紹介患者さんの治療。
実は紹介されていた患者さんのApicoectomyが1本だけうまくいっていなかった。
今回はその治療を修正する目的で行われた。
以前の記事は以下である。(2018.9.1に#6,8,10のApicoectomyを行っていた)
この時の主訴は、
左上の前歯で咬合すると痛い
であった。
歯内療法学的検査(2018.9.1)
#6 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#7 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#8 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#9 Cold+1/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#10 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#11 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
前歯は飛び石のように痛みがあった。
が、この日(2023.9.29)の再・Apicoectomyの術前は、#8のPalp.(±)程度に落ち着いていた。
残りは全て検査に対して陰性であった。
私はどのようなミスを犯したのだろうか?
PAを比較してみる。
初診時 PA(2018.9.1)
5yr recall PA(2023.9.29)
確かに、#8以外の治癒は進んでいるようだ。
が、#8には何らかの問題がある。
CTを撮影した。
CBCT(2023.9.27)
#6
#6はComplete healingと言えるだろう。
#8
#8は歯槽骨の欠損ができたままだ。
何らかの問題が発生した(発生している)に違いない。
Racelltをおき忘れたのか?
逆根管形成が甘い(Gutta Perchaを完全に取れていなかった?)のか?
逆根管形成の量が不足しているのか?
いずれにしても考察する必要があるだろう。
#10
当時の主たる主訴であった、#10の圧痛や打診痛は改善していた。
そのことはCBCTでも裏打ちされている。
以上より、#8には何か問題があるように思われる。
歯内療法学的診断(2018.9.1)
#8
Pulp Dx:Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-Apicoectomy
ということでこの日に#8 Re-Apicoectomyが行われた。
前回の修正の必要がある。
以下の動画の、骨窩洞内の映像、逆根管形成後のマイクロミラーでの逆根管形成チェック時の画像等をよく見てほしい。
⭐︎以下、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#8 Re-Apicoectomy(2023.9.28)
窩洞内部にRacelletの置き忘れがあるだろうか?
私は何度も確認したが、Racelletの置き忘れはないように思われた。
このように、
Racelltをおき忘れた?ものを再外科で取りに行こうとすると、その確認のために根尖病変のほぼ完全な除去が求められる
ので、
必ず外科スタッフと何個ラセレットを使用したか?の意思疎通をしていた方がいい
ということがわかる。
さて。
Racelletではないのであれば、何が原因だろうか?
カット面をメチレンブルーで染色してみた。
複根管のようなものがメチレンブルーで染色された。
これが、原因かもしれない。
バーで表面を削除し、再度メチレンブルーで染色し、染色面が消失したことを確認した。
その後、再度、逆根管形成を行った。
Retroprep後の切断面に見えるのはGutta Perchaである。
Gutta Perchaが残存していたのだろうか?
それとも、
Retroprepで捲れ上がってきたのだろうか?
それはわからない。
しかし、Gutta PerchaがMTAの下に残存していた可能性もあるだろう。
当時の(2018.9.1)外科動画が残っていた。
それを精査してみよう。
この後の続きの動画がMTAで逆根充しているものであったため、詳細はわからない。
が、いずれにしても、治癒しなかったのだ。
その原因が側枝であったのか?
Gutta Perchaの残存であったのか?
Racelletであったのか?
といえば、
これらの状況証拠では、根切断部の側枝の存在であろうとしか言いようがない。
これで治癒しなければ、Intentional Replantationであろう。
ということでRe-Apicoectomyの続きの動画に戻る。
逆根管形成後の窩洞内をよく観察した。
今度はミスはないだろう。
確認後、Lido Techniqueで逆根管充填した。
術後、PAを撮影した。
問題はないと思われる。
最後に縫合して終了した。
次回は半年後の2024.3である。
その際に皆さんに、“変化”をお伝えしたい。
それまで少々お待ちください。