紹介患者さんの治療。
私の大学の後輩の先生からの紹介である。
以下が紹介文。
“いつもお世話になります。
#3ですが、CBCTでMB、DB根根尖に透過像、分岐部もありそうですが、ポケットは3ミリ。
保存できるにしても外科ケースかと思いコンサルしましたが、先生の医院ではなく、〜大学を希望されましたが、
そこでは保存困難でインプラントかブリッジを提案されインプラント予定ですが、
患者さんは保存できるなら保存したいようで、松浦先生に相談したいとの事です。
よろしくお願いいたします。”
私の後輩が開業している地区に在住の患者さんへメッセージを送ると、
大学病院に通っても治りませんよ
である。
治るのならば、私はアメリカへ行かなくてもよかったし、数千万をそれに費やさなくてもよかったのだが。
その大学で教えて貰えばいいが、そうは問屋が卸さないことが現状の歯科界をよく表している。
ということで患者さんの主訴は
歯に問題があると指摘され、大学病院では抜歯と言われた。なんとか残せないだろうか?
である。
歯内療法学的検査(2023.4.5)
#2 Cold+1/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(++), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#4 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
Cold testに#3のInlayは反応しなかった。
Sinus tractもある。
Palpationに対して強い圧痛を感じていたようだ。
これだけで外科案件であることが想像がつく。
検査動画は以下である。
PA(2023.4.5)
各根管には複数のGutta Perchaが充填されている。
いわゆる
側方加圧のつもり
なのだろう。
私の周囲で側方加圧で根管充填している臨床家はいない。(いや、Friedmanくらいか?)
側方加圧根管充填には歯牙を保存する上で、最大の弱点がある。
それは次回の
Basic Course 2023
でお話しします。
最後にCBCTもCheckした。
CBCT(2023.4.5)
MB
MB, DBの周囲には歯槽骨の吸収がある。
破折を疑われる案件だ。
歯周ポケットが正常だろうと、そんなものは何の役にも立たないということが以下の記事でお分かりいただけるだろう。
頬側面観である。
MBとDBの周囲に大きな根尖病変がある。
患者さんに聞くと、前医(治療した先生)はラバーダムを使用していないという。
そしてハンドファイルでの治療である。
それらは、
かつて米軍を竹槍で駆逐しようとした日本人を見るようだ。
そんなもので勝てるわけがないでしょう。
が、
そんなことは当時も誰も言えなかった。
そしてそれから約80年経過しても何も変わっていないのが日本だ。
コロナの時を思い出してほしい。
マスクをしない奴は人間でないという有様で世の中が混乱した。
また飲酒も悪いという。酒を飲んで騒ぐとコロナが移るそうだ。
酒を飲んで騒ぐという行為を私は今までしたことがないが、そういう人たちもいるんだろう。
あの時代は、闇で飲ませてくれる店によく通ったものだ。
水筒の中にビールを入れて飯を食いに行ったこともあったか。
全てが不思議な時代であった。
もはやそれが過去の話になっているというのに、いまだに安心できませんよ!と言って火をつけようとしている人がいる。
そこにできた利権を手放したくないのだろう。
それらは全て、
税金の搾取である
と言わざるを得ないだろう。
税金をATMのように使用し、責任を取らないでいいというこの国システムはまさにどうかしている。
これらのことからわかるように、
この国は、
真実を言うと省かれる
という悲しい国民性がある。
かくいう私も思いっきり歯科業界から省かれていますが、何か?
CEJからApexまでの距離は10mmである。
標準的な日本人の歯根の長さだ。
Apexに到達するには頬側の歯槽骨を0.9mm削合する必要がある。
外科治療するとこの辺りにあるだろう。
MBの近傍にはDBもある。
これは外科治療を行う上でラッキーなケースだ。
Osteotomyを頑張らなくてもApicoectomyできるからだ。
さておき、Apexから3mmで切断すると、
頬舌的に4.8mmである。
リンデマンバーの半分以下だ。
MB2もMB1の近傍にある。
つまり、
この外科治療は(MBのApicoectomyは)容易である
ということがわかるだろう。
あとはDBの状態だ。
DB
CEJから10mm先端にApexはあり、3mmで切ると
頬舌的には3.9mmの切断で済む。
3.9/11=35%程度の深さバーを入れれば切断が可能だ。
このことからも、
#3 のApicoectomy(MB+DB)は極めて容易である
ということがわかる。
P
Pには根尖病変がなかった。
ラッキーだ。
MB, DBのみのマネージメントで済む。
歯内療法学的診断(2023.4.5)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Core build up wo Fiber post→Apicoectomy MB+DB
と言うことで治療は、
まず支台築造し、その後にMBとDBのApicoectomy一択だ。
治療前にこの歯牙の破折にしか寄与しないと思われる、MOD Inlayを除去し、Resin Coreに変更してApicoectomyを行うと告げた。
ちなみに患者さんは、
”お金はいくらかかってもいいから、きちんとした治療をしたい”
と希望されていた。
日本には残念ながらそれを叶えさせてくれる公的巨大施設はないだろう。
その公的巨大施設ででそう言われてどうにかできる人がいるのだろうか?
いれば…その人は開業しているだろう。そして自由診療で治療しているだろう。
そんなことは考えれば誰でもわかることだ。
もはや日本では歯内療法は、
治療を“しない” 療法
と言われている?ことからもよくわかる。
根管治療は不採算部門だ。
それを保険診療で行うことは死を意味する。
何かの勉強会で、できたつもりになった人に私は自分の歯を触られたくはないのだ。
それは私がそう考えるのだから仕方がないことだ。
と言うことでまずこの日に支台築造をやりかえ、別日にApicoectomyを行った。
☆この後、治療動画・外科治療動画が出てきます。不快に感じる方は視聴をSkipください。
#3 Core build up with Fiber Post(2023.4.5)
PAを撮影した。
問題はないと思われる。
かかりつけ医にプロビジョナルレストレーションの形成・印象・装着、および#3,4,5の歯頚部のCR充填のやり直しも依頼した。
そして日を改めて、Apicoectomyを行った。
#3 MB, DB Apicoectomy(2023.6.1)
上顎右側は利き手側の外科治療なので剥離が私は苦手?であるが数分で完了している。
術前のCBCTによれば、ApexはCEJから約10mmの位置にあることがわかっている。
こういう絵をコピーしてユニット周りに貼っておくことを勧める。
そして深さは約1mmでApexに到達する。
Apexを見つけたら、Root Resectionである。
3mm切断するには、深さ4.8mm掘らなければならない。
MBを見つけるとDBも見つかったので、両方ともRoot Resectionした。
この時の注意は切断したApexを忘れずにアシスタントに回収してもらうことである。
感染源を術野に残せば、Apicoectomyの意味がなくなるからだ。
切断後、メチレンブルーで染め出して逆根管形成を行う。
きちんと3mmの深さを掘るのがことの他難しいことは今まで述べている通りである。
これを成し遂げるコツは、
やはり常に新品の逆根管形成チップを使用すること
だろう。
それに勝る方法を私は知らない。
まず、DBから逆根管形成し逆根管充填した。
次にMBを逆根管形成し、逆根管充填した。
PAを撮影し、状況を確認した。
問題はないと思われる。
最後に縫合して終了した。
2根同時のApicoectomyであったが、治療時間は30分程度である。
後輩の歯科医院で抜糸を希望されたので、次回は1年後である。
またその際に状況をお伝えしよう。
それまで少々お待ちください。