先日日曜日は、まつうら歯科医院 歯内療法専門室でAdvanced Course 2022の第10回(最終回)が行われた。
テーマは以下である。
以前のコースでプレゼンができなかった、GTR&GBR in Endodonticsは私のCase Reportに加えた。
また、それ以外のResorption, Traumaに関してプレゼンを行った。
吸収の原因、対応方法、経過観察期間など理解できただろうか?
またその後、Traumaに関するプレゼンを行った。
TraumaはGPのオフィスであれば緊急時にどう対応するべきか?が重要である。
歯内療法専門医のオフィスであれば、外傷後の扱いが重要である。
この日の講義はその双方を扱うものであったので大変だったと思うが、ポイントがつかめただろうか?
受講生の皆さんは、それぞれのスライドを復習して外傷の考え方と救急時の対応方法を身につけてください。
昼休憩の後、午後からはCase Presentationを行った。
代表的な症例をブログにアップする。
M先生は地方都市(鹿児島県)の大きな歯科医院の勤務医の先生で、歯内療法をメインで担当している。
東京の勉強会からの私の知り合いの先生で、真面目で勤勉な先生である。
彼は#13のApicoectomyを行っていた。
経過観察期間は半年である。
前医は自費の補綴を#13に入れているのに、
切開するか抜歯するしかない
と言ってのけている。
これが歯科医師の民度の低さである。
こんな商売をしていたら何も売れないだろう。
まさに中洲のぼったくりバーだ。
歯内療法学的検査をしてPAを撮影した。
#13は大きな根尖病変がある。
偏心もよく撮影できている。
根尖部の拡大は大きい。
さらに検査すると圧痛とSinus tractがある。
CBCTと口腔内写真は以下である。
圧痛があるということはこのように頬側の皮質骨が破れているということを意味する、というか想像ができる。
Sinus tractに関しては以下の記事だ。
ということで診断と治療計画は以下である。
ということでApicoectomyを行った。
#13のマージンを露出させたくないという理由で#13はSubmarginal Flapで開けている。
が、これには
“マージン近くで切開しているのではないか?”
というツッコミが入った。
写真の写りの関係でよくわからないが、これに関しては、そもそも私であれば、
“他院で入れた補綴の適合が悪ければ歯肉が下がりマージン下の歯が見える、それが気に入らなければ、補綴をやり直す必要がある、あなたの費用負担で”
と術前に告げるだろう。
逆根管充填は適切に行われている。
PAを撮影した。
ここから半年が経過した。
術前と術後(半年経過)を比較した。
素晴らしいの一言だ。
この地域(鹿児島県)の患者さんは彼がいれば救われるだろう。
このように地域で外科をできる歯科医師を育てるのがこのコースの目的であるが、この地域は大丈夫だろう。
そこで敢えて注文をつけるとすれば、術後の口腔内写真がない。
術後口腔内写真があれば、上記の質問を跳ね返すことができるのに、である。
プレゼンとは、“戦い” だ。
戦場では誰もあなたを助けてくれないのである。
細かい部分を注意していけば、もっと素晴らしい臨床家になるだろう。
次がK先生。ベテランの開業医の先生で熊本県で開業している先生で、Basic→Advancedではなく、Advanced→Basic参加の先生である。
ApicoectomyとIntentional Replantationを最近、初めてバンバン行い、スタッフがびっくりして対応しているという。
が、この先生はPCが扱えないという欠点がある。
5症例あったが、ベストは以下の症例だった。
#29 Intentional Replantation(2023.2.14)
術前CBCT
#28,30を梃子にして抜歯している。
これはいただけない。
周りの歯に侵襲を与えかねないからだ。
もう少し注意する必要があるだろう。
抜歯後、根切・逆根管形成・逆根管充填した。
ペリオプローブで長さを計測している。
そんなことをする必要はない。
どう根切の長さを測定するか?は講義でお話ししているはずなので、そこをよく復習していただきたい。
逆根管充填もシーラーの注入が難しくなっている。
これも今後は改善する必要があるだろう。
術後CBCT
手技にツッコミが入るものの、結果は上出来である。
この先生は多分、器用なんだろう。
羨ましい…
経過は追っていないのでまた追って報告していただく予定である。
逆に注文をつけるとすれば、
PCに慣れる必要がある。
動画の編集は私でなく、先生、あなたがしましょう。
私はパソコンが扱えない、(だからプレゼンソフトも使わないし)あとはスタッフに聞いてくれ、では患者は先生の歯科医院には集まりません。
この先生は今年からのBasicコースに参加するので、そこが変化するかどうか。
Windowsでもそういうソフトは販売しているはず。(確か)
先生、来年のBasicでの発表を期待しています。
次がもう一人のM先生。
某地方都市の出身で、東京の歯科大学を卒業した先生だ。
その縁で、私が倒れる前に2019.3に東京で北欧歯科と共催で行ったVPTのセミナーに来てくれた先生であった。
この時彼は、研修医1年目が終了していた時期である。
その段階で私の話を聞いてくれた。
早い。
私の1年目はと言えば、
不正請求をする歯科医院に就職し、某都市の歯科医師会の元会長の歯科医院に転職していた時期だ。患者はほとんど来ず、スタッフにいびられて技工士と技工助手とともにクビきりされたw。まさに“不毛の時代”である。
私のように回り道をしないようにした彼はきっと、ゴールデンロードを歩いていくことだろう。
彼は2症例発表した。
1症例目は私の研修会に出る前の症例、もう1症例は私の研修会に出た後の症例である。
まず私の研修会に出る前の症例。
東京で自費で#7を根管治療したという。
が、終了していないそうで引き継ぎ治療であった。
ここで疑問が生じる。
なぜ根管治療(しかも前歯)が終了していないのだろうか?
CBCTは以下である。
側切歯の口蓋側に歯槽骨が全くない。
そして私が教える前なので、CBCTが全く見るに耐えない。
これでは正直よくわからない。
#7 Apicoectomyした。
45°のタービンを使用していないので手元が見えない。
これでは何をしているのか?全くわからない。
出血を抑えようとボスミン綿球を使用したそうだが、止血はできなかったようだ。
もちろん個数のカウントもしていない。
なので何個入れたか?も不明だそうだ。
通常のキシロカインを使用したため、血まみれ
通常のタービンで視野もままならず根切&逆テーパー形成
ボスミンでは止血のコントロールもままならず、血まみれでMTAを充填する羽目になっている。
治療中は早く終わってくれと祈念していたそうだ。
かかった時間はなんと2時間である。
その焦りや苛立ちはスタッフにも伝わる。
自信がない臨床家には、自信がないスタッフが寄りつくのである。
そしてスタッフルームでランチの“肴にされる”という悪循環。
これでは誰からも尊敬されない。
アメリカなら、こうした技術を身につけるには、大学院に高額な費用を払って指導されて身につけることができる。
そうしたシステムは日本にはない。
それはこれからもない。
もはや、日本では歯内療法を学ぶことはできないだろう。
そんな時(時はコロナ禍)、私の存在をHPで見つけたという。
コロナ禍の時は私も災難にあって、人生を奪われていたので、正直よく記憶がないが、
ワクチンを2度打っても飲酒を制限されたことがはっきりある記憶だ。
そして過剰なマスク着用を迫る世論。
もはやこの国は何度も言うように、”架空の国”なのだろう…
とまあ話を戻すと、個人的な意見はあるが、こうした世界的な病気は3年経過しないと元に戻らないという。
(5:00~を見てください)
私もこの意見に大きく同意する。
そのさなかで、私はさまざまなことを彼に教えた。
外科治療に関してはこのブログで度々出ているような事象を説明している。
その後、彼は以下のケースに遭遇する。
学習した後のケースが以下だ。
History of Present Illness :
1年前に10年以上前に根管治療した歯を、
再度根管治療(自費)して、
セラミックを被せた。
程なくして咬むたびに痛みが出てきたため、
再根管治療をした歯科医院に問い合わせたが、
これ以上やることはないと言われた。
そのため放置しておいたら1ヶ月前に歯茎がパンパンに腫れて激痛が出たため近医に駆け込んだところ、歯茎を切って膿を出す手術が必要と言われ、手術をしてもらった。
その後、激痛は収まったものの咬んだ時の痛みが続き、最近また歯茎が腫れてきてしまった。
という。
これ以上やることがない、と言うのが何を意味するのだろうか?
そして、“自費で根管治療をしている”のであればさぞかしいい治療なんだろう。
唖然とする治療内容だ。
自費で根管治療…前医は何をしたかったのだろうか?
MTAを詰めたから自費だ!と言うのは滑稽すぎる。
もういい加減、そう言うバカな考え方は捨てた方がいいだろう。
そして顕微鏡なしでApicoectomyもどきをしている。
もはや何も言えない。
このブログを見ているかもしれない、そこのあなた。
これが日本の歯科医療の現状です。しかも首都東京で。低レベルすぎて何も言えません。
もはや、日本の歯科医療は終焉しています。
東京が日本一素晴らしいんだ!と言えば、答えがここにあるだろう。
あなたがすることは、
東京へ行くことでなく、近隣で歯内療法外科治療をきちんとできる臨床家を探すことだろう。
根尖病変はないが…様々な症状が。患者がおかしいのか?それともあなたがおかしいのか??#29 Re-RCT3年2か月経過症例から学べること。
#14 MBのApicoectomyなので、2歯近心が手術の範囲である。
となれば、#12の近心が縦切開のスタート位置である。
忠実に基本に沿っている。
根尖の切断の診断である。
Apexから3mmで切断する。
その時、頬舌的幅径は5.5mmである。リンデマンバーの半分の長さだ。
それほど難しくない。
このセミナーで
グリーンライドが必要、
ラセレットが必要、
逆根管形成チップが必要、
という知識を入れた彼は前半の外科治療とは違う状況でApicoectomyした。
逆根管充填はMTAで行った。
術後のPAは以下である。
綺麗に逆根管充填できている。
イスムスも形成をきちんと行っていた。
あとは”時間が必要”である。
ここから半年が経過した。
良い治癒を示している。
ここからさらに時間が立てばもっとよくなるだろう。
彼のこのセミナーを出ての感想は以下である。
東京からわざわざ福岡まで来てくれてありがとうございました。
最後に。
先生がもっとよくなるようになるコツを。
切開ですが2点指摘を。
①縦切開
根尖方向→歯冠方向に切開を入れている。
これはよろしくない。
事実、Hockey Stickを入れ損なっている。
余計な侵襲だ。
根尖→歯冠方向の切開ではなく、きちんとHockey stcikを入れてから根尖側に向けて縦に切開することを勧める。
②横切開
横切開も臼歯→小臼歯へ向けて切開を伸ばしている。
これでは、Flapを剥離して十二分に反転できない時つまり、切開線が足りない時により遠心に伸ばせない。
したがって、
近心→遠心方向に切開を延長することを勧める。
③根尖切除にはストレートのバーでなく、45°のタービンまたは5倍速で行う
勤務している歯科医院の都合で彼は十分に道具を与えられてない。
雇用者は、彼が稼いだお金をいくらかもらっているはずだ。
であれば、なぜ勤務医に還元しないのだろうか?
と言えば、別にお金が必要なのだろう。
しかしそれでは勤務医はついていかない。
あなたは今はいいだろうが、そのうちしっぺ返しを喰らうことになる。
先生、何が必要か?今記憶しておいて、将来開業する時に購入して実践してください。
そしてこれからも多くの経験を積んで頑張ってください。
次がU先生。
某地方都市で開業した先生で、開業の挨拶に近所の歯科医院に菓子折りを持参で挨拶しに行ったら、
”何しに来たんだこの野郎!”とそこの院長にキレられ持ってきて渡したお土産をぶつけられた
と言う。
キレても何も始まらないのはこのブログでも再三私が述べていることだが、この地方都市でも同じことが起きていた。
ちなみに彼は開業したばかりだが、Basic, Advancedと2年続けて続けて参加してくれた。
学習すれば必ず臨床に跳ね返ってくる。
Intentional Replantationを行った。
ちなみに彼の診療所にはマイクロスコープはない。
ルーペで行っている。
歯牙をラクセーターで脱臼させて抜歯している。
以下は写真のようになる。
普通にうまい。
聞けば、大学時代は実習はいつも早かったと言う。
問題なく終了している。
予後はまだ追えていないが、動揺等はなく臨床的な問題もないそうだ。
先生、2年間お疲れ様でした。
先生がこの地域の核になることを祈念しています。
アタオカはほっといて、先生が伸びてください。
今後ともよろしくお願いいたします。
次がS先生。
私の近くで開業した先生で彼もBasic, Advancedと参加してくれた。
#8のApicoectomyを行っている。
#8はPlap.(+)でSinus tractもあるため、
また画像的には根尖がGutta PerchaのOverextensionで完全に破壊されているので、Re-RCTではなく、Apicoectomyへ移行した。
PAでギリギリ見切れてない。
#8が中央に来るように撮影しなければならない。
再度撮影した方がいいだろう。
ここから3ヶ月経過した。
術前と3M経過時を比較した。
歯槽骨の回復が見られている。
圧痛もSinus tractも消失した。
道具も揃っているので確実に基本に忠実に診療してけば患者さんはきっと増えていくはずだ。
それを批判する人もいるだろうが、先生、自分が信じた道を行ってください。
私はいつも応援しています。
次がN先生。
彼との付き合いは私が日本に帰国して東京の補綴専門医に頼まれて行ったセミナーからである。
その補綴専門医との付き合いは私は今はない。
が、GPの彼との付き合いは今もある。
このことを考えても、私はGPとの親和性はいいようだ(笑)。
GPといっても彼は口腔外科医である。
つまり、根管治療よりも外科的歯内療法の方が好きな先生である。
このコースに出て、緑のキシロカインも手に入れた彼は絶好調だ。
そんな彼のベスト症例は以下である。
#19のApicoectomyだ。
石灰化が進み根尖病変ができている。
根管治療は不可能だ。
さてこのような時にどうするか?は以前ブログにあげている通りである。
CBCTは以下である。
D根の方が病変が大きい。
歯根の長さはCEJから7mmで短い歯根の歯である。
診断等は以下になる。
予後をGoodにしている。
それは自分に対する自信だろう。
Osteotomyを行った。
問題なくApicoectomyできている。
3mm確保されているようだ。
ここから時間が経過した。
治療の前後を比較した。
よく治癒している。
素晴らしいの一言である。
これからも多くの症例を彼はこなしていくだろう。
頑張ってください。
私は応援しています。
最後がO先生。
某大学の補綴科出身の先生で、私が倒れる前の福岡デンタルとの共催で行ったマイクロエンドコースにも参加してくれた先生である。
そんな先生のベスト症例は以下である。
#19のApicoectomyだ。
予後は約3年経過している。
私がマイクロエンドコースで教えてから行ったものだという。
つまり、私が教えたことを実践してくれたのだ。
#19は圧痛に激しく反応している。
PA, CBCTは以下である。
#19近心根に根尖病変が見える。
CBCTでは以下になる。
と言うことでApicoectomyした。
ここから時間経過を追っていくが、結論から言うと約3年経過した。
申し分のない治癒である。
これも素晴らしい。
彼の周囲の歯科医院は歯内療法の問題で困ることはないだろう。
素晴らしい症例をありがとうございました。
ということで、それぞれの先生が適切に治療を行っていると感じた。
最後に受講生に修了証を渡し、1年間のコースは終了した。
さて。
この1年間で先生方は何を得ただろうか?
歯内療法はどれほど適切に行っても限界があり、
あなたが好むこと(成人の歯の根管性歯の歯髄保存?)には様々なリスクがあり、
それを改善するにはRCT, Re-RCTが必要であり、
それでも治癒しなければ、Apicoectomy, Intentional Replantation等が必要であり、
またそれを“適切に”行うには、
適切な会社のCBCTを適切に分析し、
その症例の難易度を適切に把握し、
実際に治療するには何が必要で、
何をどのように進めていけば求める結果が出るのか?
がわかっただろうか?
これから先生方の前には様々な症例が舞い込んでくることだろう。
それに対して“解決の方法”をこのセミナーを通じて得ることができたのであれば、これほど嬉しいことはない。
解決方法を提示できないセミナーは出ても仕方がないのである。
これから先生方が勉強するときはそれを基準に勉強していって欲しい。
そして、なりたい、こうでありたい、と言う歯科医師になってください。
それは何度も言うように保険診療ではできないと言うこともわかったでしょう。
そしてまた症例を見せてください。
メールでも構いません。(endomatsuura@gmail.com)
返事は必ずしますので。
この1年間お疲れ様でした。
またどこかでお会いしましょう。
皆さんも私のように倒れて、周囲の家族や友人に迷惑をかけないように気をつけてください。
お元気で。
また会う日まで。
さようなら。