紹介患者さんの治療。
主訴は
左下奥歯の咬合痛。硬いものが噛めない…
であった。
歯内療法学的検査(2023.6.29)
#18 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#19 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#19には問題があると思われる。
しかしInlayが装着されているだけなのだが・・・。。。
PAを撮影した。
PA(2023.6.29)
根尖病変と思しき黒い影がM,Dの2根の根尖部に見える。
穿通は必須である。
それと同時にこの不可思議な治療はなんだろうか?
どこで治療していたか?聞くと、
福岡・天神の某歯科医院である。
どことはもちろん言わないが、いずれにしてもひどい治療と言わざるを得ないだろう。
歯科医師の民度は著しく低いと言わざるを得ない。
CBCT(2023.6.29)
MB
根尖病変があるのでM根は穿通が必要である。
また、MBはMLに比べて湾曲が強い。
なのでメイン根管はMLにしたい。
が、Previously initiated therapyであるので爆弾が仕掛けられている可能性がある。
その際は、MBをメイン根管にしてMLをサブにするしかない。
どうなるか?は、やってみなければわからない。
CBCTをいくら撮影しようがそういうことは予測ができないのである。
つまり、実際にやってみないとわからない。
ここが辛いところだ。
が、当歯科医院は使用するメインのNi-Ti File(HyFlex EDM)は毎回使い捨てにしている。
つまり、破折が起きたとしても根管には”高級根管充填材”が充填されることになるのだ。
ML
MLは通常、直線根管だ。
なのでこっちをメインの形成にしたい。
根尖病変もあるので穿通も必須だ。
が、何度も述べるが
Previously initiated therapyであるのでどうなるか?は、やってみなければわからない。
CBCTが治療内容を決めるわけではないのだから。
D
Dにも根尖病変がある。
穿通が必要である。
穿通するか否かはやってみなければわからない。
ということは以上からこの治療の予後は、
穿通すれば”Good”、穿通しなければ”Guarded”と言えるだろう。
歯内療法学的診断(2023.6.29)
Pulp Dx:Previously initiated therapy
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx:RCT
ということで推奨される治療は根管治療である。
が…
Previously initiated therapyというのは実にやりにくい。
何かしら”爆弾”が仕込まれているのが常である。
ということで予後は”Good”でなく、”Guarded”と言わざるを得ない。
が、治療してそれは変わるかもしれない。
ということでこの日に治療に移行した。
☆この後、治療画像/動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#19 RCT(2023.6.29)
Mは根管口にVitapexが置いてあった。
なぜそのようなものが置かれたのか?は謎だ。
Dは容易に穿通した。
穿通するなら…根管形成と根管充填をやれよ、と言いたいがこの国では難しいのだろう。
もはや、永遠に良くはならない治療、それが歯内療法だ。
MLを穿通させようとしたが…穿通できなかった。
メカニカルに穿通を試みたが…これも無理であった。
ということで忸怩たる思いで、MBの穿通を試みる。
が、ここも穿通しない。
メカニカルグライドパスを試みた。
するとMBが穿通した。
MBの作業長を計測し、そこから-0.5mm引いた長さを作業長とし#40.04まで形成した。
その後、MBにGutta Percha Pointを入れてMLにファイルを挿入しグリグリやった。
Gutta Percha Pointを取り出して”傷”の位置を計測した。
以下の動画である。
作業長等の一覧は以下のようである。
当該サイズに形成し、BC sealerを用いて根管充填した。
ということで根管充填後のPAは以下である。
近心根、遠心根ともにSealer Puffがある。
MLはMBと合流していた。
なのでいつもと見える当歯科医院でのPAの偏近心での景色は違う光景である。
(この言葉の意味がわかるあなたは自由診療できっと歯内療法を行なっていることでしょう。)
ということで根管治療に問題はないと思われる。
次回は1年後である。
またご報告したい。