いと言えるかもしれない。