紹介患者さんの治療。
患者さんは海外に在住している方である。
主訴は
外傷で歯が抜けて戻した下顎前歯の根管治療を希望
であった。
外傷の症例なので、EPTも行っている。
久々行った検査だ。
EPTでわかることは、歯髄が生きているか?死んでいるか?のみである。
重篤な炎症があるかないか?などはわからない。
つまり、この検査でSymptomatic irreversible pulpitisとかは言えないということだ。
また、EPTは外傷後の試験では最も信用される試験である。
Bastos 2014 Pulpal response to sensibility tests after traumatic dental injuries in permanent teeth
この文献によれば、外傷後失活するか2年間まで検査を行っている。
その結果、
The accuracy of each sensibility test at the initial and final appointments was, respectively, 55.1% and 67.8% for the heat test, 55.9% and 77.9% for the cold test, and 57.6% and 89% for the electrical test.
外傷では、Heatよりも、Coldよりも、EPTが最も信頼性が高い検査となっている。
どれくらいの頻度でそれを行うか?は臨床家と患者の希望にもよるだろう。
そこにエビデンスや決まりはないと思われる。
(誰かより適切な検査方法やその期間などご存じの方がいらっしゃればメールをください。)
歯内療法学的検査(2023.5.13)
#25 Cold+2/2, EPT+47/80, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#26 Cold NR/20, EPT NR/80, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#27 Cold+3/3, EPT+67/80,, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
再植した#26はColdにも、EPTにも反応がない。
PA(2023.5.13)
CBCT(2023.5.13)
脱離した歯を再植して定着しているが、残念ながら根尖病変ができている。
というよりも状況的にこの歯は根管治療が必要だ。
また、その他も問題がある歯があるように見えるが、TABの可能性もあるし、何より患者さん本人の
“問題が出てから治療したい”
という希望があるためこれ以上の加療は勧めなかった。
当たり前だ。
歯科医師は治療計画は立てれるが、治療内容を実際に決定するのは患者さんであるからだ。
ということで、この歯のみをFocusして治療へ移行した。
歯内療法学的検査(2023.5.13)
Pulp Dx: Pulp Necrosis
Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
ということで、別日に根管治療へ移行した。
#26 RCT(2023.5.28)
この治療での最大の焦点は、チャンバーオープンである。
チャンバーオープンを大きく開ければ下顎の前歯は大きく損なわれる。
が、桐のように小さな穴なら第3者の目に触れても全くわからないだろう。
この時有効なのが、CBCTとSS WhiteのEndo Guide Burだ。
まずCBCTを見ると露髄させるにはどこに穴を開ければいいだろうか?
切端のやや後ろに垂直に穴を開ければ露髄することがわかる。
そんなバーがあるだろうか?
といえば、アメリカにはある。
SS WhiteのEndoGuide Burである。
この中で使えるものは、タービンに取り付けれるもののみである。
ということはそれがどれを示すのかはもうわかるだろう。
チャンバーオープンした。
露髄に要した時間は
1分
である。
このまま以下の内容で根管形成した。
治療後にPAを撮影した。
ということで数十分で終了した。
このように下顎前歯は慣れてくると数十分で終了する。
全く問題がない治療である。
それを、
俺も!
としゃしゃり出ると余計な問題が大きく生じることになる。
わからなければ、わかっている人に任せましょう。